次のビッグテーマ(グローバル):2023年9月
モノのインターネット(IoT)
半導体を巡る競争が激化
半導体は依然として主要産業と国家経済にとって不可欠となります。米半導体大手クアルコムが、高級自動車メーカーのメルセデスおよびBMWと提携し、車載インフォテインメント・システム向けチップを供給するという計画が明らかになりました。スマホ向けチップの優位性で知られるクアルコムは、スマホ市場が不況に見舞われる中、前四半期の自動車向け収益が13%増加したことを受け、自動車分野への進出を進めています1。同社の計画では、BMWに車両の音声コマンド機能を強化するサービスを提供し、2024年までに米国で発売予定のメルセデスEクラス・モデルにチップを供給する予定です2。クアルコムがスマホ市場から重点を移す一方で、中国の通信大手ファーウェイは、中芯国際集積回路製造(SMIC)の新型チップKirin 9000sを搭載したMate 60 Proを発売し、米国の制裁に対する中国半導体業界の底堅さを示しました3。半導体の競争は世界的に激化の一途をたどっており、英国の設計会社アームがナスダック市場へのIPOを1株51ドルで完了し、時価総額は600億ドルに達しました4。
ファウンドリーの分野においては、インテル・ファウンドリー・サービス(IFS)とタワーセミコンダクターが、インテルがタワーセミコンダクターのために受託生産するという契約を発表しました。高度なアナログ処理に対する顧客の需要に応えるため、タワーセミコンダクターは、インテルのニューメキシコ工場に最大3億ドルの設備投資を計画しており、生産能力を増強する方針です5。
ビデオゲーム・eスポーツ
ゲームの回復基調がレベルアップ
ゲーム業界は、2020年コロナ禍による巣ごもり消費に後押しされたものの、その後消費者行動は正常化しました。現在、新ハードウェアの導入によってゲーム業界は再び活況を呈しています。待望のApple Vision Proが発表された他、MetaはLGと協力し、MetaのQuest Proヘッドセットの将来のバージョンを改良すると伝えられています6。過去12ヶ月間、米国のビデオゲーム市場で消費された570億ドルのうち、ハードウェアが占めた金額は70億ドルで、前年同期比(YoY)19%増加しました7。大ヒットゲームの発売と新たなプレーヤーの参入が、ハードウェアの好調なトレンドと相乗効果をもたらしたのでしょう。ゲーム市場復活の主な原動力は、デジタル・プレミアム・フル・ゲームのダウンロードの伸びであり、これはモバイル・ゲームの減少やデジタル・アドオン・コンテンツへの支出のわずかな減少をある程度相殺しました8。この成長は、エヌビディアのような業界のトップランナーにも及んでおり、同社は2023年第2四半期には、前期比で11%増、前年同期比で22%増と2桁の伸びを記録しました9。
クラウドコンピューティング・人工知能(AI)
AIによるクラウドコンピューティングの変貌
人工知能の競争が激化する中、ビッグテックは、新商品を次々と発表し、AIの実力を大々的にアピールしています。グーグルの年次カンファレンス「Cloud Next 2023」で、同社はTPUポッドごとに256のチップが配置されたコンパクトな構成を特徴とするCloud Tensor Processing Unit(TPU)v5eを発表しました。最新バージョンは、トランスフォーマーアーキテクチャに基づく最新のニューラルネットワークアーキテクチャ用に調整されています10。グーグル・クラウドは、生成AIモデルのトレーニング、デプロイ、改良のための主要なプラットフォームとしての地位を確立しつつあります。グーグルのTPUは、従来の画像処理ユニット(GPU)とは異なり、高度な生成AIモデルの実行用に細かく調整されています。なお、グーグル・クラウドは、グーグル独自のモデル、サードパーティの商用モデル、オープンソースモデルなど、さまざまな基盤モデルを提供しています。PaLMやImagen、CodeyやChirpといったグーグル・クラウドの基盤モデルは、グーグル検索やグーグル翻訳のような中核機能を支えています。グーグルは長年AIの分野に携わってきたにもかかわらず、最近のAIの波に関しては他の企業ほど注目されていませんでした。Cloud TPU v5eの発表は、生成AIの競争で優位に立とうとするグーグルの現在の努力を浮き彫りにすると考えられます。
同時に、Zoomやその他のプロバイダーも生成AIに対応しています。ビデオ会議市場の競争に対応するために、Zoomは同社の「AI Companion」という生成AIアシスタントを刷新するように取り組んでいます。なお、「AI Companion」は、同社の自社開発生成AIモデルをメタやオープンAI、アンスロピックといった企業のモデルと組み合わせています。注目すべき点は、Zoomは2024年にChatGPTのような対話型ボットを導入し、ユーザーが直接ボットと交流したり、過去のミーティングやチャットについて問い合わせたりすることができる点です11。
サイバーセキュリティ
政府機関はデジタル防衛を優先視
米証券取引委員会(SEC)の新たな規制は、公開企業に対するサイバーセキュリティ開示要件の厳格化を含み、これは長期的にはサイバーセキュリティのテーマを後押しするでしょう。新たな規制によると、サイバー攻撃事件は発生後4営業日以内に報告し、事件の性質、範囲、時期、潜在的な影響に関する包括的な詳細を含める必要があります12。企業はまた、サイバー攻撃の脅威に対処するためのプロセスを概説し、これらのリスクに対処するための取締役会の監督と経営陣の役割について詳しく説明するのが義務付けられる予定です。当該規制は2023年12月から実行し、その範囲は公開企業や米国の国境を越えて影響を及ぼす見通しです13。管轄区域における規制のギャップにより、これまでサイバーセキュリティを優先することを求められていなかった事業者も、遵守する必要があります。
バイデン政権はサイバーセキュリティを優先視し続け、最近の「AIサイバー・チャレンジ」のような取り組みはその点を裏付けると言えるでしょう。このチャレンジは、AIとサイバーセキュリティの交差点におけるイノベーションを奨励し、新しいサイバーセキュリティツールを開発するために、約2,000万ドルの賞金を提供します14。アンスロピック、グーグル、マイクロソフト、オープンAIといった最先端にあるAI企業は、このチャレンジの参加者を支援するために自社の技術を寄与しています。また、ホワイトハウスは、アマゾンウェブサービスが幼稚園から高校までの教育機関に2,000万ドルを助成する、学校を保護することを目的とした新しいイニシアチブを立ち上げました15。この資金により、サイバー脅威に直面する学校区にセキュリティトレーニングとサポートが提供されます。
リチウム・電気自動車(EV)
EVの需要が急騰する中、リチウムの奪い合いは続く
特殊化学品メーカーのアルベマールは、電気自動車向けのリチウム供給を強化するため、オーストラリアのリチウム鉱山会社ライオンタウン・リソーシズの43億ドルでの買収を進めています16。株主の承認と正式決定待ちのこの買収案には、2030年までフォードとテスラにリチウムを供給するライオンタウンの既存契約も含まれ、アルベマールはライオンタウン鉱山用の処理施設を建設する可能性もあると想定されます17。以前、テスラもアルベマールと提携を結びました18。ライオンタウンの西オーストラリア鉱山の追加により、アルベマールは2030年までにリチウム生産量を50万~60万トンとすることを目指しています19。
中国自動車メーカーBYDは、500万台目の新エネルギー自動車の生産というマイルストーンを実現しました。ちなみに、BYDは100万台目の新エネルギー自動車を生産するには13年かかったのに対し、500万台のうち、最後の200万台はわずか18ヶ月間で生産されました20。2017から2022年までの期間において、BYDはガソリン車の廃止に向けて取り組むとともに電気乗用車の年間売上を20万台から186万台にまで増加させました21。2023年第一四半期に、BYDはフォルクスワーゲンから中国のトップ自動車ブランドの座を奪い、2023年通年の自動車販売台数は300万台(主に電気自動車)に達する可能性があります22。
大麻
大麻市場は連邦レベルのサポートを得る
米保健福祉省(HHS)は大麻に関して、規制物質法で定義されたスケジュールI(医療上の有用性を認めない、乱用リスクが高い)からスケジュールIIIへの再分類を勧告しています23。連邦レベルの完全合法化には至りませんが、この再分類は大麻を他のスケジュールIII薬物と同様に処方箋があれば合法的に入手できる、より危険性の低い物質として位置づけるものです。また、この再分類により、大麻企業の税金負担も減る可能性があります。保健福祉省のこの判断は、バイデン政権が2022年10月に導入した、大麻使用に関する罰則を緩和することを目的とした新たな措置に続くものです24。これらの措置には、単純所持に関連する連邦政府の前科をすべて赦免することや、同様の措置を検討するよう各州知事に呼びかけることが含まれています。この取り組みの一環として、バイデン大統領は保健福祉長官と司法長官に、大麻の医療的特徴に沿ってスケジュール分類を再評価するよう要求したと報じられています。
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