なぜ防衛テック?なぜSHLD?
世界の防衛産業は、テクノロジー重視の軍事力への構造的転換と地政学上の緊急性によって形作られるスーパーサイクルに入ると考えられます。世界各国は従来の兵器システムから急速に脱却しつつあり、現代の戦争に求められるスピード、精度、適応性に応じた自律型プラットフォームやAIによる指揮統制システム、高度なサイバー防衛アーキテクチャに多額の投資を行っています。
世界の軍事支出は2024年に2兆7,000億ドルに達し、少なくとも冷戦終結以来、最も急速に増加しています。この増加ペースを見れば、その緊急性は明らかです1。米国の防衛予算は従来の予想より5年近く早く1兆ドル(約145兆円)に達する勢いであり、新政権のもとで財政姿勢が大きく転換しています2。欧州連合(EU)は、近代化された自立的な体制を築くために、2030年までに8,000億ユーロ(約135兆円)の防衛投資を動員し、これまでの米国の安全保障への依存から抜け出すことを目指しています3。
しかし、大きく変化しているのは、支出の規模よりも方向性です。調達の支出先は、テクノロジーを活用したソリューションや戦場用AIに明確に移りつつあり、世界の防衛インフラの全面的な世代交代を示しています。
このような変革から、新たな投資機会が生まれています。グローバルX 防衛テック ETF(SHLD)は、グローバルに展開し、テクノロジー先行を重視する方針により、進化する防衛・軍事分野の戦略的エクスポージャーを投資家に提供します。
重要なポイント
- 世界の防衛予算は過去数十年で最も速いペースで増加しており、2030年までは構造的、地政学的な追い風の勢いが続く見込みです。
- 現在、防衛の近代化は最優先課題となっています。防衛セクターはテクノロジーの導入がまだ不十分であるため、今後数年は成長が続くと見られます4。
- グローバルX 防衛テック ETF(SHLD)は、防衛セクターの技術的変革を推進する企業に的を絞ったエクスポージャーを提供し、数兆ドル規模の業界再編から恩恵を受けると考えられます。
なぜ今、防衛テックなのか?
防衛分野の契約期間は長いため予算を予測しやすく、革新も少なかったことから、数十年にわたって投資家に注目されてこなかったセクターでした。しかし、そんな時代は今、急速に終わりを迎えつつあります。
現在、地政学的緊張の高まりやAIなどの技術進歩、低価格の自律飛行ドローンなどの新たな脅威を背景に、世界的に再軍備サイクルが進んでいます。さらに、中国がテクノロジー主導の軍備を増強していることや、中東、ウクライナ、インドとパキスタンの国境などで近年紛争が続いていることも、主要軍事大国にとって迅速な対応が急務であることをはっきりと示しています。このような状況の中、各国の軍隊はテクノロジーの調達、統合、運用の方針を根本的に見直す必要に迫られています。
長期的な成長余地を求める投資家にとって、防衛テックは防衛とイノベーションの可能性が珍しく両立している分野として浮上しています。以下では、この分野のシフトを促す主な原動力と、投資家が考慮すべき要因を概説します。
1. 地政学的圧力に伴う世界的な再軍備サイクル
世界各地で紛争が拡大し続ける中、それに応じて防衛予算は抑制から加速へとシフトしています。米外交問題評議会が追跡する全世界の紛争数は30件近くに達しています5。
こうした状況の中、2024年の防衛支出は前年比9.4%増加し、2.7兆米ドル(約390兆円)を超えました。年間予算がこれほど急増したのは、冷戦終結以来初めてのことです6。世界の軍事支出の3分の1以上を占める米国は、ウクライナとイスラエルへの支援を継続し、この成長の主要な原動力となり7、この傾向は当分変わりそうにありません。今年、新政権が提案している防衛支出は、従来の予想より数年早く1兆ドル(約145兆円)の水準に迫っています8。これは、予算を抑制していた以前の取り組みからの大きな転換を示しており、中国のような新たな敵対国を含む、世界的な脅威の強化に対する緊急性を反映しています。
欧州諸国からインドなどの新興国まで他の国々も、国内や地域内の脅威に備えて、先端技術の調達と投資を強化しています。このような広範囲の多くの地域にわたる足並みが揃った動きは、過去数十年で最も世界的に一致した再軍備サイクルの一つだと見られ、これにより、2030年までに軍事支出の総額は約3.6兆ドル(約522兆円)まで押し上げられる可能性があります9。
2. テクノロジーにより防衛産業の戦略が一変
防衛契約は通常長期にわたるものであり、数十年先を見越して計画されます。そのため、この長期的な販売サイクルは、通常、迅速なペースで運営してきたテクノロジー業界の影響力を制限してきました。しかし今、脅威が増大し、新たな投資が続く中で、テクノロジーを早急に導入する必要性が高まっています。さらに広い視点から言えば、戦争の性質そのものが変化し、データ、アルゴリズム、半導体を活用したスピード、機敏性、精度の向上が求められるようになっているために、軍事国家は防衛の近代化への積極的姿勢を強めざるを得なくなっています。
例えば、米国では、国防総省が国防イノベーションユニット(DIU)を設立し、AI、自律技術、サイバーセキュリティ、高度なコンピューティングなどの商用テクノロジーの軍事用途への導入を急いでいます10。同様に欧州では、NATOの北大西洋防衛イノベーションアクセラレータ(DIANA)がデュアルユース(軍民両用)技術の新興企業に資金を提供し、加盟国と調整しながら技術的な相互運用性と耐障害性の確保に努めています11。このような動きは、今後、テクノロジー分野と防衛分野の連携がさらに広範囲にシフトしていくことを示唆しています。
調達の観点からは、今後数年間で下記3つの分野を注目するべきだと考えられます。
- ドローン技術:低価格ながら高速で殺傷力の高いドローンの登場により、紛争の力学は一変し、各国の軍は戦略と調達サイクルの再考を迫られています。この分野では中国が先行しており、米国は必死に後を追っています12。今後5年間で、その差を埋めるための投資が加速すると予想されます。
- 人工知能:現代の戦場では、膨大な量のデータが生み出されます。標的識別やインテリジェンス、ロジスティクスを効率化するために、AIを活用したシステムの配備がすでに進められています。例えば、NATOは最近、統合型のAI指令プラットフォームの開発のためにパランティアとの契約を決定しました13。
- サイバーセキュリティ:サイバー防衛は、今や機密ネットワークだけでなく、民間インフラも保護しています。2025年にはサイバーセキュリティへの投資は2,000億ドル(約29兆円)以上に達すると予想されていますが、政府向けを中心とする支出はまだ始まったばかりです14。
3. 欧州の戦略転換が今後数年間の推進力となる見込み
欧州連合(EU)は、米国の安全保障への依存から脱却し、独自の能力を構築する方針にシフトしており、防衛費を大幅に増やしています。2024年には、EUの防衛支出は前年比17%増と過去最高の伸びを記録し、その勢いは加速する一方です15。EUは、2025年初めには、調達を迅速化し、軍事セクターに民間資本を呼び込むことを目的とする8,000億ユーロ(約135兆円)規模の「欧州再軍備」計画を発表しました16。
その先頭に立っているのはドイツです。2024年には、ドイツの防衛予算は前年比28%増の885億ドル(約13兆円)となり、国防支出は世界第4位となりました17。また、ドイツ政府は、防衛とインフラを対象とした5,000億ユーロ(約84兆円)の予算外基金を設立し、財政制約を回避しています18。2025年末までに、2021年の3倍以上となる20か国以上の加盟国が、NATOの目標であるGDP比2%の防衛費を達成する見込みです19。EUに加盟していない英国も、防衛費を拡大しており、2027年までにGDPの2.5%を達成することを目指しています20。
グローバルXでは、このような再軍備サイクルは短期的ではなく、今後数年にわたる推進力になると考えています。また、欧州の防衛体制はデジタル化が大幅に遅れているため、さまざまなプラットフォームや指揮システムの間で先進技術の統合を進める余地が残っています。
4. 防衛セクターが不安定な市場でも異例の底堅さを示す可能性
重工業に支えられた防衛産業は、予想しやすい需要と見通しが立ちやすい長期サイクルを兼ね備えた数少ないセクターの一つとして注目を浴びています。これらの特徴は、2025年のような変動の激しいマクロ環境において、ますます重要な価値を持つようになります。特に重要な点として、防衛支出は、消費者向け産業や金利に敏感な業種とは異なり、伝統的な景気循環から大きく切り離されています。数年間にわたる契約は、資本力のある政府によって事前に十分に資金提供されることが多く、予算の安定性を支えるクッションとなる可能性があります。
グローバルXでは、この分野の中でも特に、防衛テックというテーマが魅力的な位置を占めていると考えています。このテーマは産業の底堅さと最先端技術との関与を兼ね備えています。防衛予算の中で、AIや自律システム、安全な通信、サイバーセキュリティなどのイノベーションに向けられる割合は増えています。このため、持続性と上昇余地を併せ持つ点は魅力的です。
グローバルXでは依然として、設備投資主導の上昇サイクルの初期段階にあると考えています。過去数十年にわたる投資不足を経て、世界各国の軍隊は今、近代化の遅れを認識し始めています。例えば、ソフトウェアが米国の防衛支出全体に占める割合はまだ1%未満です21。このことから、まだ移行がごく初期段階にあること、そしてデジタル近代化に向けた勢いがすぐには衰えそうにないことがわかります。
5. 防衛産業の変革から生じる投資機会を狙うSHLD
グローバルX 防衛テック ETF(SHLD)は、世界的な防衛予算の増加と技術的な変革の加速が収束する分野に的を絞ったエクスポージャーを提供します。SHLDは、Global X Defense Tech Indexに連動する投資成果を目指しています。
当指数のメソドロジーにおける、主な特徴は次のとおりです。
- 的を絞ったサブセグメント:本ファンドは、先進軍事システムとハードウェア、防衛技術、サイバーセキュリティという3つのサブテーマに属する企業に的を絞り、防衛産業を主導する伝統的な企業と今後の技術革新を担う次世代企業を独自に組み合わせて構成されています。
- テーマの純度の高さ:これらの中心的なサブセグメントから売上高の50%以上を得ている企業だけが組み込まれます。この厳しい売上フィルターにより、現代の防衛セクターの中でも最も革新的かつ不可欠な分野と合致する集中的なポートフォリオが構築されます。
- 地域に依存しないエクスポージャー:SHLDは、本質的にグローバルなアプローチを取っており、北米、欧州、アジアの企業を組み込んでいます。これらの各地域の軍隊が揃って投資を拡大していることから、当社では、このエクスポージャーを重要とみなし、従来のセクター別の戦略では得られにくい部分であると考えています。
さらに、本ファンドは、航空宇宙企業および民間航空会社を除外しており、防衛・軍事用途だけに投資対象を絞っています。
結論:防衛の技術的変革は数十年に一度のチャンスになり得る
現代の防衛はもはや弾薬だけにとどまらず、インテリジェンス、自動化、耐障害性がますます重要になっています。この新たな戦略に適応するためには、各国の軍事組織の計画、購入、投資の方針を再考する必要があります。グローバルXの見解では、投資の緊急性と勢いはこの10年間にわたって続くと考えられ、防衛テックは投資家が検討すべきトップテーマになると考えています。SHLDは、今後の安全保障を形作っていく最も有利な立場にある企業に焦点を当てることで、特化したエクスポージャーを提供します。
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