防衛分野へのドローンの普及:変貌を遂げる現代の戦争とその経済性

ドローンの普及により、戦争が変わりつつあります。戦場でのドローンの利用は第一次世界大戦までさかのぼりますが、技術の進歩と低価格化に伴い、最近の紛争では、その配備や用途が各段に広がっています1。従来の軍事資産とは異なり、ドローンは遠隔操作が可能で、コストは低く、精度は高くなっています。とりわけ、さらに高度な自律技術が組み込まれるのに伴い、100万ドル以下のドローンで戦車や軍艦などの高価値の標的を無力化することが可能となりました。ドローンの有効性を示す証拠が増え、利用が加速すれば、そのシステムの性能向上に取り組むメーカーやソフトウェア開発者、AIイノベーターといった専門的なバリューチェーンにとって追い風となり、世界的に軍用ドローンへの支出が急増する可能性があります。

重要なポイント

  • 無人航空機(UAV)は、ニッチなツールから戦場に必須の資産へと進化し、監視、偵察、精密照準爆撃において非常に価値の高い能力を提供することで、従来の軍事戦略を一変させました。
  • ドローンの低価格化と用途の拡大により、紛争におけるパワーバランスが変わり、資金力の乏しい軍隊が、資金力のある大規模な軍隊に対抗できるようになりました。
  • 各国がドローンを利用した幅広い偵察や攻撃ソリューションの導入を進める中、現代の防衛システムの重要な部分を成す無人航空機への多額の投資を行うようになると予想されます。

資金力の乏しい軍隊も、ドローン技術により対等な戦闘条件を実現

軍事紛争では、コストと兵士の犠牲者数を最小限に抑えることが重要です。少ない資金と少ない犠牲者数で目的を達成できることは、当然、有利に働きます。これまでは、最高水準のハードウェアの獲得と豊富な武器供給の維持に重点的に軍事費が投じられてきたため、資金力の豊かな国が戦略的に優位でした。しかし、最近の技術の進歩により、ドローンシステムが高度化されつつ低価格になり、遥かに高価格の防衛装置とも張り合えるようになったため、戦闘条件が対等になり、資金力の乏しい部隊にとってプラスとなっています。現在は、わずか500ドルのドローンでも、数百万ドル相当の高価格の大砲や戦車を効果的に無力化するとともに、戦地で闘う人数を減らし、人命を守ることができます2

ウクライナ軍とロシア軍の双方によるドローン技術の配備は、無人航空機システムの急速な進歩を示しています。特にコスト効率の高いソリューションとして一人称視点(FPV)ドローンが登場し、高度な防空システムを備えたエリアで有効性を発揮しています。このような遠隔操縦システムは、従来の装置と比べて大幅なコスト削減を実現しており、ウクライナは2024年中の一人称視点ドローンの製造目標を100万台としました。これは、EUが前年に供給した装置の約2倍の規模に相当します3

この地域では、長距離ドローンシステムも経済的に有利であることが証明されました。1台あたりのコストは数千ドルから数十万ドルまでばらつきがありますが、従来の防空システムと比べてコスト効率が高くなっています。ウクライナ軍とロシア軍はともに、700~1000キロメートル離れた標的に到達できる無人航空機を配備しており、シャヘド・システムのようなプラットフォームは、製造コストを比較的低く抑えながら、このような長距離の能力を実現しています4

ドローンの世界的な普及が業界大手の一層のイノベーションを加速

米国を拠点とする防衛関連企業のエアロバイロンメントは、無人航空機システム(UAS)、無人地上車両(UGV)、徘徊型弾薬システム(LMS)の設計・製造に従事する主要な無人システム企業として台頭しています。エアロバイロンメントは、米軍にドローンを提供する最大手の1社であり、その歴史は1980年半ばに携帯型無人航空機を導入したことにさかのぼります。現在、同社の製品は、世界中の防衛産業、政府、民間企業の顧客に利用されています。2025年度の売上高は、前年比12%増の8.05億ドルに迫る見込みです5

同社は最近、歩兵大隊にスイッチブレード徘徊型兵器の提供に向けて米陸軍と10億ドルの契約を結びました6。スイッチブレード・ドローンとは通常のドローンと同様に監視能力を持ちつつ、戦車、軽装甲車、硬目標、敵の人員を破壊できる誘導ミサイルとしても使用できるドローンを指し、米陸軍は10年以上にわたってスイッチブレードを使用してきました。また、ウクライナ軍がスイッチブレードを採用したことにより、同ドローンの戦略的有用性および資金が乏しい軍にとって重要である、経済的効率性を明らかにしています。現時点で他にスイッチブレードを運用している国は英国のみですが、ウクライナで戦争が始まって以来、フランス、リトアニア、オーストラリアなどの国々が当システムを購入する契約を結んでいます7

ロッキード・マーチンは最近、国防高等研究計画局(DARPA)から600万ドルの契約を獲得しました。その契約内容は、ヘリコプター「ブラックホーク」にドローンのような機能を装備し、無人飛行を可能にするというものです8。大手民間防衛技術企業であるアンドゥリル・インダストリーズは、最大3ポンドの弾薬積載容量を備えた徘徊型弾薬システム「Bolt-M」など、「Bolt」ファミリーのドローンを発表しました9。こうした動向を考え合わせると、軍用ドローン市場がいかに急速に戦争の様相を変えつつあるかがわかります。

ドローン技術は今後数年で急速に進歩すると予想されます。紛争が続いている現状では、新たな進歩がすぐに実戦で試され、メーカーはほぼリアルタイムでフィードバックを受け取ることができるのです。現在、大半のドローンは手動で操作されていますが、多くのドローンが自動化に向けて着実に進歩を遂げています。旺盛な需要と、ますます高度化する人工知能(AI)システムの統合により、レベル5の自動化が実現するかどうかではなく、いつ実現するかが焦点になりそうです。これが実現すれば、ドローン支出を加速させる新たな追い風となる可能性があります。

結論:高い有効性、低価格、普及拡大

無人航空機の台頭により、現代の戦争の様相は一変し、資金力の豊かな軍隊と、資金力は乏しくても高度な技術を持つ軍隊との間の戦闘条件が対等になりました。軍事戦略にドローンを組み込む取り組みは、従来の高価格のハードウェアからシフトし、現在は、犠牲者数を最小限に抑えながら精密照準爆撃を実行できる機敏で汎用性の高いシステムへと焦点が移っています。新たな紛争が示しているように、短距離と長距離の両方の無人航空機を戦略的に配備することは、単に戦術的に優位に立つというだけでなく、戦争の本質を一変させるものです。エアロバイロンメントのような革新的な企業はこのシフトの最前線にあり、戦争の未来は技術の進歩に迅速に対応できる企業に委ねられていることを証明しています。地政学的状況が移り変わる中、防衛セクターと政策当局者は今後、競争力と安全を維持するために、革新的なドローン技術への投資をこれまで以上に優先すると見られます。

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