次のビッグテーマ(グローバル):2024年9月
人工知能
AI収益化の急増が新興企業のバリュエーション上昇を後押し
オープンAIは1,000億ドルを超える資金調達を交渉中と報じられました1。今年初め、オープンAIの評価額は800億ドル以上に跳ね上がり、昨年の評価額290億ドルを大幅に上回りました2。この報道は、オープンAIの2024年の年換算売上高が、2023年後半に報告した16億ドルの2倍以上の34億ドルとなる見通しであることが発表されたことを受けてのものです3。同社は、Microsoft Azureを通じて自社のモデルへのアクセスを含むAIサービスを提供することで、企業顧客からの収益を増やすことに注力しています。これにより2億ドルの収益が見込まれています4。オープンAIはまた、明確なソースから素早く適切な回答を提供するように設計された検索エンジンのプロトタイプ、SearchGPTの立ち上げも発表しました。この新しいプロトタイプの最初の企業顧客の1つであるコンデナストは、SearchGPTを通じてVogue、The New Yorker、Condé Nast Traveler、GQなどのコンテンツを公開する予定です5。
ヘルスケア分野のイノベーション
肥満治療薬が糖尿病予防と他疾患の治療に有望な結果を示す
肥満治療薬の勢いはいまだ強く、イーライリリーは最近、肥満治療薬ゼップバウンドが糖尿病予備軍の糖尿病進行リスクをプラセボに比べて94%減少させたという臨床試験データを発表しました6。SURMOUNT-1と呼ばれるこの試験では、糖尿病予備軍で肥満または過体重と考えられる成人を対象に、チルゼパチドが投与されました。チルゼパチドの最高用量である15ミリグラムを投与された被験者は、3年間で平均して体重の約23%が減少し、プラセボを投与された成人の減量率平均2%を著しく上回りました7。イーラーリリーはまた、睡眠時無呼吸症候群や心不全など、糖尿病や体重減少以外の用途でのチルゼパチドの使用を支持するデータも発表しました。ゼップバウンドの2030年の売上高は223億ドルに達すると予想されています。同じ2型糖尿病治療薬であるマンジャロは、2030年の売上高が227億ドルになるとの予想です8。
モノのインターネット(IoT)
AI PCチップ競争が激化
クアルコムとインテルは、AI統合型デバイスの需要拡大を取り込み、パーソナルコンピューティングの未来を再構築するための取り組みを加速しています。クアルコムは、自社の半導体をより多くのデバイスに普及させるため、700ドルという低価格のPCをターゲットとした8コアプロセッサ「Snapdragon X Plus」をリリースしました9。従来スマートフォン向けチップに注力してきたクアルコムは、インテルなどの企業に対抗するため、PC市場での存在感を高めています。マイクロソフトのWindowsオペレーティングシステムを搭載したPC向けに設計された新しいSnapdragon Xシリーズは、強力なAI機能を提供する一方で、バッテリー寿命が長く、AIを活用した幅広いアプリケーションに適しています10。クアルコムの推進は、マイクロソフトがCopilot + PCを発表したことに続くもので、Copilot + PCはクアルコムのチップを利用してデバイス上のAIタスクを管理します。インテルも最近Core Ultra 200Vシリーズを発表しており、このシリーズもまた、より優れたバッテリー寿命でPCのAI機能を強化することを目的としています11。インテルのチップは2024年9月に発売される予定です12。
自動運転&電気自動車
ウーバー、AIスタートアップのウェイブおよびクルーズと提携し、自動運転車のイノベーションを推し進める
ウーバーと、あらゆる車両に対応する汎用運転AIシステムの開発を目指すAIスタートアップのウェイブ(Wayve)は、自動運転技術の発展に向けた提携を発表しました。契約の一環として、ウーバーはウェイブに出資し、そのリターンとして少数の持ち分を取得します13。ウェイブのAV2.0テクノロジーは、車両が物理的環境からのデータを利用して自律的に走行することを可能にするもので、自動車メーカーに、既存の車両を高度運転支援システムや完全自動運転機能で強化する能力を提供します。ウェイブのAIソリューションを統合することで、ウーバーは自社のプラットフォーム上での自動運転車の開発を加速することができると考えられます。ウーバーはさらに、ゼネラルモーターズの自動運転車企業であるクルーズ(Cruise)をウーバーのプラットフォームに導入するため、複数年にわたるパートナーシップを締結しました14。サービスが開始されると、ウーバー利用者はクルーズの自動運転車の利用を選択できるようになります15。いずれの提携も、自動車業界のカーシェアリング、電動モビリティ、自律走行モビリティへのシフトをさらに強固なものにし、ウーバーを交通の未来における重要なプレーヤーとして位置づけるでしょう。
防衛技術
防衛テックの民間投資が勢いを増す
現代の軍隊がAIを搭載した無人の戦争道具を採用する中、防衛関連のスタートアップ企業であるアンドゥリル・インダストリーズ(Anduril Industries)はシリーズFラウンドで15億ドルを調達し、評価額を2022年の85億ドルから140億ドルに引き上げました16。同社はこの資金を、労働力の拡大、インフラの強化、サプライチェーンの強化に充てる予定です。投資の大部分は、年間数万台の自律型軍事システムを生産するArsenal-1工場の動力源となる新たな製造プラットフォーム、Arsenalに充てられます17。アンドゥリルがAIを搭載したドローンやロボティクスに注力することは、防衛生産における重大な穴、特にウクライナでの戦争によって露呈した溝を埋めることを意味します。武器の補充には長いリードタイムがかかるため、防衛産業界では紛争に迅速に対応することが課題になります。スケーラブルで費用対効果の高い自律型システムは、アンドゥリルをディスラプターとして位置づけると同時に、米国とその同盟国に軍事的即応態勢を強化する能力を提供します。
水素
欧州委員会、オランダとスペインのグリーン水素支援スキームを承認
欧州委員会は、オランダが再生可能な水素を製造するための9億9,800万ユーロ(10億9,000万ドル)の資金支援スキームを承認しました。このスキームは、少なくとも200メガワット(MW)の電解能力の建設を支援し、2025年に電解槽の能力を500MW、2030年までに3~4ギガワット(GW)まで拡大するというオランダの取り組みに貢献します。また、2024年までに6GW以上、2030年までに40GW以上の再生可能水素電解槽を設置するというEUの目標にも貢献する形になります。対象プロジェクトは、費用の80%までが補助金で賄われ、最長10年間のプレミアムを受け取ることができます18。入札プロセスは年末までに完了する予定です。欧州委員会は、スペインの再生可能水素プロジェクトに対する12億ユーロ(13億ドル)の資金支援パッケージも承認しています。この新たな支援スキームは、最大100MWの電解槽容量の設置を補助することが期待されています。対象となる投資には、再生可能エネルギー由来の電力生産、再生可能水素由来の燃料生産、そして再生可能水素貯蔵が含まれます19。
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