次のビッグテーマ(グローバル):2024年10月

防衛テクノロジー

ドローンシステムがさらに勢いを増し、現代戦の戦術転換を示唆

米国のドローン・サプライヤーであるエアロバイロンメントは、歩兵大隊にスイッチブレード徘徊型兵器の提供に向けて米陸軍と10億ドルの契約を結びました1。スイッチブレード・ドローンとは通常のドローンと同様に監視能力を持ちつつ、戦車、軽装甲車、硬目標、敵の人員を破壊できる誘導ミサイルとしても使用できるドローンを指し、米陸軍は10年以上にわたってスイッチブレードを使用してきました。また、ウクライナ軍がスイッチブレードを採用したことにより、同ドローンの戦略的有用性および資金が乏しい軍にとって重要である、経済的効率性を明らかにしています。現時点で他にスイッチブレードを運用している国は英国のみですが、ウクライナで戦争が始まって以来、フランス、リトアニア、オーストラリアなどの国々が当システムを購入する契約を結んでいます2。これらのような動きから、ドローンシステムの成熟度と効率が上がったこと、そしてドローン市場によって戦争が今までとは変わってきていることが分かります。

人工知能

AIへの期待がIPO市場に

半導体やスーパーコンピューターの設計・製造を行い、さらにAIやソフトウェア・サービスを提供する米セレブラス・システムズが米証券取引委員会(SEC)にIPOを申請しました。当IPO申請は生成AI関連の企業としては初となり、今年後半に実現する可能性があります3。セレブラスは他のAIチップ企業との差別化を図るにあたり、AIコンピューティングにウェーハスケールエンジン(WSE)アプローチを採用しています。一般的なチップ製造プロセスではウェハが複数の小さなチップにスライスされ、独立したプロセッサとして機能しますが、WSEアプローチではウェハ全体を単一の統合処理ユニットとして使用します。WSEアプローチでは従来のチップ・スケーリングの限界を解消することを目的としており、大きいウェハサイズを使用することによる同時作業の向上、待機時間の短縮、メモリへの接近性改善などのメリットをAIワークロードで活かせる可能性があります。セレブラス社はWSEアプローチにより学習・推論性能の両市場において提供価値を高めることができるため、当社では今後WSEが唯一無二なAIハードウェアを市場にもたらす可能性を秘めていると考えています。

リチウムとバッテリー技術

政府投資で米国の電池製造サプライチェーンが活性化

米エネルギー省(DOE)は先端電池と電池材料の国内生産の促進を目指すため、インフラ投資雇用法(IIJA)を通じて30億ドル以上の資金提供を発表しました。内容はリチウム、グラファイト、マンガンなどの重要鉱物の調達や加工から電池の製造・リサイクルまで電池製造のサプライチェーン全体をカバーする、14州にわたる25のプロジェクトへの資金提供です4。その中、かん水からリチウムを抽出するプロジェクト二つに対しそれぞれ最大2億2500万ドルの助成金が交付されます。中でもカナダのスタンダード・リチウム社とノルウェーのエクイノール社の共同パートナーシップでは、20年間で最大4万5,000トンのバッテリー品質の炭酸リチウムを生産することが期待されています5。再生可能エネルギー・グリッドや運輸産業の電化にはバッテリーが不可欠であるため、今後のバッテリー生産において米国の存在感が高まることが示唆されます。

ヘルスケア・イノベーション

画期的な統合失調症治療薬の承認

米国食品医薬品局(FDA)は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の成人向け経口統合失調症治療薬「コーベンファイ」(Cobenfy)を承認しました。30年以上ぶりの統合失調症治療薬の承認となるコーベンファイはこれまで主流であったドーパミン受容体ではなく、コリン作動性受容体を標的とする新しい薬理学的なアプローチを採用しています6。統合失調症は世界で障害の要因として15位に挙げられており、米国では患者数が280万人に達すると推定されています。また、患者は早期死亡のリスクが高いとも言われています7, 8。現在の治療は症状の軽減に有効であるとされていますが、最大6割の患者の間では症状の改善効果が不十分な場合や、耐えがたいほどの副作用が起きる場合などがあります。コーベンファイの臨床試験では統合失調症に多くある幻覚、妄想、思考障害といった症状の管理に効果が見られ、患者に新たな選択肢を提供できる可能性があります9

クリーンエネルギー

米スリーマイル島再稼働、信任を得た原子力発電

米エネルギー企業コンステレーション・エナジー社は原子力規制委員会の承認を前提に、2028年までにスリーマイル島原発を再稼働させる計画を発表しました。コンステレーション社は16億ドルを投じて2054年まで同原発の運転を延長する企画だとしており、マイクロソフト社と20年間の電力購入契約(PPA)を締結しました10。マイクロソフトの関心は企業の持続可能性の目標を守りつつ、高まる電力需要を満たすために原子力発電所を活用するハイテク企業のトレンドを反映しています。マイクロソフトはAIの普及によって増加するデータセンターが使用する電力を満たすにあたり、当発電所のゼロエミッション電源を利用することを企画しています11。米国で原子力施設の閉鎖が数十年相次いだ今、スリーマイル島原発の再稼働はクリーンで信頼性の高いエネルギー源である原子力発電の復活の始まりだとも捉えられます。ハイテクや電気自動車などのセクターからの需要の増加に伴い、原子力発電はエネルギー供給網のバランスを取りつつ将来の需要を満たすにあたり不可欠なものとなってきました。また、原子力エネルギー市場に関しては超党派での支援もあり、このような目標を達成する機会は拡大し続けています。

データセンター

10万GPUを超える新しいAIクラスターの発表

イーロン・マスク氏が率いるxAIは、Nvidia H100 GPUが10万個使用される世界最大級のAIトレーニングシステム「Colossus」スーパーコンピューターを発表しました12。xAIがわずか122日で構築した同システムは、今後数か月更にNvidia H200 GPUを5万個追加し、規模を倍増させる予定です。Colossusは今後リリースされるGrok 3の大規模言語モデル(LLM)の訓練で重要な役割を果たし、最大150メガワット(MW)の電力を必要とします13。世界的なAIチップ不足が緩和される中、xAIのような企業はGPUの大量発注によってシステムの規模を拡大することが可能になります。メタ社も次世代のLlamaモデルの訓練で10万台のNvidia H100 GPUを搭載した独自のAIクラスターの配備を控えており、GPUのみのコストで20億ドルを超える可能性があります14

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