次のビッグテーマ(グローバル): 2024年11月
人工知能
勢いを増し続けるカスタムAIチップ
OpenAIはブロードコムおよび台湾セミコンダクター(TSMC)と協力し、AIシステムのサポートやハードウェアサプライチェーンの多様化を目的として同社初となる独自のチップを開発しています1。以前はファウンドリーのネットワークを設立するという更に野心的な計画がありましたが、高いコストと実装までの時間が長くなることから非現実的だと判断され、今回のプロジェクトでは戦略上の転換を反映しています。現在はエヌビディアのGPUがAIハードウェア市場を支配していますが、OpenAIは独自のチップを設計することにより外部サプライヤーへの依存を減らそうとしています。具体的には、OpenAIは推論チップの製造にブロードコムを採用する予定であり、推論チップに関しては今後数年間のAIアプリケーションの展開に伴い学習チップよりも大きな需要が見込まれています2。
ブロードコムは既にアルファベットやメタなどの主要AIチップサプライヤーであり、今回のOpenAIの動きは性能向上とコスト抑制を目的として独自チップ開発を追求してきたアマゾンやマイクロソフトなどの他のハイテク大手と足並みを揃えるものです。TSMCとの製造協力は、AIプレーヤーが供給の確保に向けてパートナーシップや社内外のアプローチを駆使して活用し、AIエコシステムの拡大に繋げていることを強調しています。
防衛テクノロジー
防衛テック業界重鎮、提携して欧州の戦車生産を強化
欧州を代表する防衛技術サプライヤー、伊レオナルドと独ラインメタルは欧州の戦車生産をより強化するため、50対50の比率で合弁会社を設立します。同ベンチャーの主な目的は、次世代イタリア主力戦車(MBT)と装甲歩兵戦闘システム(AICS)用Lynxプラットフォームを開発することで、イタリア軍を支援することです。これらは両方とも、イタリアの陸上システム近代化プログラムの主な要素です3。
ラインメタルが開発したPanther KF51は、イタリア軍の国産戦車Arieteに代わる新型主力戦車の基礎となります。イタリアのAICSプログラムでは、将来的に16種類の装甲戦闘システムで1000台超を調達する予定です。従来の歩兵戦闘車両に加え、対空戦車(スカイレンジャー)、偵察車、対戦車車両が用意される予定で4、他にも回収ユニット、工兵ユニット、橋梁敷設ユニットなどの関連車両の生産も計画されています。両社は、これらの先進戦闘システムの国際的な需要が大幅に高まると予想し、自国軍の資産アップグレードを検討している市場にて幅広い顧客を獲得できることを見込んでいます5。
ヘルスケア・イノベーション
次世代GLP-1開発、大躍進に向けて医薬品メーカー間で競争激化
今後数か月にわたり、収益性の高い肥満症薬市場に新規参入を目指す新薬のデータが発表され、デンマークの製薬大手ノボ・ノルディスク社や米イーライ・リリー社の人気肥満治療薬の潜在的競合薬になると考えられます。米アムジェンは、GLP-1製剤「マリタイド」のフェーズ2試験の結果を年内に報告する予定です6。マリタイドは既存の薬と同じく二つの腸内ホルモン、GLP-1およびGIPをターゲットとしますが、既存のウゴービやゼプバウンドの注射頻度が週に1回であるのに対し、マリタイドでは月1回まで減らせると言われています7。マリタイドのフェーズ2試験が成功した場合はフェーズ3試験に進み、2027年には承認まで進められる可能性があり、売上高は2030年までに42億ドルに達すると予測されています8。また、ノボ・ノルディスクは既存の肥満症薬オゼンピックとウゴービに使用されているGLP-1薬「セマグルチド」と、体重減少に働くアミリン、カルシトニン受容体を活性化させる「カグリリンチド」の組み合わせとなる「カグリセマ」のフェーズ3試験データを発表する予定です。新薬は早ければ2025年にも承認される可能性があり、売上高は2030年までに210億ドルに達すると予測されています9。
リチウムとバッテリー技術
超大手鉱山会社、リチウム市場での存在感を更に拡大
大手鉱山会社リオ・ティントは、米国のリチウム生産会社アルカディウム・リチウムを1株当たり5.85ドル、総額67億ドルで買収する意向を発表しました。アルカディウム・リチウムは、リチウム採掘を手掛ける米リベントと豪オールケムの合併により2024年初に設立された垂直統合型のリチウム化学品メーカーで、リチウム化学品の製造と抽出プロセスの技術を有します。アルカディウムの現在の年間リチウム生産能力は、水酸化リチウムや炭酸リチウムなどのさまざまな製品を含めると炭酸リチウム換算で75,000トンであり、2028年末までにこの能力を2倍以上に拡大する計画があります10。この取引が成立すれば、リオ・ティントは、米アルベマールとチリのソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ(SQM)に次ぐ世界第3位のリチウム生産者になる可能性があります11。今回の買収は、世界エネルギー転換が進められている中で鉱山会社による鉱物確保が進み、中国のリチウム供給過剰による価格低迷が続く中でのニュースでした。
データセンター&デジタルインフラ
大手ハイテク企業のデータセンター建設、減速の兆しなし
現在進行中のAIブームにより、大手クラウドプロバイダーを中心にデータセンター建設が急増しています。アマゾンは最近、新しいデータセンター・キャンパスの建設に向けてアリゾナ州フェニックスに220エーカー(約0.89km2)の敷地を2.77億ドルで購入しましたが、その東側には既に各22.7万平方フィート(約21万m2)の面積を占めるデータセンターを4つ建設しています12。また、アマゾンはバージニア州ルイーザ郡に380万平方フィート(約35万m2)のデータセンター・キャンパスの建設を申請しており、バージニア州北部における存在感を増しています13。マイクロソフトはオハイオ州に3か所のデータセンター・キャンパスを開発するために10億ドルを投資すると発表しており、そのうち4.2億ドルは、ニューオールバニー市にある24.5万平方フィート(2.3万m2)のキャンパスに割り当てられます。ニューオールバニー市はマイクロソフトに対して15年間の減税措置を承認しており、データセンターは2025年7月に着工し、2027年後半に完成する予定です14。一方、グーグルは、最近税制優遇措置が承認されたこともあり、ノースカロライナ州のシャーロット地域で6億ドルのデータセンター拡張を検討しています15。
自動運転と電気自動車
自律走行の未来へ向けて前進する電気自動車
テスラは、無人タクシー「サイバーキャブ」および20人の輸送・商業目的でも使用できる「ロボバン」を発表しました16。サイバーキャブは完全に自動運転となる見込みであり、ハンドルやペダルはなく、ワイヤレス誘導技術による充電が可能となる見込みです。テスラの自動運転機能(FSD)モデルにおける進歩を表しており、テスラは、サイバーキャブが2027年までに30,000ドル以下で市場に投入されることを期待しています。また、テスラは来年中にモデル3とモデルYの電動自動車にも自動運転機能を実装することを目指しています17。電動自動車が自動運転機能とテスラの次期ライドシェアアプリを搭載でき次第、ライドシェアアプリでも利用できるようになると予想されており、業界に大きな価値をもたらす可能性があります。
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