次のビッグテーマ:2022年11月

ソーシャルメディア

デジタル広告投資が減速する中でユーザーエンゲージメントは好調

主要ソーシャルメディアプラットフォームの決算が発表されました。それによれば、景気後退が懸念される中で、全ての企業がデジタル広告投資の減速に影響されていることが明らかになりました。Alphabet Inc.が発表した2022年度第3四半期決算では、YouTubeの広告収益が前年比で約2%下落して70億7,000万米ドルとなりました。1 Googleについては、保険、融資、住宅ローンなどの分野が著しく不調でした。2 一方、旅行や小売はGoogle Servicesセグメントの収益に貢献しました。3 Snapchatは、事業環境の悪化、インフレ圧力および資本コストの上昇により広告パートナーのマーケティング予算が縮小されたと発表しました。Metaの広告収益は前年比4%減の272億米ドルとなりました。4

明るい要素は、ユーザーエンゲージメントが引き続き拡大していることです。Snapchatの第3四半期における日次アクティブユーザー数(DAU)は19%増の3億6,300万人となり、予想を上回りました。5 Facebookの第3四半期における月次アクティブユーザー数(MAU)は前年比2%増の29億6,000万人となりました。6 また、Metaのアプリ(Facebook、Instagram、WhatsAppまたはMessenger)のいずれかにログインしたユーザー数は37億1,000万人となり、前年比では4%増加しました。7

クラウドコンピューティング

クラウドは緩慢な成長が続く

ハイパースケーラー上位3社が1年前に発表した決算では、収益の増加率が40%を超えていましたが、2022年第3四半期には減速しました。アマゾン ウェブ サービスの収益は前年比で27%上昇し、Microsoft Azureの収益は前年比で35%上昇しました。8、9 Azureについては、消費収益の成長は引き続き緩慢であり、エネルギーコストの上昇が売上総利益に悪影響を与えました。Google Cloudの収益は前年比で38%上昇しました。10 第2四半期からの増収額は6億米ドルであり、これはAuzreに匹敵しています。つまり、Google Cloudは巨大な競合2社に対抗してシェアを大きく拡大していることになります。11 第3四半期においてこの業界の成長が緩慢となった要因は様々に推測することができますが、いずれにせよ、企業はインフラツール、モニタリングシステム、ソフトウェア定義ネットワーク、セキュリティソフトウェアなどの重要な長期的プロジェクトへの投資を継続するとGlobal Xは予想しています。

Eコマース

ホリデーシーズンのデジタル販売は明るい見通し

今年のホリデーシーズンにおけるeコマースの運命は、依然としてインフレの懸念が鍵を握っています。ある予想によると、11月および12月の米国デジタル消費者支出は前年比6.1%のわずかな増加と見込まれますが、それでもなお小売業全体の前年比4%増よりは高い水準にあります。12 主要オンライン小売業者の第3四半期決算ではeコマースの明るい見通しが示されました。米国最大の小売業者であるアマゾンは2四半期連続で損失を計上しましたが、その後は収益性が向上しています。
同社が発表した第3四半期決算では総売上高が1,271億米ドルとなり、前年の1,108億米ドルから15%の大幅上昇となりました。13
また、同社のeコマース売上高は前年比13%増の534億米ドルとなりました。14 Etsyは第3四半期決算が予想を上回り、第4四半期の業績予想は上方修正となりました。これを受けて同社の株価は上昇しました。同社の第3四半期の収益は前年比で11.7%の増加となりました。取引手数料を引き上げたことが要因の1つです。15 また、eBayの決算発表も予想を上回りました。その要因は、新品以外(中古品および再生品)の季節商品の流通総額(GMV)が増加したことにあります。

リチウム&電気自動車(EV)

「持続可能な自動車」の市場は経済危機を尻目に好調

リチウムメーカーおよびEVメーカーは、輸送手段の電動化への需要が高まる中で、引き続き好環境を享受しています。リチウムについては、アルベマールが決算を発表し、収益が前年比152%増の21億米ドルとなったことを報じるとともに、リチウム部門における通期の利払前・税引前・減価償却前利益(EBITDA)が500~550%の増加となるとの予想を再確認しました。16 アルベマールによれば、リチウム価格の上昇により第4四半期の業績が上昇する可能性がある一方で、サプライチェーンの問題により生産量が伸び悩めば業績が悪影響を受ける可能性もあるとのことです。Liventの決算では、収益が124%増の2億3,160万米ドルとなりました。17 EVメーカーでは、Stellantisが決算を発表し、純収益が前年比29%増の421億ユーロとなったことを伝えました。18 同社によれば、今回の増収の要因は、販売台数の増加、堅調な純価格および外為取引によるプラスの効果とのことです。同社の全世界における電池EV車売上高は前年比41%の上昇となりました。19

ゲノミクス

血友病遺伝子治療に的を絞るバイオマリン

米国食品医薬品局(FDA)は、バイオマリンの血友病向け後期遺伝子治療薬「ロクタビアン」のレビューを実施する予定です。同社は9月にロクタビアンの再申請を行っていました。今後の日程には不透明な部分がありますが、バイオマリンは2023年3月末までに決定が下されると予想しています。ロクタビアンは、最も一般的な血友病である血友病A型の治療を目的とした医薬品です。この治療には、改変した複製遺伝子を特殊なウイルスを使用して送達し、血友病により患者に不足している血液凝固タンパク質を生成するという内容が含まれています。後期臨床試験では良好な結果が得られているもの、FDAは少なくとも2年間のモニタリングを追加実施することを要求しています。臨床試験の結果が良好であることから、バイオマリンは引き続き承認に希望を抱いています。欧州では、ロクタビアンは最初の血友病A型遺伝子治療薬として本年初めに承認を受けています。

Pacific BioscienceはDNAシークエンシングを改良

Pacific Bioscienceは、同社初のショートリード機器で使用するDNAシーケンスを増産するほか、既存のロングリードハードウェアの改良も行っています。Revioシステムという名称の改良版は、長い遺伝子コード内を移動することが可能であり、1ピース当たり1,000米ドル未満の費用で1日に3人分以上のゲノムを処理する能力を持っています。20
Revioは、がん用途および農業用途の遺伝子研究・開発(R&D)を支援するシステムです。Revioは、計算能力を20倍に増強するNVIDIAのGPUをPacific Bioscienceが初めて使用したシーケンサーです。21

モノのインターネット(IoT)

米国による中国半導体企業への制裁が貿易摩擦を加速

バイデン政権は中国への技術輸出に対する制裁を10月に実施しました。これはこの数十年で最大の制裁と考えられています。バイデン政権は、重要な技術に中国の技術や軍事的意図が盛り込まれることを防ぎたい考えであり、その手段として高度な半導体チップの販売を制限することとしました。
この規則により、高度なチップの製造を企図している中国のチップメーカーに機器を販売しようとする米国企業は免許の取得が必要になりました。中国は主要な半導体消費国ですが、それでも全世界の生産高の約15%を占めているにすぎません。22
これまでのところ、NVIDIA、インテルおよび台湾の半導体メーカーなどのチップメーカーはこの制限に対応できています。

パフォーマンス数値

下図は、投資テーマ(対応するETFに基づく)ごとのリターンおよび予想売上高成長率です。