次のビッグテーマ:2022年8月
Eコマース
中小企業(SMB)に脚光を当てるEコマース
政府による支援や既存のコマース・プラットフォームの協力により、中小企業(SMB)が脚光を浴びています。先月、インドは主要100都市でOpen Network for Digital Commerce(ONDC)を展開すると発表しました。1 ONDCは、政府が支援するオンライン商取引市場の公平性を高める取り組みです。この取り組みにより、何千万ものキラナ(インドの家族経営企業)の競争力が、アマゾン、グーグル、フリップカートといった巨大企業に太刀打ちできる水準に押し上げられる見込みです。また、ONDCの取り組みでは金銭的なメリットも提供されており、サードパーティ販売業者が現在30%近くを支払っている紹介手数料の上限を3%としています。2 2022年第2四半期にアマゾンで販売されたユニットの57%をサードパーティ販売業者が担っていたことから、アマゾンをはじめとする企業もサードパーティ販売業者にメリットがあることを認識しています。3 これらSMBの第2四半期における売上高は、ホリデーシーズンではなかったにも関わらず270億ドルに達しました。4 同様に、アリババは毎年開催されるAIoTパートナーシップ会議で、SMBの研究開発コストの50%削減を目指すインテリジェンス・コネクティビティ戦略を発表しています。5
電気自動車(EV)
インフレ抑制法で電化が身近に
インフレ抑制法(IRA)による影響のなかでも重要なのは、それにより電気自動車(EV)購入者がどのような影響を受けるかという点です。IRAは、メーカーごとの20万台制限の撤廃や、連邦税額控除制度に柔軟性を持たせることなどを詳細に定めています。6 購入時には、消費者は新車購入者の借入コストを大幅に削減する新たなインセンティブの適用を選択することができます。対象となる価格帯や所得に制限はありますが、総じてEV市場における米国の競争力強化を目指した内容となっています。もうひとつの選択肢として、車両の購入者は、現在施行されている7,500ドルの上限付き税額控除制度が2022年12月31日以降に実用化されるEVに対し10年間延長されるため、この制度を選択することもできます。7 さらに、中古EVへの配慮もなされており、中古EVを認可されたディーラーが販売した場合、IRAにより最大4,000ドルのリベートが追加されます。8 これが適用されれば、EVの大量普及に一役買うことになるでしょう。所得要件と材料調達要件があるため、現在米国で販売されているEVのうち、2023年から始まる新しい税額控除の対象となるモデルは極めて少数であることにご留意ください。
再生可能エネルギー生産事業
世界的な現象となっている補助金オークション
世界的に、新規再生可能エネルギープロジェクトを支援するうえで国が補助金オークションを採用する例が増加しています。直近では、イギリスが11ギガワット(GW)のクリーン電力を発電できるプロジェクトとの契約を落札するオークションを行い、これを成功させました。9 このレベルのクリーンエネルギー容量はこれまでのオークションの約2倍で、英国内の約1200万世帯に電力供給が可能と見込まれており、不安定なグローバル価格への依存を減らす可能性があります。10 同様に、スペインでも10月に520メガワット(MW)の再生可能エネルギー設備のオークションを予定しています。11 このオークションでは、太陽光発電に140MW、太陽熱発電に220MW、バイオマスに140MW、その他の技術に20MWが交付される予定です。12 同国では、2025年までに20GW以上の再生可能エネルギー容量のオークションを行うことを目指しています。13 この取り組みを行っているのは、スペインと英国だけではありません。ギリシャでは2022年末までにさらに4件の再生可能エネルギーオークションを実施する予定であり、クロアチアでは現在622MWの再生可能エネルギーオークションを実施中で、すでに約150MWの発電事業に入札の申し込みがありました。14,15
アグテックと食糧のイノベーション
政治的緊張が続く中、食糧安全保障への懸念は緩和へ
ウクライナが、ロシアの侵攻開始以来初めてオデッサからの穀物輸出に成功しました。同国は国際的な仲介取引を確保し、農産物輸出の再開に漕ぎつけたのです。これは、世界の食糧危機の高まりを是正する第一歩と言えます。この取引はトルコと国連の主導で行われ、ウクライナとロシアの長きにわたる交渉の末、2万6,000トンのトウモロコシが運搬船でレバノンに運ばれました。16 紛争が始まって以来、2200万トンの穀物を積んだ16隻の船がウクライナの港に滞留したままであり、当局は港が一刻も早く輸送能力を完全に回復すべく努力しています。17 この取引により黒海の港から再び出荷する道が開かれ、今後ここ半年間で食糧価格が大幅に上昇した国々が危機から救われる可能性があります。穀物価格は、例えばスーダンなどの地域では187%、シリアでは86%、イエメンでは60%上昇しています。18
ソーシャルメディア
エンゲージメント駆動型プラットフォーム
メタ・プラットフォームの2022年第2四半期の売上高は前年同期比1%減の288億ドルと予想を下回り、同社史上初の減収となりました。19 費用が前年同期比で22%増加したことにより、営業利益が32%減少しました。20 同社は、iOS 14のアップデートでアップルが実施したプライバシー変更により、ターゲティングアルゴリズムに支障が出ている中、リールを通したエンゲージメントとマネタイズに引き続き進展が見られました。同社のビデオ機能は、すでに収益ランレートが10億ドル以上に達しており、フェースブックとインスタグラムの全ユーザータイムの30%を占めています。21 エンゲージメントの拡大は、すべてのソーシャルプラットフォームの中でプラスとなりました。メタは、アプリのエコシステムで35億人以上のユーザーを持っていますが、月間アクティブユーザーが前年同期比1%増、デイリーアクティブユーザーが同3%増でした。22 スナップチャットのデイリーアクティブユーザーは前年同期比18%増、ツイッターのマネタイズ可能なデイリーアクティブユーザーは前年同期比17%増となっています。23
人工知能(AI)とクラウドコンピューティング
低迷するマクロ環境下でのテクノロジー企業の業績
アルファベット、アップル、アマゾン、マイクロソフトなど主要テクノロジー企業の2022年第2四半期業績が発表されました。アルファベットは当四半期の広告収入が562億9000万ドルと予想を上回り、投資家による同社の短期見通しが改善しました。24 クラウド部門は前年同期比35%増、63億ドルの収益を達成しました。25 一方、マイクロソフトは、成長の大半がクラウドコンピューティング部門の寄与によるものでした。マイクロソフト・アジュールに対する企業としてのコミットメントを拡大したことにより、マイクロソフトのインテリジェントクラウド事業は前年同期比20%増の209億ドルに達しています。26 アマゾンの業績発表は、収益全体、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の収益、そして広告収入について、消費者の期待を上回る内容でした。アマゾン全体としては7%の増収、AWSは前年同期比33%増の197億4,000万ドルを記録しました。27 アマゾンと同様、アップルの収益はサービス事業の成功に牽引され、第2四半期に830億ドルという記録的な収益を計上し投資家に希望を与えました。28
パフォーマンス数値
下図は、投資テーマ(対応するETFに基づく)ごとのリターンおよび予想売上高成長率です。