ロボティクス:自動化の画期的進歩

この記事は、当社の代表的リサーチCharting Disruption 2024年版で取り上げられることが多かったテーマをさらに深掘りするシリーズの一部です。本稿は、パラダイムシフトを起こす技術の項の一部としてロボット工学に焦点を当て、この分野での様々なイノベーションについて検討します。このプロジェクトの詳細については、こちらをクリックしてください。

人工知能の実用化はロボット工学にかかっています。製造業において、ロボット・システムは精度の高い生産を確保しつつ労働力不足に対処できるため、製造業の西半球へのリショアリングなどの流れを可能にします。サービス業では、ロボット・システムが機械的で反復的な作業に取り組むことで、人間の労働者はより付加価値の高い仕事に集中することができます。例えば、医療分野では、手術用ロボットが精度を高め、効率性を向上させ、患者の治療成績を改善します。

ロボット工学の次の飛躍的変革はヒューマノイド(ヒト型)・ロボットからもたらされるかもしれません。AIアルゴリズムの進歩、より効率的な半導体、改良されたセンサーがこの画期的な技術の進展を加速させています。これらの技術が進化するにつれて、ヒューマノイド・ロボットは日常生活に抵抗感なく組み込まれ、2036年までにその累計販売台数は1億台に達する可能性があります1

重要なポイント

  • ロボット工学はAIの現実世界への応用で中心的な役割を果たします。ここ数年のAIの進歩により、工業やサービス業でロボットの新たな活用事例が開拓されていくと考えられます。
  • 米国の労働コストの上昇と半導体やEVの製造など精密産業での需要拡大を背景に、工業、特に製造業へのロボットの応用が恩恵をもたらすとみられます。
  • ヒューマノイド技術の開発が加速し、導入が進んだときがロボット工学の転換点となるかもしれません。

産業用ロボット:現代製造業の骨組

工業界でのロボットの使用は、印刷、溶接、組み立てなどの単純作業に産業用ロボットが使用されていた1950年代までさかのぼります2。固定式ロボットの機能はマイクロチップ(集積回路)とソフトウェアの出現により劇的に変化し、ロボットはより高速、より正確でプログラム可能なものになりました。この進化によって、性能が向上しただけでなく、様々な産業や小規模な生産にも応用できるようになりました。

今日では高度なAIアルゴリズム、より強力な半導体、改良されたセンサーやアクチュエーターを利用することができ、また、電気機械システムへの理解が進んだことによって、産業用ロボットの能力が著しく向上しました。

この点も産業用ロボットの導入と使用を促進しています。2023年に世界の製造業者が導入した産業用ロボットは前年比10%増の約430万台となりました3。特に旺盛な需要がみられるのは、製造業のリショアリングなどの要因が下支えしている北米のような市場です。例えば、米国の製造業者は2023年に4万4,303台(前年比12%増)の産業用ロボットを導入しました4。カナダではさらに高い伸びを示し、自動車セクターを中心に前年比43%増の4,616台が導入されました5

リショアリングが進む中、人件費の上昇と生産コストパリティ水準の維持という二重の圧力に対処するソリューションとしても、製造業者はロボットを支持しています。米国では、2023年に製造業の賃金が4%近く上昇したため、グローバルな外注生産と関連する単位製品当たりの経済的優位性を維持しながら、米国内での生産を行うことが困難になってきました6。2030年までに米国の製造業の賃金はさらに上がり、2023年の水準と比較して約35%上昇すると予想されています7

加えて、エレクトロニクス製品や半導体、自動車など高い精度が要求される産業のリショアリングを目的とする投資も、品質と価格の均衡を確保するために高度なロボット・システムの導入を一層必要としています。これらのセクターでは、最先端のロボットだけが確実に満たすことのできる厳しい生産基準が要求されます。

最後に、産業用ロボットの配備コストも急速に下がっており、センサーやソフトウェア、ハードウェアの進歩により過去10年間で25%近く低下しています8。価格の低下により、このテクノロジーは一層利用しやすくなると考えられます。

サービス用ロボット:人的作業の効率化

ロボットの使用が狭い範囲に限定されている産業用ロボットと異なり、サービス産業におけるロボットは、はるかに多くの目的に対応する必要があります。小売業や娯楽施設などの環境で動くロボットは、人間の周りで効果的に機能するために適応性と安全性の両方を兼ね備えている必要があります。このようにロボット技術のほぼ完璧な設計を要求される点が導入の高い障壁となっています。

しかし、最近の技術進歩と拡大しつつある様々な使用方法に向けたロボットの開発は今後の進展を約束しています。医療分野では、ロボットは外科医のアシスタントとしての役割を拡大しており、外科手術の精度と信頼性を高めています。手術用ロボット・システムのパイオニアであるインテュイティブ・サージカルは、同社のダビンチ手術システムで220万件近くの手術が2023年に行われたと最近発表しました。前年比22%伸びており、このような技術の使用が増えていることが分かります9

物流と運輸の分野では、電子商取引企業は、屋内外の明確に定められた地理的空間でロボットを使用することでより効率的に事業を運営することができます。アマゾンは世界中の拠点で75万台近くのロボットを運用しています。これは従業員2人に約1台の割合です10。同社の倉庫業務における離職率が年間150%にも上る中、ロボットは生産性の維持に役立っています11。ウォルマートの倉庫もロボット・フォークリフトの導入で生産性を向上させています12

同様に、年間離職率が80%に達するレストラン業界も、カウンター業務や注文処理、調理、さらには安全面においてもロボットの恩恵を受けることができます13。2022年の時点で、世界のレストラン1,500店につきサービス・ロボットはわずか1台しか使用されておらず、成長の余地があります14

安全性や人間とともに働く能力などの要因から、サービス・ロボットの導入には長い時間がかかります。しかし、2020年代にこの技術は着実に広がり、より広範な自動化のテーマに貢献するとみられます。

ヒューマノイド:ロボット工学で起きる次の大ブーム

私たちの物理的環境は主として人間のために設計されています。当然、人間の形をしたロボットの方が、私たちの周りで効果的に機能するのにはるかに適していると考えられます。また、人間に似た形をしていることがロボットを社会的に受け入れやすくし、家庭内に組み入れやすくするでしょう15。こういった理由から、ヒューマノイドの登場はロボット工学にとって重要な転換点となる可能性があります。

AI、とりわけ大規模言語モデルのような技術を通じてAIを人間と対話させるという点で前進がみられ、これが現実のものになりつつあります。技術進歩は資本の支援も呼び込んでいます。例えば、2023年と2024年に、ヒューマノイド開発を対象とした民間資金の提供が顕著に増加しました16

ヒューマノイド市場は、工業や家庭での使用事例が現れるにつれ、固定式ロボット市場を軽く凌駕する可能性があります。工業界では、ヒューマノイドはより複雑な仕事(重労働から多様な作業環境への適応まで)をこなし、比類のない柔軟性の提供、生産性の大幅な向上という点で協働ロボット(コボット)を上回るかもしれません。家庭では、ヒューマノイドが掃除、料理、介護などの作業を支援することで、日常生活に革命をもたらす可能性があります。

2036年にはヒューマノイドの累計販売台数は1億台に近づくと予測されています17。ヒューマノイド技術が今後たどる道はおそらく自動車が登場し始めたときと同じで、大規模な技術的転換の始まりとなる可能性があります。工業用と家庭用を合わせると、ヒューマノイド市場は2035年までに4兆8,000億ドル規模になる可能性があります18

結論

ロボットはAIを現実世界に持ち込むための鍵です。AIがより高度になり、手頃な価格になり、利用しやすくなるにつれて、自動化が急速に進むでしょう。これと並行して、より高い精度、効率性、柔軟性への需要など、産業界の目先のロボット推進要因は強まる一方であるため、この技術への資本や資源の提供が拡大すると予想されます。産業界におけるこれまでで最も徹底した破壊的創造がヒューマノイド・ロボットによってもたらされる可能性が高く、2030年までに後戻りできない転換点に達し、私たちの生活、仕事、経済運営のあり方は大きく変わるでしょう。この相互に関連したイノベーションが進展するにつれて、自動化とAIのテーマは、破壊的創造を探している投資家にますます大きな機会をもたらすと当社は考えています。

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