インフラと環境:明日の基盤をつくる

この記事は、グローバルXの代表的リサーチCharting Disruption 2024年版で取り上げられることが多かったテーマをさらに深掘りするシリーズの一部です。「インフラと環境」の項では、インフラ、クリーンテック、モビリティに焦点を当てます。このプロジェクトの詳細については、こちらをクリックしてください。

インフラ開発に対する需要が世界的に高まっています。これは、複数の強力な構造的トレンドのいずれもがインフラの整備を必要としているためです。これらのトレンド(気候変動問題の深刻化から人工知能(AI)・再生可能エネルギー・電気自動車などの破壊的技術の急速な普及に至るまで)は、現代社会を下から支えている必要不可欠なシステムについての考え方や構築方法を変革しつつあります。加えて、エネルギー需要の増加、気候変動、技術進歩に対処する政府の施策によって、世界中で何兆ドルもの官民の投資がインフラ資産の開発と強化に向かっています。インフラに対するニーズと潜在的な投資が増大し続けていることから、インフラ開発やクリーン・テクノロジー、モビリティのバリューチェーン全体において、企業の収益機会が増加すると予想されます。

重要なポイント

  • 世界の多くの国と同様に、米国は強い影響力を持つ複数の世界的トレンド(気候変動、電動化、人口構成の変化、既存資産の老朽化など)の圧力を受け、インフラ再生が待ったなしの状況になっていると考えられます。
  • 気候変動の深刻な影響を回避するために温暖化を産業革命以前に比べて1.5°C~2°Cの上昇に抑えることが依然として不可欠であるという点については世界的に合意がなされています。これを達成するには、2023年から2050年の間に温室効果ガスの排出削減技術に対し推定150兆ドルの投資が必要です1
  • 電気自動車(EV)は輸送セクター内のニッチな分野から主流な存在になってきましたが、価格の低下と技術の進歩によってさらに大きく成長する余地があります2

明日への道を開く:インフラへの投資

インフラ開発は世界的な重要課題であり、老朽化した資産は世界中で問題となっています。例えば、米国ではすべての電力網の半数近くが20年以上経過しており、橋梁の1/3は大規模な修繕や架け替えが必要となっています3,4。現代の需要に対応するには、老朽化したインフラ・システムの更新や維持に多額の投資が必要です。しかし、世界のインフラ投資は単なる修繕や改良を超えるものでなければなりません。世界の多くの地域で人口が増加し、かつ都市に集中するようになっているため、今後、インフラ資産の大規模な構築が必要になります。推計によると、2050年に予測される世界人口を支えるために必要なインフラの60%がまだ建設されていません5

加えて、AIなどの新しいテクノロジーが効果的に機能するためには、より高度で強靭なインフラが必要になります。これには、大規模なデータセンターの開発だけでなく、発電所や半導体製造工場の建設・拡張も含まれます。この多面的課題に対処するには技術の進歩、エネルギーやインフラの開発を統合した包括的なプランニングが必要です。

以上を踏まえ、世界のインフラ開発は、既存の物的資産に関する問題だけでなく将来の技術的需要やエネルギー需要にも対処する必要があります。様々なセクターの進歩を牽引するイノベーションを支援することができるシステムを構築するには、こういった総合的アプローチが必要であるとグローバルXは考えています。さらに、これらの進歩を推進するために必要となるエネルギーが状況を一層複雑にします。今までよりもエネルギー集約的な技術に世界が移行する中で、持続可能で安定的なエネルギー供給の確保が極めて重要になります。

クリーンテックの強化:再生可能な未来

地球温暖化を1.5°C以内の上昇に抑えるには、2023年から2050年の間にエネルギー転換技術に対して世界全体で推定約150兆ドル、年平均約5兆ドルの投資が必要です6。2024年の予測ではクリーン・テクノロジーに提供される資金が推定2兆ドルであることを踏まえると、この気候目標を達成するには、こうした投資への世界的なコミットメントを増やす必要があります7。最も投資が不足している分野の一つが電力網(パワーグリッド)です8。電力セクター全体を通じて排出量を削減し電力供給の安定性を向上させるには、再生可能エネルギーとエネルギー効率システムの広範な活用、さらにエネルギー貯蔵インフラや電力網インフラの大規模な構築が必要です。

幸いなことに、クリーン・エネルギーへの移行は順調に進んでいます。有利な政策環境や技術の進歩、継続的なコスト低下を背景に、2035年までに追加される総発電容量の推定89%は風力と太陽光によるものと予測されています9。AIの利用から必要となる電力需要も再生可能エネルギーを含む様々な電力源の拡大を後押しするとみられます。また、追加されるエネルギー貯蔵容量はコストの低下と技術の進歩によって、2023年の44ギガワットに対し、2030年には140ギガワット近くまで拡大する見通しです10

低炭素水素産業も政策の支援を得て世界的に勢いを増しています。プロジェクト・パイプラインは予想よりも進捗が遅いですが、クリーン水素生産は2024年から2030年の間に年平均76%増加すると予想されています11,12,13。エネルギー転換が進むにつれて、クリーン技術やインフラ資産は持続可能な低炭素の未来を可能にする上で不可欠な役割を担うようになります。

輸送を前進させる:EVと電池技術

ここ数年の間に、電気自動車(EV)は自動車産業の中で特殊な分野から次第に重要な位置を占めるに至りました。EVは2024年に世界の乗用車販売台数の20%近くを占めると予想されています14。自動車メーカーによる安価なモデルの発売、充電インフラ・ネットワークの拡大、EV購入層の継続的増加により、EVの市場シェアは2035年までに55%に達する可能性があります15。この急増は全固体電池などの電池技術の進歩によっても推進される可能性が高いと考えられます。全固体電池はエネルギー密度の上昇と充電時間の短縮によってEVの性能・安全性の向上や価格の低下をもたらすものと期待されています。

しかし、この電動化革命の核心部分には重要な課題があります。それは、EV電池の生産に不可欠なリチウム、銅、コバルトなどの鉱物に対する需要です。EVの普及が世界的に加速する中で、これらの鉱物に対する需要の増加を賄うことができるのかという懸念が高まっています。実際、リチウムの需要だけでも2030年までに150%以上増加する見通しです16。これらの鉱物のサプライチェーンは採掘能力の限界や地政学的リスクなどの困難に直面しています。これらの課題への対処は、この市場が拡大し続ける上で、また、より広い観点で言えば持続可能な低炭素の未来に移行する上で不可欠です。

結論:構造的トレンドは現在と未来のためにインフラ開発を求めている

気候変動、電動化、技術進歩、資産の老朽化などの構造的トレンドがいずれもインフラ開発を求めている結果、様々なインフラ資産に関して新たな成長の機会が生まれています。気候変動は今までよりも極端な気候に耐えることができるインフラを必要とし、電動化は再生可能エネルギーやEVを支える強固な電力網を必要としています。人工知能のような技術進歩はデータセンター、コネクティビティの迅速化、発電量の増加、統合的なシステムを必要とします。同時に、多くの地域で老朽化しているインフラは、障害の発生を阻止し、パフォーマンスを最適化するために改良する必要があります。物理的土台を構築することによって、インフラは、よりスマートな都市や効率的な物流、持続可能な発展を可能にする変革的技術の展開を支えることができます。

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