エージェント型AIがクラウド・コンピューティングを促進

人工知能(AI)は、毎回の進歩が一層高度なシステムの開発を促進するテクノロジー的好循環の原動力となっています。2022年末のChatGPTのリリース以来、生成AIがAIストーリーを牽引してきましたが、2025年は受動的な情報処理から積極的かつ実用的なAIへと移行する「エージェントAI」の年になると考えています。

AIエージェントとして知られる、タスクを最初から最後まで自律的に処理するように設計されたAIシステムは、オープンAIのChatGPTやアンソロピックのClaudeなど、現在私たちが使用している対話スタイルのAIインターフェースから大きな飛躍を遂げています。AIエージェントには、見込み顧客へのセールスや旅行の予約などの特定のタスクを完了するように設計されたものもあれば、より広範にサイバーセキュリティや人事関連の業務を行うものもあります。

AIの導入が進み、企業のアプリケーションが広がるにつれて、日常生活に使われるエージェント型AIの開発が急増するとみられます。このような日常的タスクを処理するエージェントは、インターネット時代の初期に台頭した、独立しているウェブサイトと同様の成長軌道をたどり、数十億ドル規模の市場になる可能性を秘めています。

エージェント型AIの発展に伴い、新たに革新的な企業が登場するとみられる一方、既存のソフトウェア企業やクラウド・コンピューティング企業もこの変化を活用することができると考えられます。AIエージェントによってデータ生成が促進され、ストレージやコンピューティング能力への需要が高まることから、クラウド・インフラのプロバイダーも恩恵を受ける可能性が高いと考えられます。このインサイト記事では、投資家の皆様がグローバルX クラウド・コンピューティング ETF(CLOU)グローバルX AI&ビッグデータ ETF(223A)などの投資ファンドを通じてトレンドのエクスポージャーを持つのが良いと考えられる理由を述べます。

重要なポイント

  • グローバルXでは、人間が常時介入することなく自律したシステムが複雑なタスクを独立して計画、実行、適応するエージェント型AIが今後、AIの最前線になると考えています。
  • エージェント型AIの市場機会は大きく広がっています。なぜなら、エージェント型AIはクラウドの導入を加速し、企業向けソフトウェアの価格モデルを大きく変え、様々な業界にわたって利益と生産性を大幅に向上させることができるからです。
  • エージェント型AI市場へのエクスポージャーを求める投資家は、サプライチェーン全体にわたって、特にクラウドとAIインフラに投資機会を見出すことができます。データ・ソリューションのサプライヤーやサイバーセキュリティのプロバイダーも、データ生成の爆発的増加から恩恵を受けることができます。

AIエージェントとは

エージェント型AIとは、ユーザーからのインプット情報を理解し、複雑なタスクを独立して実行することができる完全に自律的なソフトウェアを指します。短期的な目標に限定され、行動を通じてユーザーを案内するだけの従来型のチャットボットとは異なり、AIエージェントは(ユーザーとの)対話から継続的に学習、適応しながら、長期間のタスクを自力で完了します。AIエージェントは、データセットやWeb検索、さらにはその他のAIエージェントなど、外部の情報源を活用して、タスクを完了させるために必要な情報の不足を埋め、知識ベースを精緻化することができます。

たとえば、eコマース・エージェントは、過去の販売動向、サプライヤーに対する需要や、季節変動を考慮して、在庫水準を監視し、自動的に商品を再発注することができます。また、広告エージェントは、ユーザーの行動や好みに基づいて広告の最適な配置を選択することによって、また、最高の投資利益率を得るために入札戦略を柔軟に調整することによって、ユーザー・エンゲージメントを最大化し、広告費を最小限に抑えることができます。この種の実装は、従業員をより価値の高い仕事に集中できるようにしつつ、事業の運営とコストを合理化する可能性があります。

導入の出足は好調で、長期間の成長が見込まれます。フランスのITサービス企業、キャップジェミニが2024年第4四半期に実施した調査によると、調査対象企業の51%が2025年にAIエージェントを部分的または全面的に拡充する予定であり、企業幹部の10人中7人近くが、「AIエージェントおよびマルチエージェント・システム」を「AIおよびデータ」分野における技術トレンドのトップ3の一つに挙げています。さらに、調査対象企業の82%が、自動化の開発と効率性の向上のために今後3年以内にAIエージェントを組み入れる計画を立てています1

エージェント型AIの急速な拡大により、クラウド、AIインフラ、およびその周辺市場が注目されている

エージェント型AIはクラウド・ソフトウェアの新たな最前線となり、急速な産業イノベーションを推進できるとグローバルXはみています。また、エージェント型AIは、ペイ・パー・タスク(タスクごとの課金)などの新しい収益化モデルを市場に導入し、クラウド・コンピューティング業界の採算性を変革する可能性がある一方、伝統的な旧来型企業向けソフトウェアの市場を一段と破壊する恐れがあります。

現在の予測では、2030年までにエージェント型AIは2024年の10倍近くに相当する470億ドルの市場になるとされています2。しかし、グローバルXは、市場規模がそれよりはるかに大きくなる可能性があると考えています。まず、2030年までにクラウド・コンピューティングへの支出が1兆ドル近くに、またITへの支出総額が5兆ドル超に達するとみられ、エージェント型AIは大きく拡大する可能性があります3,4。また、コスト高やエネルギー消費量の増加を伴うことなくコンピューティング能力が高まるため、エージェント型AIはコンピューターを超えて進化し、その機能を産業用機械、ヒューマノイド(人型ロボット)、自動運転車にまで拡張することによって推定市場規模をさらに拡大させると考えられます。

AIエージェントはデータ生成のあり方も大きく変えるとみられ、2030年までに全オンライン・データの半分以上を生成する可能性があります5。企業サイドでは、カスタマイズされた企業向けAIモデルのデータ生成がクラウド・コンピューティングやデータ管理ツールへの支出増をもたらすと考えられます。その結果、データ生成の増加がクラウドの利用を促進し、それがまたAIの導入とイノベーションをさらに加速させるという強力な好循環が生まれると見込まれます。

同様に、AIや自律化の需要増、およびデータ処理ニーズの高まりを背景とした高性能コンピューティングの需要増を受けて、巨大テック企業の間でAIインフラ投資が急拡大しています。2024年に過去最高となる2,300億ドルを記録したハイパースケーラーの設備投資額は、2025年には3,200億ドルに増加すると予測されています6。この投資ブームの恩恵を受けるのは、必要なコンピューティングやネットワーキング、メモリを提供する半導体・専用チップのプロバイダー、データセンター、水冷装置や電源管理を提供する企業、抽象化レイヤーでのクラウド・プロバイダーなど、関連企業の広範なエコシステムです。さらに、エージェント型AIを拡張可能で安全なものにするためには、サイバーセキュリティやIoT(モノのインターネット)などの隣接分野におけるさらなる進歩と投資が必要となります。

イノベーションと収益化を促進するエージェント型AI

エージェント型AIが収益を生み出す可能性はすでに明らかであり、テック企業やクラウド・ソフトウェア・ベンダーは迅速に行動する必要に迫られています。過去数か月の間に、マイクロソフト、セールスフォース、スノーフレイク(Snowflake)、オープンAI、エヌビディア、グーグル、ハブスポットなどの企業がAIエージェントのトレンドを取り入れ、この進化を促進するために設計された専用ツールを発売しました。

例えば、クラウドの有力企業サービスナウは、自社のプラットフォームにAIエージェント・オーケストレーターを導入しました。このオーケストレーターは、専門的AIエージェントのチームが共同で特定の目標を達成できるようにAIエージェントのコントロール・タワーおよび中心として機能します7。こういった機能強化を考慮して、サービスナウは新しいAI SKU(サービスの有効期間にわたって固定される価格レベル)について60%の大幅な値上げを実施しました。値上げにもかかわらず企業の採用が増え、サービスナウの2024年第4四半期の受注残高は前年同期比26%増の220億ドルとなりました8。この例は、AIエージェントが企業向けソフトウェアの採算性を大きく変える可能性があることを示しています。ユーザー単位のライセンスに基づく従来型のSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の価格モデルは、AIエージェントの自律的性質をよりよく反映した消費ベースのモデルに取って代わられつつあり、それによって新たな収益機会が生まれています。

セールスフォースは、顧客サービスやマーケティング、業務関連の調達に係るタスクを自動化するため、Agentforce 2.0を製品群全体に組み入れました。2024年7月に初めて発売されたAgentforceサービス・エージェントには、エージェント型の推論、統合、AIエージェントによるSlack上のデプロイ操作、カスタマイズといった新機能が追加されています9。2024年10月以降、セールスフォースはAgentforce有料契約を3,000件以上締結しています10,11

ハブスポットの「agent.ai」と呼ばれるプラットフォームは、自律的エージェントのネットワークとして機能します。これらの自律的エージェントはサービスやセールス、マーケティングなどの様々な使用方法をカバーすると同時に、協力し合って複数の段階を伴うプロセスを自動化します。「agent.ai」のユーザー基盤は2024年9月の5万人から2025年2月には50万人以上に拡大しました。その半年間に、ローコードのプラットフォームとして「agent.ai」は5,000人以上の作り手がエージェントを開発するのを支援しました12

結論:2025年はエージェント型AIの年になるかもしれない

AIの真の力は、平凡な反復タスクを自動化することで人間の労力を解放し、より価値の高い仕事に集中できるようにする点です。

AIエージェントはその結果を達成するための重要なステップであり、数兆ドル規模のソフトウェア市場を大きく変え、企業に導入を促して生産性と収益性を向上させようとしています。グローバルXでは、有力企業がこの分野でイノベーションを続けるにつれて、エージェント型AIはクラウド・コンピューティングの採算性を大きく改善し、推定市場規模を拡大し、将来を見据える投資家に魅力的な機会を創出するだろうと考えています。

関連ETF

関連商品へのリンク先はこちら:

CLOU - グローバルX クラウド・コンピューティング ETF

AIQ – グローバルX AI&ビッグデータ ETF

223A – グローバルX AI&ビッグデータ ETF

DTCR – グローバルX データセンターリート&デジタルインフラ ETF

178A – グローバルX 革新的優良企業 ETF

BUG – グローバルX サイバーセキュリティ ETF