生成AIがクラウドコンピューティングを後押しする
18か月間にわたって厳しいマクロ環境と企業の予算減少に苦しめられていたクラウドコンピューティング企業が現在、回復に向かっています。クラウドコンピューティング企業は現在、収益性など、ファンダメンタルズの改善のおかげで転換期を迎えています1。回復のもう一つの要因は、生成AIの重要性の高まりです。クラウドコンピューティングへの支出は2023年、前年比で22%近く増加すると予想されており、クラウドソフトウェアやインフラの大手企業は、AI統合ソリューションを顧客に提供することによってこのトレンドを活用することができるとGlobal Xは予想しています2。サービスとしてのAI(AIaaS)の利用増加は、クラウドコンピューティング企業にとって、追加のクラウド・インフラやサービスをアップセリングすることによってその提供商品からさらに現金を生み出す機会でもあります。これらの要因のため、クラウドコンピューティングをテーマとする企業は、企業によるAIの採用ペースが高まることによる予想を上回る売り上げや利益の伸びから恩恵を受けることができるとGlobal Xは考えます。
重要なポイント
- 経済の縮小がもたらしたクラウド支出の最適化は、AIソリューションへの企業投資によって一部打ち消されたとみられています。
- ハイパースケーラーや大手クラウドソフトウェア企業は、製品ポートフォリオを強化し、さらに収益化するために生成AIベースのソリューションを取り入れています。
- 企業による生成AIの採用が増加しており、それに付随するクラウドコンピューティング、ストレージ、その他のサービスの消費が増加し、クラウドコンピューティングのテーマを後押しするとGlobal Xは予想しています。
企業業績は、クラウド支出の最適化が終わりつつあることを示唆している
今年に入って現在まで、クラウドコンピューティング企業は、売り上げの安定した成長とファンダメンタルズが強化されていることを示しています。このことは、マクロ環境の悪化、IT予算の重しとなる地方銀行危機、広範囲にわたる企業のコスト削減など、今年上半期の持続的な逆風にもかかわらず、顕著に見受けられます。
最近の企業業績は、その証拠を提供しており、投資家の心理をさらに押し上げました。2023年第2四半期のアマゾンウェブサービス(AWS)は、顧客が費用最適化から新たな作業ワークロードの展開に移行したことで、前年同期比12%の成長率で安定しています3。マイクロソフトのクラウド・インフラ事業、アズールの収益成長率は第2四半期、前年同期比26%増で、市場予想の25%を上回りました4。グーグルクラウドは2023年第2四半期、前年同期比28%増の80億3,000万ドルの売り上げを生み出しアルファベットの成長を押し上げました5。また、2四半期連続で営業黒字を実現しました6。
サービスとしてのソフトウェア(SaaS)プロバイダーも第2四半期に大きく成長しており、IT支出環境が改善しているさらなる証拠になっています。人的資源に焦点を合わせるクラウドアプリケーション企業のワークデイは、売上高を前年同期比17%増加させ、市場予想をわずかに上回りました。他の会社も同じような成功を見せており、セールスフォースは前年同期比11%、サービスナウは同23%、アドビは同10%成長して、すべて市場予想を上回っています7,8,9。
一部のセクターではクラウド支出最適化のトレンドがおそらく年間を通して続くと考えられますが、ベース効果によって実現し、企業によるAIへの投資増加によって安定したクラウドコンピューティングの回復は年末まで続くとGlobal Xは予想しています。
ハイパースケーラーとソフトウェア大手がAIでの実験を開始
大手企業は、AIを生産性向上のための極めて重要なツールと見ています10。カスタマーサービスにおける反復的なプロセスを単純化する、事務管理の生産性を引き上げる、リスク管理機能を改善することを目指すソリューションの人気が、今後高まると予想されています。
ハイパースケーラーは、その顧客をAIが実現する未来に移行させる上でおそらく中心的な役割を果たします。また、彼らのサービスがすでに収益を生み出している初期の兆候があります。例えば、マイクロソフトのアズール・オープンAIサービスは第2四半期、新規顧客を6,500超増やしました11。マイクロソフトの見通しでは、第3四半期のアズールの成長率は前年同期比25~26%となり、そのうち2ポイントがAIサービスによるものです12。
AWSはAIによる収益を定量化していませんが、経営陣は、AIベースのソリューションをクラウド顧客に提供する分野を特定する全社的、継続的な取り組みが行われていることを強調しています。また、AWSは第2四半期、顧客が生成AIアプリケーションを構築・拡大することを支援するサービスであるアマゾン・ベッドロック・プラットフォームや、AIセーフティーおよび調査会社であるアンスロピックAIへの40億ドルに上る投資など、一連の製品と提携を発表しました13。また、セールスフォース、サービスナウ、フレッシュデスクなどの大手アプリケーション・ベンダーはすべて、既存顧客の機会増加を活用するための幅広いAI機能・特徴をロールアウトしています14,15,16。
データ・情報管理レイヤーは、新たなローンチや提携が見込まれるもう一つの分野です。例えば、MongodBは、そのNoSQLデータベース・プラットフォーム、アトラスにAI開発により貢献するようベクトル検索機能を追加しました17。トゥイリオはオープンAIとの新たな提携において、その顧客データ・プラットフォームであるセグメント内で顧客に生成AI機能を活用することを認める予定です。これらの機能は、顧客データに関する知見や分析を生み出す、より優れたツールを動かすことができます18。
また、資金が豊富なスタートアップベンチャーが、ハイパースケール・ベンダーとの関係を構築し、ハイパースケーラーによる将来の分配に対する権利と引き換えにクラウドコンピューティングへの支出を約束しています。彼らは、クラウドサービス需要の主要要因になる可能性があります。全体として、サービスとしてのAI、またはAIモデルを開発・許可する事業は、2028年までに550億ドルの市場に成長すると予想されています19。
結論:AIへの支出がクラウドコンピューティングを回復させる
2023年のグローバルIT支出合計は、前年比4.3%増の4兆7,000億ドルになると予想されており、2022年から急速に回復しています20。企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する継続的な投資や、新たに発表されたAI投資が、さらなる成長を支えることが期待されており、また、クラウドコンピューティングへの支出は2023年、前年比22%増加して6,000億ドルに達すると予想されています21。クラウド全体の普及率は20%未満であり、AI関連投資が加速していることから、クラウドコンピューティング・テーマの成長可能性は強固だとGlobal Xは考えています。
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