米国のインフラは選挙後も拡大し続ける見通し

共和党による米上下両院の掌握とともに始まるドナルド・トランプ大統領の2期目は国内製造業を重視する可能性が高く、インフラ支出を促進すると考えられます。バイデン政権下で可決された画期的なインフラ関連政策に変更が加えられる可能性はありますが、これらの法律による追い風は超党派の支持によりほぼそのまま維持されるとみています。米国の公的資金と関連民間支出が今後数年間で新たに数千億ドル投入されることから、インフラ開発のテーマにとって有利な投資環境が生じる可能性があります。

重要なポイント

  • 選挙結果は短期的に政策の不確実性を高めましたが、Global Xとしてはインフラ投資・雇用法(IIJA)とCHIPSおよび科学法(CHIPS法)は廃止されない公算が大きいとの見方を維持しています。
  • クリーンテクノロジーに焦点を当てたインフレ抑制法(IRA)に関しては、完全に廃止されるのではなく実施のペースが緩やかになるのではないかと引き続き考えています。
  • 米製造業のリショアリングやエネルギー認可制度改革が推進されるとみられ、米インフラ開発バリューチェーンの全体にわたって収益機会が企業に生まれる可能性があります。

インフラ投資は最近の超党派の後押しを引き続き受ける可能性がある

米国では、官民の資金が大量に投入されてインフラの再生が行われています。まず、IIJA、CHIPS法、IRAに基づき今後数年間で米インフラ・バリューチェーンに数千億ドルの資金が新たに投入される予定です1。例えば、IIJAに基づく資金は、2024年8月時点で約60%しか配分されておらず、多くのプロジェクトがまだ計画段階にあるため支出に至っていない資金はさらに多くなります2,3。また、この相次いだ立法化の副産物として、製造業とクリーンテックへの民間支出がこれまでで合計9,880億ドル以上に達しています4。製造施設やクリーン発電プロジェクトの継続的な構築には、かなりの資源、特に労働力が必要です。ある推計によると、CHIPS法に基づく投資だけでも建設業と製造業で約11万5,000人の雇用が創出される可能性があります5

選挙で共和党が圧勝したのを受けて、これらのインフラ関連法の今後について疑問を抱く投資家がいるのは理解できます。しかし、当社の見るところ、インフラは通常、共和党・民主党両方の政権やあらゆるレベルの議員にとって非常に重要な課題です。IIJAは、上下両院の両党議員から支持を得たことから、「超党派インフラ法」とも呼ばれています6。また、第一次トランプ政権時代に大規模なインフラ支出パッケージが可決されたことはありませんが、両党ともインフラへの連邦政府の支援を増やすことに関心を示し続けていました7。通常、インフラは党派をまたいだ支持を集めることや、すでに6万件以上のインフラ・プロジェクトがIIJAに基づく資金提供を受けている事実を踏まえると、IIJAが廃止や大幅な変更を免れる可能性は高いとみています8

同様に、CHIPS法も、トランプ氏の選挙遊説中に廃止の話が出たものの、Global Xでは廃止や大幅な修正はないものと考えています。CHIPS法も、地政学的緊張の高まりを背景に超党派の支持を得て成立しました9。CHIPS法の主要目的の一つは、必要不可欠な技術、特に防衛や日用品に欠かせない半導体の供給を増やすことによって国家安全保障を支援することです10。2022年8月の同法の施行以降、AIと半導体製造の分野でリーダーの地位を強化することの戦略的重要性は一段と明白になっています。ただし、残存する資金をどこに配分するかについて、次期政権が異なる考え方を持っている可能性はあります。2024年9月下旬の時点で、バイデン政権は半導体製造予算520億ドルのうち360億ドルをインテル、マイクロン、台湾積体電路製造(TSMC)などの企業に割り当て済みです11

IRAと関税を巡る不確実性の高まりが短期的な逆風となる

トランプ次期大統領は、クリーンテックに焦点を当てたIRAなどの法律を廃止するつもりだと述べています12。しかし、共和党はIRAに反対した一方で、最近では一部の共和党議員が廃止に反対しています。特に2024年8月には、共和党の下院議員18名がマイク・ジョンソン下院議長に書簡を送り、エネルギー税額控除が投資やイノベーション、雇用に与える好影響を理由にIRAへの支持を表明しました13。こういった考え方をとる大きな理由は、IRA施行後の最初の2年間に発表された334件のプロジェクトのうち、約60%が共和党優位の選挙区で行われていることにあります14。これらの選挙区で行われている201件のプロジェクトの投資総額は約1,068億ドルで、7万7,000人以上の雇用を創出する可能性があります15

IRA関連プロジェクトが党派を超えて生み出す利益と議員の継続的支持によって、完全な廃止は防止できると当社は考えています。しかし、新政権はIRAの実施を遅らせる方法を見つける可能性があり、そうなれば、短期的には政策の不確実性が高まることになるでしょう。特にEV(電気自動車)税額控除はトランプ氏のIRA批判の本丸です16。EV税額控除を削減すれば、潜在的な自動車購入者にとって短期的にEV価格が上昇する可能性があります。一方で、スケール・メリットの効果が出始め、バッテリー技術が進歩し、国内生産が増加するにつれて、長期的にはEV業界全体にわたって価格が低下すると見込まれます。

関税政策の変更も、インフラ・バリューチェーン全体に短期的な逆風をもたらす可能性があります。例えば、木材や鉄鋼などの輸入資材の関税引き上げは、住宅セクターを含む一部の建設部門で価格を上昇させるおそれがあります。

米国の製造業と認可制度改革に一層重点が置かれることにより収益機会が生まれる可能性

リショアリングは連邦政府の政策にとどまらない構造的傾向と思われます。これらのインフラ関連法が施行される前でも、多くの業界の企業が、米製造業の成長を通じてサプライチェーンの耐性を高め、地政学的リスクから守り、より持続可能なものにすることに関心を示していました。今や、トランプ氏の「米国第一」政策のアジェンダへ長期的にシフトすることにより、米製造業がさらに強化され、米インフラ開発企業にとってさらなる収益機会が生じる可能性があります。例えば、関税は米製造業全体にわたって国内投資と収益機会を急増させる可能性があります。歴史的観点から見ると、1980年代の日本車に対する輸入割当制は米国国内の自動車セクターで生産が急増するきっかけになったと認識されています17

また、認可制度改革は近年、共和党と民主党の関心の的になっており、共和党の完全掌握により改革が実施される可能性が高まっています18,19。認可プロセスの見直しはインフラ開発のスピードアップにつながると考えられます。特に、複雑な環境審査と認可プロセスは送電網(スマートグリッド)や石油・ガス関連インフラ、原子力・再生可能エネルギーを含む発電施設など、多くの種類のインフラ資産にとって障害となっています。

結論:インフラは誰もが同意できるもの

何年も放置されてきた米国のインフラ開発はバイデン政権時代に政策支援を受け、支援の効果は開発が進むにつれて日々明らかになっています。IIJA、CHIPS法、IRAは、米国の競争力と国防を確保する手段としてのインフラを含め、米国のインフラを改善し前進させる新たな時代を導き入れました。次期政権の主張から、これらの法律が存続できるのか疑問が湧きますが、これらの法律に対する共和党の支持は強力であると考えています。まだこれから数千億ドルが米インフラ・バリューチェーンに投入される可能性があり、その結果として魅力的な投資機会が生じることから、米インフラ開発のテーマは依然として魅力的な成長ストーリーです。

関連ETF

関連商品へのリンク先はこちら:

PAVE – グローバルX 米国インフラ関連 ETF

DRIV – グローバルX 自動運転&EV ETF

2867 – グローバルX 自動運転&EV ETF