次のビッグテーマ(グローバル):2025年10月
人工知能
AIインフラ取引はますます大型化・頻繁化している
オープンAIとエヌビディアは画期的な契約を締結し、オープンAIは次世代AIインフラ向けにエヌビディアのシステムを最低10ギガワット(GW)導入することが決定されました。これに伴い、エヌビディアは1ギガワットが構築されるにあたり、最大1,000億ドル(約15兆円)を段階的に投資します1。また、オープンAIは更にアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)と最大6GWのMI450グラフィックス プロセッシング ユニット(GPU)を複数年にわたって供給してもらう契約を締結しました。この契約には、オープンAIが特定のマイルストーンを達成した際に活用できる、AMD株を約10%取得できるワラント(新株予約権)のオプションも含まれています2。また、AI向けクラウドプラットフォームの提供を手がける米コアウィーブはオープンAIとのインフラ契約をさらに65億ドル(約9,800億円)分拡大し、これにより複数回にわたる契約総額はおよそ224億ドル(約3.4兆円)となりました3。コアウィーブはメタとも契約を結び、2031年12月までの間に総額142億ドル(約2.1兆円)にのぼるAIインフラ契約を確保しました。これにより、コアウィーブはGPUクラウド・オペレーターとしての役割をさらに確固たるものとしています4。これらの契約は総じて、AIリーダー企業が大規模な計算リソースを確保し、多様化したハードウェアおよびクラウドパートナーシップを構築することで、より高速にスケールアップしようとしている現状を如実に示しています。
防衛テック
パランティア、英国防総省の大型契約を獲得しAI主導型のオペレーションを推進
イギリス国防省は、パランティアと7.5億ポンド(約1,500億円)の契約を結び、同社のAIシステムを英国軍全体に統合する計画を進めています。これは、今後数年にわたり最大15億ポンド(約3,000億円)規模となる可能性がある広範的なパートナーシップの一環であり、パランティアは英国の防衛技術革新に投資し、ロンドンを欧州の防衛拠点として確立する方針です。この取組では、英国軍の各種システムにわたるデータを統合し、兵站(ロジスティクス)、人員の即応態勢、整備スケジュール、そしてリアルタイムの戦場状況などを網羅することで、指揮官に対して統一された情報主導型の作戦状況を認識させることを目指します。この契約により、パランティアはすでに関与していた英海軍の「プロジェクト・クラーケン(Project Kraken)」を超えて、陸軍、空軍、そして英国防全体のエコシステムへと展開することになります5。この動きは、AIやデータ分析が情報収集分野だけでなく、兵站、即応態勢、指揮・統制のあらゆる側面において軍事作戦の中心的要素となりつつあることを示しています。また、英国がこのような最先端システムの導入を進める姿勢は、NATO内で先進的な防衛技術をリードする存在になる意志を明確に示すものでもあります。
ロボット&人工知能
産業用ロボット導入数、世界的に増加
2024年の世界全体の産業用ロボットの導入台数は約542,000台に達し、過去10年間で2倍以上に増加しました。アジアがこの成長を牽引し、新規導入の74%を占め、欧州とアメリカ大陸はそれぞれ16%と9%を記録しました。また、中国では初めて国内メーカーが自国市場で外国メーカーを上回り、295,000台が導入され、この数値は世界全体の約54%に相当します。現在、世界の産業用ロボットの累積在庫数は466万台を超え、前年同期比で約9%の増加となっています。導入台数は2025年にさらに6%増加し、2028年には年間70万台を超えると予測されており、これは自動化技術の進展が止まることなく続いていることを示しています6。この勢いを支えているのは、AIに支えられた更にスマートで柔軟なロボット、労働コストの上昇とともに低下している導入コスト、そしてリショアリングやサプライチェーンの強靭化に向けた世界的な取り組みです。
データセンター&デジタルインフラ
米国のデータセンター建設費が過去最高に
2025年6月の米国データセンター建設費は2024年の50%増に続き、季節調整年率で400億ドル(約6兆円)に達し、前年同期比で約30%の増加を記録しました7。このブームは、生成AIや機械学習のワークロードに対する需要の加速が主な要因で、これらが電力網やコンピュータインフラに負担をかけています。この成長の大部分は、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタといった大手テック企業のハイパースケーラーによる巨額の投資が担っています。例えば、マイクロソフトは9月に米東北部ウィスコンシン州にハイパースケールAIデータセンターを建設するための33億ドル(約5,000億円)の計画を含め、今後3年間で40億ドル(6,100億円)を投資することを発表しました8。全体で、ハイパースケーラーの設備投資は2025年に約4,000億ドル(約61兆円)に達すると予測され、その大部分がデータセンターに向けられる見込みです9。そして、この建設ブームの規模は、AI競争がどれほど激化しているかを物語っています。もはや優れたモデルを作ることだけではなく、それを訓練し展開するための物理的なインフラを所有することが重要になっています。
ヘルステック
デジタルヘルスプラットフォームが男性ホルモンケアへ進出、テストステロン治療を新たに提供
主要な遠隔医療プラットフォームであるヒムズ&ハーズ・ヘルスは、男性向けのカスタム低テストステロン治療を開始しました。新たに提供されるのは、テストステロンの自然な産生を促進しつつ、生殖能力を損なわない個々に合わせた用量の調合型エンクロミフェン(精子数の内因性産生を刺激する成分)です。さらに、エンクロミフェンとタダラフィルを組み合わせた治療法も提供されており、ホルモンや性的な症状に悩む男性向けの治療法となっています。2026年からは、ヒムズ&ハーズ・ヘルスはKyzatrexという米国食品医薬品局(FDA)に承認された経口テストステロン治療薬を、マリウス・ファーマシューティカルズ(Marius Pharmaceuticals)との提携により、自社プラットフォームの専用サービスとして提供する予定です。同サービスは、注射不要でより身近な医療の実現に向けた重要な一歩となります。また、より伝統的な投薬方法を求めるユーザー向けに、注射型治療薬も導入する予定です。これら治療の全ては、自宅で受けられる検査から始まり、顧客はオンラインで診断、検査、処方の全てを数日以内に完了することができます10。この新しいサービスは、ヒムズ&ハーズ・ヘルスが遠隔医療の枠を超えて包括的なデジタルヘルスケアへと拡大する戦略の一環であり、急速に拡大するデジタルヘルスおよび男性ウェルネス分野における中核的なプレーヤーとしての位置づけを強化しています。
水素
成熟しつつある水素産業への投資が急増
2025年9月時点で、グリーン水素への世界の投資額は1,100億ドル(約17兆円)を超えており、この資金は、すでに稼働中のものに加え、建設中や最終投資決定(FID)済みの500件以上のプロジェクトを支えています。生産能力は年間600万トンを超え、そのうち100万トンはすでに稼働しています。今後の計画を含めると、2030年までに年間900万〜1,400万トンの生産が可能になると見込まれています。投資額においては、中国が約330億ドル(約5兆円)で首位を占め、これに北米の約230億ドル(約3.5兆円)が続きます。欧州は190億ドル(約2.9兆円)で3位ですが、2030年までには世界の水素需要の約3分の2を占めると予測されています。この成長の中で、過去18か月間では約50件の採算性の低いプロジェクトが中止されており、業界全体が初期の熱狂から「実行重視」へと移行していることが伺えます11。必ずしも全てのプロジェクトが最終段階まで到達するとは限らないものの、500件を超える案件の進展と確実な計画は、水素産業の成長余地が広がっていることを明確に表しています。
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