次のビッグテーマ：2022年10月

サイバーセキュリティ

急増する情報漏えい事件と政府の対応

オーストラリアの通信会社オプタスが、9月にハッカー被害により210万の政府機関発行のIDを含む980万人の顧客の個人情報を流出させ、大きな非難を浴びました。1,2 今回の情報漏えいを受けて、アンソニー・アルバネーゼ首相が率いる政権は現在、個人情報保護法に基づく罰則の強化などの改革を進めています。3 米国では、サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁（CISA）が、重要なサイバーセキュリティ事件の72時間以内の報告とランサムウェアに対する支払いの24時間以内の報告を組織に義務付ける情報提供要請（RFI）を発表しました。4 また、欧州委員会は、デジタル素子搭載製品（PDE）に対するサイバーセキュリティ要件を詳述した規制案を発表しました。

引き続き活発なM&A

デジタル・ディフェンスに対する需要が急増する中、サイバーセキュリティ業界では企業の合併および買収（M&A）の動きが活発化しています。クラウドストライク・ホールディングスは、外部攻撃対象領域管理（EASM）を提供するレポシファイを買収しました。また、クオリスはブルーヘキサゴンを買収し、人工知能（AI）および機械学習技術を自社のプラットフォームに統合しています。パロアルトネットワークスは、企業全体のリスクの可視化と制御技術を提供するイスラエルの新興企業Apiiroの買収を狙っていると報じられています。5

電気自動車（EV）

世界販売台数で過去最高を更新するなど記録ずくめの2022年

国際エネルギー機関（IEA）の「クリーンエネルギーの進展評価（Tracking Clean Energy Progress）」最新版では、2022年に世界のEV販売が過去最高を記録し、小型車販売全体の13％に達するとの予想が強調されています。6 企業レベルでは、テスラの第3四半期における電気自動車納入台数は343,830台と、前年同期の241,300台を大きく上回りました。政策面では、カリフォルニア州が、2035年までにガソリン車の使用を禁止するなど、より厳しいクリーンカー規制に乗り出しました。7 それまでに、州内で販売される新車と小型トラックの100％が、プラグインハイブリッド車（PHEV）を含むゼロエミッション車（ZEV）になっていなければなりません。8 これらの措置は2026年から効力を発し、自動車メーカーの生産台数の35％をZEVとPHEVにすることが義務づけられるようになります。9

ロボティクス＆人工知能

産業全域で広がるAI

テスラは、同社の「AIデー」で、新しい人型ロボット「オプティマス」の最新試作機を披露しました。このロボットの価格についてテスラは、2万ドル未満を目指すとしています。10 オプティマスの主な機能の特徴は、人間ができない、あるいはやりたくないような日常的な作業をこなすという点です。このロボットは、特に大規模な施設において、テスラの運営コストの低減に貢献する可能性があります。また、オプティマスの基盤技術は、テスラの自律走行ソフトウェアの進歩がベースとなっている可能性があります。一方、AI業界のリーダーであるNvidiaは、高精度エッジAI向けNvidia IGXプラットフォームを発表しました。このプラットフォームの目的は、製造、物流、ヘルスケアなどの慎重さを必要とする産業において、安全性を提供し、人と機械のコラボレーションを改善することです。

ゲノミクス

アルナイラムがアミロイドーシス治療薬の承認を申請

RNAi医薬品のリーディングカンパニーであるアルナイラムは、心筋症を伴うトランスサイレチン媒介性アミロイドーシスに対するRNAi治療薬パチシランのAPOLLO-Bフェーズ3試験の最新結果を発表しました。試験結果では、パチシランは心臓ストレスや怪我の主要な測定値でポジティブな結果と相関していることが示されました。また、プラセボと比較して良好な試験結果を示したことも、パチシランの効能に対する正当性を高めました。本剤は、ATTRアミロイドーシスのもう一つのサブタイプであるATTRポリニューロパチーで既に承認されています。ATTRポリニューロパチーは世界で5万人、サブタイプの心筋症は30万人以上が発症しています。11 アルナイラムは、年末までにFDAの追加承認を申請する見込みです。

メタバース

バーチャル領域で躍進する企業

ソニーが、2023年3月までにヘッドセット「PlayStation VR2」を200万台生産する計画を発表しました。12 この目標は野心的とも言えますが、VRゴーグルの量産は9月に始まり、いまだサプライチェーンの制約に悩まされています。ウォルマートは、ポスト・パンデミック経済における最新世代の消費者とのエンゲージメントを図るため、2つのエクスペリエンスでメタバースに参入しました。同社の「ウォルマートランド」と「ウォルマート・ユニバース・オブ・プレイ」は、Robloxのゲームプラットフォーム上で展開される見込みです。アリババは、高級コマースマーケットプレイス「Tモール・ラグジュアリー・パビリオン」を通じて、インタラクティブな高級品ショッピング体験を導入しました。同社は、9月にAR（拡張現実）ファッションショーを開催し、消費者はこの期間中、デザイナーのお得な情報を入手できる「メタパス」を取得することができました。

モノのインターネット（IoT）

米国での供給を強化する研究開発案件

米国商務省の国立標準技術研究所（NIST）は、研究者が新しいナノテクノロジーや半導体デバイスの開発に使用できるチップの製造を目指し、グーグルとの間で研究開発（R&D）協力合意を締結しました。NISTは、チップのために最大40種類の回路を設計し、これらをオープンソースとする予定です。今回の合意により、学術研究者や中小企業の研究者は、法的・経済的な制約を受けることなく、このチップを使用することができるようになります。また、研究開発用の安価なチップを国内で調達することで、研究者の革新的な潜在能力をより引き出すことができるようになります。13 この新しいチップは、グーグルが費用を負担し、スカイウォーターテクノロジーが製造する見込みです。