次のビッグテーマ(グローバル):2025年5月
データセンター&デジタルインフラ
データセンター需要は持続
米国のデータセンター市場は強い勢いをもって2025年を迎えました。AI導入、デジタルトランスフォーメーション、クラウドやエッジコンピューティングへのシフトの加速などが追い風となり、米国の主要市場における2025年第1四半期の空室率は過去最低の1.6%に達しました。特にバージニア北部、ダラス/フォートワース、ラスベガスなどの主要な地域ではリース活動が活発であり、その結果、データセンターにおけるコロケーション施設(データセンター内の共用エリアにある、サーバーなどの機器を配置するための施設)の空室率は1%未満です。全体として米国の一次および二次市場のコロケーション在庫は第1四半期に18.5ギガワット(GW)と過去最高を記録し、建設パイプラインは成長を続け、長期的な勢いが持続していることを示しています。また、米国のみではなく欧州のデータセンター需要も記録的なペースで増加しています。2023年には、コロケーション・データセンターのみでEU圏のGDPに対して300億ユーロ(約4.9兆円)の貢献があり、2030年には838億ユーロ(約13.6兆円)に達すると予測されています1。
防衛テクノロジー
世界の国防予算、歳出増を提案
当初国防予算の8%削減を提案していたトランプ政権は、地政学的緊張の高まりと超党派の反発を受け、方針を転換しつつあります。大統領も国防長官も2026会計年度に1兆ドル(約143兆円)の国防予算を要求しており、これは前年比10~12%増にあたります。連邦予算の発表は5月になる見込みですが、防衛産業基盤の主要分野の近代化および拡大に向け、新たなコミットメントが行われる可能性が高いとみられます2。ドイツは、トランプ大統領がNATO加盟国に対して防衛費を現在の対GDPで2%から5%に引き上げるよう求めていることを正式に支持しました。ドイツ政府は段階的なアプローチを提案しており、GDPの3.5%を中核的な軍事費に、1.5%をサイバー関連やインフラなど広範な安全保障に充てる予定です。メルツ首相は、ドイツを欧州有数の通常戦力とすることを目指し、軍事近代化に向けて5,000億ユーロ(約81兆円)を確保するための憲法改正を推進しています3。
人工知能
大手ハイテク企業のAI投資と成長は減速の兆しなし
今年、大手テック企業はAI開発の需要の高まりをサポートするため、AIに特化したインフラに総額3000億ドル(約43兆円)以上を投じると予測されます。メタ・プラットフォームズが2025年第1四半期の決算説明会で今年度の設備投資ガイダンスを600~650億ドル(約8.5~9.3兆円)から640~720億ドル(約9.1~10.3兆円)に引き上げたほか、マイクロソフト、アルファベット、アマゾンはそれぞれ800億ドル(11.4兆円)、750億ドル(10.7兆円)、1,000億ドル(14.3兆円)と今年度の設備投資の見通しを再確認しました4。関税を含むマクロ経済全般が不透明な中でのこのような支出は、各社がAIの戦略を重要視していることを際立たせています。また、メタはChatGPTやアンソロピックの「Claude」に対抗するため、最新の「Llama 4」モデルを搭載した新しい単独のAIアプリを発表し、一方でマイクロソフトは、ソースコード管理サービス「GitHub」のユーザー数が過去1年間で4倍の1,500万人に増加し、AI支援のコーディングやAIエージェントの需要が高まっていると発表しました。更に、アマゾンの生成AIアシスタント「Alexa+」は立ち上げから3か月で10万人以上のユーザーを獲得しました5。
ヘルスケア・イノベーション
新しい治療法が糖尿病、肥満、心臓の健康の希望となるデータを提供
イーライリリーは、2型糖尿病治療薬オルフォグリプロンの後期臨床試験で良好な結果を得たと発表しました。この内服薬は、血糖コントロールと体重減少において有意な改善を示し、有効性は注射用GLP-1治療薬に近いものでした。この開発は、より利便性の高い糖尿病・肥満治療薬の開発競争において重要な一歩であり、早ければ2026年に承認され、2030年には売上高が100億ドル(約1.4兆円)に達すると予測され6、イーライリリーの注射用GLP-1製剤に関しては売上高が2030年までに600億ドル(約8.5兆円)に達すると予想されています7。また、ヴァーブ・セラピューティクスは、高コレステロールをターゲットとした遺伝子編集治療薬「Verve-102」の第I相臨床試験から有望な初期データを発表しました。同治療薬の最高用量(0.6mg/kg)を投与された参加者では、LDL(「悪玉」)コレステロールが平均で53%減少したことが確認されました。ここから臨床開発が進めば、この治療法が2029年までに規制当局の承認を受ける可能性があります8。
サイバーセキュリティ
より高度な脅威に対抗するため、サイバー大手各社はAIの提供を強化
パロアルトネットワークスは、機械学習(ML)システムのセキュリティ確保に特化したスタートアップ企業「プロテクトAI」を6.5~7億ドル(約930~1,000億円)で買収することを発表しました9。プロテクトAIは機械学習のサプライチェーンを確保するツールを専門としており、企業が脆弱性を検出し、AIモデルに関連するリスク管理を支援する企業です。プロテクトAIの主力製品「NB Defense」はAIシステムの構築に使用されるPCのセキュリティ面での不備を特定する一方、同社の「Radar」ツールは、機械学習環境におけるソフトウェア部品表を提供します10。今回の買収は最近の「Precision AI」プラットフォームの立ち上げなど、パロアルトのAI関連の勢いに基づくもので、特にAI主導のサイバーセキュリティ対策を強化するための買収、統合、提携に向けた業界の幅広い動向を反映しています。今後生成AIが業界全体に拡大するにつれ、攻撃対象も拡大し、悪質な行為者はAIパイプライン(機械学習モデルの作成や運用に必要な一連のプロセスに使われる仕組み)やデータソースをターゲットとするようになると考えられます。
自動運転車&電気自動車
世界のEV販売台数が急増
2025年第1四半期に世界で販売されたEVは411万台で、前年同期比29%増となりました。特に3月の販売は好調で、2月の120万台を上回る167万台を販売しました。中国は3月だけでほぼ100万台を販売し、第1四半期の販売台数は前年同期比36%増の242万台で世界最大のEV市場の地位を維持しました。中国の力強い成長は、自動車の下取りに対する補助金制度が2025年まで延長されたことによって支えられました。英国、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、および米国では政策の不確実性と貿易摩擦が高まる中でも、第1四半期のEV販売台数は前年同期比で2桁の伸びを記録しました。特に、英国は3月に記録的な伸びを示し、EV販売台数は前年同月比41%増で、初めて10万台を超えました11。
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