次のビッグテーマ:2022年3月

再生可能エネルギー

エネルギー最前線

近年欧州は、天然ガスの約45%、石油の約3分の1、そして石炭の約半分をロシアから輸入しています。1しかし、ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア産エネルギーから風力、太陽光、原子力など現地で生産される再生可能エネルギーへのシフトが急速に進むと予想されます。このようなシフトは、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという欧州連合の目標にも沿うものです。2例えば、ドイツはすでに、風力および太陽光発電プロジェクトを加速させる計画を公表しています。同国は、2030年までに電力需要の80%を、2035年までに100%を再生可能エネルギーで賄うことを計画しています。3なお、この20年間で同国は、電力消費に占める再生可能エネルギーの割合を約5%から50%まで、10倍近くに増やすことに成功しています。4

農業テックと食糧のイノベーション

岐路に立つ農業

小麦やトウモロコシなどの農産物の価格が、紛争の影響で高騰しています。世界の小麦生産量の29%近くが、ロシアとウクライナによるものです。5一方、肥料や農薬の価格が約2倍になるなど、農家はインプットコストの大幅上昇に直面しています。6農産物のグローバルなサプライチェーン問題は長期化するとみるのが妥当でしょう。ロシア産業貿易省は西側諸国による制裁に対する報復として肥料輸出の停止を勧告しており、一方ウクライナはライ麦、オート麦、雑穀、ソバ、塩、砂糖、肉、家畜の輸出を停止すると発表しています。
農業技術を活用すればインプットを最小化するとともに生産を最大化することが可能ですので、すでに緊迫状態にあった食糧システムが紛争によってさらに圧迫される中、各国が革新的な農産物生産をさらに模索することが予想されます。

革新的素材

注目の金属

ロシアとウクライナの紛争勃発により、コモディティ価格が高騰しています。ロンドン金属取引所でニッケルの価格が2倍以上の10万ドル/メートルトンを超えました。7ロシアは、ステンレス鋼やリチウムイオン電池などに使われるニッケルの世界第3位の生産国です。また、銅価格が史上最高値を更新し、現在1ポンドあたり4.90ドルで取引されています。8多くの再生可能エネルギー生産において、導電性の高い銅が使用されています。また、パラジウム鉱山の生産量の40%をロシアが占めていることから、パラジウム価格も過去最高値まで急騰しています。9 ガソリン車では、触媒コンバーターにこの金属が使われています。

サイバーセキュリティとブロックチェーン

エスケープキーを押すようにサイバー攻撃を防ぐ

世界最大の非代替性トークン(NFT)プラットフォームであるOpenSeaは先月、フィッシング攻撃の被害に遭い、ユーザーは170万ドル以上に相当するNFTを失いました。10このハッキングは、同社がスマートコントラクトのアップグレードをリリースし、ユーザーがNFTをイーサリアム(ETH)ブロックチェーンから新しいスマートコントラクトに移行するよう促された際に発生しました。この事件は、Web3とその進化する環境をナビゲートする際に注意が必要であることを示唆しています。ロシアとウクライナの紛争を巡って、ロシアが米国に対してサイバー攻撃を行う可能性があるとの懸念が増大しており、最近、米国上院でサイバーセキュリティ強化法案が可決されました。同法案は追加審議のため下院に移りました。下院がこの法案を可決した場合、重要なインフラ組織は、サイバー攻撃を受けた場合は72時間以内に、ランサムウェアの支払いを行った場合は24時間以内に、それぞれ米国土安全保障省サイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁に対し報告することが義務付けられることになります。

米国のインフラ

インフラ投資・雇用法が始動

バイデン政権は、インフラ投資・雇用法の一環として、高速道路、水道システム、港湾、その他同様のプロジェクトに対する初期投資の概要を公表しました。特筆すべきは、米国農務省(USDA)が108のインフラプロジェクトに1億6,650万ドル以上を投資することです。11 また、ホワイトハウスは、重要鉱物、リチウムおよびリチウム電池、クリーンな水素の国内生産を促進し、炭素の回収・利用・隔離技術を導入することにより、サプライチェーンの制約緩和を目指す点に注目を促しました。第一弾の助成対象は、資源に乏しく十分なサービスを受けられない地域に加え、特に干ばつなどの自然災害の影響を受けている州となっています。

電気自動車とバッテリー技術

メーカー間の競争激化

テスラは、ベルリン市内の55億ドルをかけたギガファクトリーに対する最終承認を受領しました。これは、同社の欧州における生産と販売の制約の多くを解消する待望の解決策です。同社は、新工場初のモデルYの工場出荷を3月と見込んでいます。12テスラのバッテリーサプライヤーであるパナソニックは、和歌山工場に「4680」バッテリーセル用の新しい生産設備を建設中です。この新しい電池は、より大きく、より安く、EVの航続距離を伸ばすと同時に、コスト面でも優れた結果をもたらすとされています。一方、フォルクスワーゲンは、22億ドルをかけた新工場で製造する「トリニティ」と呼ばれる全電気自動車の計画を発表しました。13製造開始は2026年の見込みです。14また、ホンダとソニーは、EVおよびEVに搭載するネットワークやエンターテインメント技術機能を含むモビリティサービスの設計、開発、構築に関し、2025年までに提携関係を立ち上げる予定です。15現代自動車は、新型EV3車種を発表し、これでEV車種数は31となりました。同社のグローバルでのEV販売目標は、2030年まで年間190万モデルとなっています。16