次のビッグテーマ:2022年7月

電気自動車(EV)

新進気鋭のプレーヤーが活躍、電池技術に引き続き注目

電気自動車(EV)の販売台数が引き続き急増しており、各社とも過去の販売台数を上回っています。最近の数字では、中国の自動車メーカーBYDが2022年上半期に販売した電気自動車とプラグインハイブリッド車(PHEV)の合計台数がテスラを上回ったことが明らかになっています。BYDの新エネルギー車両の販売台数は64万1000台と、前年同期比315%増となりました。1 一方、テスラの上期の販売台数は約56万5千台でした。2 但し、テスラは6月に自動車生産台数記録を更新しています。3 BYDとテスラの関係はこれだけにとどまりません。BYDは、早ければ今年後半にもテスラへのバッテリー供給を開始する見込みであることを発表しています。バッテリー技術の話題に関して言えば、中国のEV自動車メーカーNIOが先日、第2回目の年次「パワーデイ」を開催しました。この場で同社は、2022年末までに欧州と中国で500kWの急速充電器をはじめとする新たな充電技術を公開すると発表しました。4

メタバース

テクノロジー系巨大企業が開発を加速させる没入型ソフトウェアとハードウェア

メタ・プラットフォームズ、アップル、テンセントといったメタバースの先駆け的な企業が、この1カ月で目覚ましい進展を報告しています。ソフトウェア面では、メタがデジタルウォレットサービス「Meta Pay」を開始しました。このサービスは、基本的に「Facebook Pay」の再ブランディングで、以前と同じ機能を持ちながら、商品やサービスの支払いに際しデジタルIDを使うユニバーサルな決済方法に衣替えしたものです。また、Meta Payでは、消費者が所有者証明の検証を行うことができるようになる見込みです。ハードウェア面では、長い間噂に上っていたアップルの複合現実ヘッドセットが、M2プロセッサと16GMのRAMを搭載する可能性があります。5 また、テンセントは拡張現実部門の創設を発表しました。この部門は、特にメタバース周りのすべての活動の先頭に立つことに、特に焦点を当てる見込みです。

リチウム

需要が供給を上回る状況

急速な需要増に後押しされ、世界中のリチウム関連企業が2021年に支出を50%増やしており、過去最高を記録しました。6 この支出増の大半は、将来のリチウム供給源の多様化を目的とした探索費に充てられたものと見られます。グローバルでの投資は、2022年を通して好調を維持すると見られています。企業レベルでは、リチウム鉱山大手のアルベマール(Albemarle Corp.)が、現在の全生産量に相当する10万トンの生産能力を持つ加工工場を米国に建設する計画を明らかにしました。7 この工場建設は、同社が将来のリチウム需要とオール電化の未来に対し大きな賭けに出たことを表すものと言えます。一貫して需要が高まる中、鉱山業者も引き続きサステナブルな採掘方法を取り入れています。リベント(Livent Corp)が2021年版サステナビリティレポートを発表し、2040年までにカーボンニュートラルを達成するとの目標に向けた進捗状況などを詳しく説明しました。8

ゲノミクス

バイオテクノロジー分野のトップ企業が承認間近

今年は、革新的な遺伝子治療薬の待望の承認が期待されています。遺伝性疾患のRNA療法に特化したバイオ医薬品企業、アルナイラム(Alnylam)が、次世代アミロイドーシス治療薬「AMVUTTRA(ブトリシアン)」のFDA(米国食品医薬品局)承認を取得しました。一般発売は7月上旬に予定されており、この新薬は2026年までにピーク時の売上高が18億ドル近くに達する可能性があります。9 また、希少遺伝子疾患を専門とするバイオマリン(BioMarin)は、欧州で承認間近の血友病遺伝子治療薬を保有しています。欧州医薬品庁はこのほど、バイオマリンの「ロクタビアン(Roctavian)」を条件付きで承認しました。欧州連合による承認の最終決定は、2022年第3四半期になると予想されています。10

ロボティクス&人工知能

産業用ロボットの需要が回復

国際ロボット連盟が最近発表したレポートによると、2021年の全世界の産業用ロボット出荷台数は暫定値で48万6,800台と2020年から27%増加し、過去最高を記録しました。11 需要が最も上昇したのはアジア・オーストラリア地域で、設置台数は33%増の35万4,500台となりました。12 米州の需要は27%増加し、設置台数は4万9,900台でした。13 また、欧州では需要が15%増加し、7万8,000台が設置されました。14 業種別で最も需要が大きかったのは電子機器と自動車で、設置台数はそれぞれ13万2,000台と10万9,000台でした。15 また、産業用ロボット分野でニュースとなったの、アマゾンでした。アマゾンは先ごろ、同社初となる完全自律型移動ロボット「プロテウス(Proteus)」を発表しました。プロテウスは倉庫内で大きなカートを移動させることが可能ですが、重要な点は、従業員を避けて通るなど人間の周りを安全に走行可能なことであり、これはナビゲーション技術の進歩の証と言えます。アマゾンは、最大50ポンドの荷物を運ぶことができるロボットアーム「カーディナル(Cardinal)」など、他にもロボットの開発を進めています。16 カーディナルは来年稼働開始の見込みです。これらのシステムは、コスト削減と生産性の向上に重要な役割を果たし、結果的に収益に長期的なプラスの影響を与えることになるでしょう。

モノのインターネット(IoT)

半導体不足解消の兆し

2022年第1四半期の世界の半導体装置売上高は、5%増となりました。17 金額にして247億ドルというこの成長は、同業界の前向きな見通しと生産能力の拡大を裏付けるものです。18 前年同期比で設備投資額増加をリードしているのは北米と欧州で、両地域とも国内での半導体製造が優先されています。パンデミックから派生した課題の克服に半導体業界が取り組んだ結果、半導体の納期が先月より1日短縮されたのは、製造業にとって朗報でした。19 また、半導体の発注から納品までの期間は、5月の平均27.1週間から6月には27週間と、若干ながら短縮されました。20

パフォーマンス数値

下図は、投資テーマ(対応するETFに基づく)ごとのリターンおよび予想売上高成長率です。