次のビッグテーマ(グローバル):8月

米国インフラ整備

インフラ雇用法案の効果は根強い

最近、建設業界はポジティブな流れが見られます。その背後にあるのはインフラ整備の動きです。6月に、建設残務は8.9ヶ月間と2年間ぶりの高水準にとどまり、3ヶ月連続で未着工のプロジェクトが残っています1。現在、1.2兆ドルのIIJA(インフラ雇用法案)の通過から18ヶ月間が経て、この残務に建設業界は支えられる可能性があると示唆しています2。更に、供給不足と物価・賃金上昇圧力が緩和する中で、予想を上回った2023年第二四半期の米国GDPが建設業と製造業の見通しをサポートしました3。上場建設会社のCEOのセンチメントは楽観的で、インフラ支出が4年後にピークに達すると想定しているとのことです4。6月のABC建設信頼指数は売上や利益率、雇用の小幅な下落を示したものの、三つの指標は拡大・縮小の節目となる50を依然として上回り、それらは将来6か月間にわたり成長が続くことを示唆しています5。IIJAプロジェクトの例としては、カリフォルニア州交通委員会による交通インフラへの20億ドルの投資があります6。なお、その中の5.71億ドル以上はIIJAによるものです7

ソーシャルメディア(SNS)

SNSプラットフォームは、成長を実現するために、顧客ロイヤルティを活用

SNSプラットフォームの成長見込みは上昇し続けており、直近の一連の値上げがそのトレンドを反映すると言えるでしょう。スポティファイは自社のプレミアムサービスを1ドル値上げして10.99ドルとし、2011年以来の価格改定を行いました8。それに加えて、スポティファイはまた、デュオ、ファミリー、スチューデントのサブスクリプション料金も値上げしました9。これと同時に、ユーチューブは個人向けユーチューブ・プレミアムの月間料金を2ドル値上げして13.99ドルとし、ユーチューブ・プレミアム・ミュージックの月間料金を1ドル値上げして10.99ドルとしました10。過去1年、アップルとアマゾンもそれぞれ自社の音楽配信サービスの値上げを行いました11。既存機能の強化も成長の源泉となり得るでしょう。スレッドズ(Threads)は当初の急成長は先細りしたものの、メタは依然として同プラットフォームの開発に力を注いでいます。スレッドズの最近のアップデートには「Following」タブが含まれ、ユーザーはアルゴリズム主導のサジェストから外れて、フォローされたアカウントのスレッドに時系列でアクセスすることができるようになりました12。更に、ユーザーの需要に応じて、スレッドズは、デスクトップ・フレンドリーなウェブ版と完全な検索機能を追加するとのことです13

太陽光エネルギー

ファースト・ソーラーは米太陽光エネの先頭を走る

ファースト・ソーラーは、5番目の米国製造拠点を建築し、2026年まで年間容量を3.5ギガワット(GW)増加させる計画を明らかにしました14。同社は米国に本社を置き、テルル化カドミウム薄膜モジュールの製造を専門とし、近々建設予定のシリーズ7太陽電池モジュール生産施設に11億ドルを投資する予定です15。完成すれば、シリーズ7のモジュールは、同社の米国における年間生産能力の3分の2以上を占めることになります16。なお、ファースト・ソーラーは2026年まで自社の世界のモジュール生産量が25GW、米国のモジュール生産量が14GWに達すると予想しています17。この新たな施設を含めて、過去1年間のファースト・ソーラーの設備投資は28億ドル以上に及び、7.9GWの新規生産量をもたらせると期待されます18。こうした動きに先立ち、内務省土地管理局は最近、ネバダ州での大規模太陽光発電プロジェクト推進のためのオークションを開催しました。オークションでは、入札額は1億515万ドルに達し、それらの入札はグリッドに約3GWの再生可能エネルギーを追加する可能性があります19。このオークションは、最も成功した陸上再生可能エネルギーのオークションとなっています20

フィンテック・ミレニアル消費者

フィンテックとビッグテックは、相乗効果を発揮

新たな消費者向け決済サービスや既存決済サービスの改善が相次ぎ発表されています。ファイサーブ(Fiserv)は、対象となるデビットカードおよびクレジットカードの会員がuChoose Rewards®ポイントをAmazon.comおよびAmazonモバイルアプリでの購入に利用できるという、Amazonとの提携を発表しました21。200以上の金融機関が登録しており、年末までにさらに数百の金融機関がこの償還機能を提供する予定です22。一方、ペイパルは、オーストラリア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、米国を含むいくつかの国で、マイクロソフトの顧客にPayPal Pay Laterを導入しました23。また、米国の顧客は間もなくマイクロソフト・ストアでペイパルのVenmoを利用できるようになります。これはXboxでの購入に焦点を当てた既存のパートナーシップの延長です24。更に、2023年第二四半期にアップルの決算サービス部門は過去最高の収益を記録し、Apple Payはそれに大きく寄与しました25。最近、アップルカードの預金口座の成功も目立っています。アップルカードの預金口座は、4月に登場してからわずか4か月間で100億ドルを突破しました26

人工知能

生成AIはユーザー体験と交差する

生成AI分野のパイオニアは、さまざまな領域でユーザー体験を向上させるために、一貫して製品に磨きをかけています。グーグルは、AIに駆動される検索生成体験(英:Search Generative Experience、略:SGE)を更新し、検索結果の上に示される要約ボックスに画像と動画を追加する方針です27。「Search Labs(検索ラボ)」にてSGE機能をオンにすると、ユーザーは検索する際により豊富なマルチメディア・ディスプレイを期待できます。SGEは依然として実験段階にありますが、グーグルはこの機能を改良し、要約ボックスをより速く表示させることに加えて、リンクされた情報についてより多くの文脈を提供することを目指しています。一方、メタ社のオーディオクラフトという生成AIサービスを通じて、ユーザーが音楽とサウンドを生成できます28。オーディオクラフトには、三つのモデルがあります。MusicGenとAudioGenは、テキスト入力をベースに新しいオーディオコンテンツを生成し、EnCodecは不要な音響(アーティファクト)を減少することでオーディオ品質を向上させます29。マイクロソフトは、ウィンドウズ・コパイロット(Windows Copilot)のプレビュー版をWindows Insiderプログラムの会員に公開しました30。最初のプレビュー版では、統合されたユーザーインターフェイス(UI)体験が優先され、今後のプレビュー版ではさらなる機能性が示されると期待されます。

モノのインターネット(IoT)

半導体は政府の優先課題となる

2023年第二四半期に、全世界の半導体売上高は1245億ドルに跳ね上がり、第一四半期より4.7%増となりました31。6月の売上高は前月比1.7%増加し415億ドルとなりました32。売上の継続的な好調トレンドは、政府が半導体業界の発展に野心的な理由を示していると言えるでしょう。イギリス政府が次世代のスケーラブルな半導体企業の創出を目指しており、シリコン・カタリストが主導するパイロット・インキュベーター・プログラムのようなイニシアティブが、新興企業への契約、資金提供、チームビルディング・トレーニングなどの支援を行っています33。中国政府は、貿易制裁に直面しながら、半導体の自給自足を目指しています。この目標の実現に向けて取り組んでいるのは、中国自然科学基金委員会(NSFC)です。NSFCは、「チップレット」技術に焦点を当てた30もの研究プロジェクトに最大640万米ドルを割り当てるプログラムを導入しました。なお、チップレットは、他のチップレットと組み合わせることができる小型な集積回路のことをいいます34。2022年年末に、インド政府が国内の半導体業界を開発するために100億ドルの報奨金制度の設立を発表しました。セミコン・インディア会議にて、米国半導体業界のトップ企業であるマイクロン、ケイデンス、アプライドマテリアルズ、AMDはインドの技術能力を称賛し、自社のインドに対する投資・事業計画を強調しました35