テクノロジーの進歩が太陽光発電の成長ポテンシャルを解放

地球が太陽から1時間で受け取るエネルギーは、世界の年間エネルギー消費需要をすべて賄えるほどの量です1。太陽光を電力に変換する技術が向上し、世界中で使われるようになっているため、太陽光発電(PV)の発展はこれからも期待できます。太陽光発電は、拡張性が非常に高く、価格面での競争優位性もある、再生可能な電力源であり、様々な方法や場所で利用することができます。今後、太陽光モジュールとその関連技術の発達により、太陽光発電の能力と発電量は大きく成長し、エネルギー転換を通じて魅力的な投資機会が生み出されるとGlobal Xは予想しています。

重要なポイント

  • 太陽光発電セクターは、2022~2032年の世界における発電能力の増加分の52%を占めると予想されます。しかし、世界の発電能力全体に対する割合については、現在の3%から11%弱に増える程度と見込まれます2
  • 太陽光モジュール、太陽電池、トラッキングと設置のシステム、ソフトウェアの性能向上のおかげで、今後10年間で太陽光発電バリューチェーンのコストはさらに低下する可能性があり、それが強い成長見通しを支えています。
  • 太陽光モジュールの主要メーカーは2022年も、次世代モジュールの商業化に向けて大きく前進しました。

新たな投資やコスト低下とともに太陽光発電が拡大

Global Xは、今後10年間の太陽光発電の成長は他の電源を上回り、2022~2032年における発電能力の増加分の半分超を占めると予想しています3。太陽光発電はカーボン回収期間が短く、最長30年間、温室効果ガスの排出なしにエネルギーを生み出すことができるため、最もクリーンなエネルギー源の一つです4。それこそが、世界中の政府が税額控除や助成金、太陽光発電プロジェクトの入札を通して、太陽光発電を優先的に推進する理由の一つです。例えば米国では、国内の太陽光発電機器サプライチェーンを構築し、太陽光発電事業の成長を奨励することを目的とする優遇措置がインフレ抑制法に含まれています5。世界全体でも、企業が持続可能目標を達成するために、太陽光発電プロジェクトを拡大したり、購入契約を通じて太陽光発電の電力を購入するようになっています。

そのような公的および民間セクターの支援もあり、世界の太陽光発電能力は2022年の991ギガワット(GW)から2032年の3,322GWへと、年平均成長率(CAGR)11.6%で増加すると予測しています6。そのため、世界の発電量に占める太陽光発電量のシェアは同期間、3.4%から10.9%まで拡大すると予測されています7。太陽光発電能力の成長は、これまで、中国、米国、欧州連合(EU)で最も顕著であったため、今後10年間もこれらの国・地域が市場をリードすると予想しています。

太陽光発電セクターの従来の電力源に対するコスト競争力が高まっていることも、その成長可能性にとって非常に重要な要因です。2010年から2021年にかけて、世界のユーティリティ規模のPVプロジェクトの加重平準化発電コスト(LCOE)は、88%低下しました8。この急激な低下は、それまでよりも強力で、耐久性があり、効率的なソーラーパネルが開発されたことや、インバーター、ラッキング、トラッキング部品の改良が進んだことによるものです。企業の製造プロセスが改善したことや、規模の経済のために設置プロセスの効率性が高まったことも、価格の低下において重要な役割を果たしました。

サプライチェーンの問題や、輸送費やポリシリコン価格の上昇のために、2021年と2022年には特定のプロジェクトについて価格下落トレンドが反転しました。太陽光発電プロジェクトのコストはおそらく2023年も高止まりするでしょう9。ただし、太陽光発電の価格競争力はまだ非常に高く、天然ガスや石炭価格の上昇によって価格競争力はさらに高まっています10

テクノロジーの進歩により太陽光発電はより現実的に

太陽光発電テクノロジーの進歩のため、太陽光発電は多くの国で現実的な選択肢になっています。また、気候変動による影響を軽減し、適応する取り組みが広がる中で、幅広く成長する可能性があります。例えば、太陽光発電業界は、より強力で出力が高く、極めて高効率な太陽光モジュールの開発に取り組んでいます。太陽光モジュールの出力定格は現在、ユーティリティ規模プロジェクトについては600ワット(W)、住宅については400Wを大きく上回っています11。発電効率も向上しており、モジュールの発電効率は22.5%を上回っています12。なお、5年前は、主な太陽光モジュールの出力定格は385Wで、発電効率は16~19%でした13,14。最新モジュールによって、プロジェクトのパフォーマンス向上や、プロジェクトに必要なモジュール数の削減によるコストダウンが可能となります。

次世代モジュールの鍵となるのは、多接合太陽電池、タンデム型太陽電池、薄膜太陽電池、裏面電極構造(IBC)太陽電池など、太陽電池テクノロジーの向上です。それらは性能を向上させ、コストを下げることができます15,16。さらに、ペロブスカイトなどの新素材を利用することで、シリコン製よりも大きく、効率性が高い太陽光モジュールを実現できます17。P型およびN型電池は容易に入手可能で、市場はN型電池へと移行中です。また、IBCおよびタンデム型シリコン・ペロブスカイト電池は2020年代末までに大量生産されるようになる可能性があります18,19

太陽光発電バリューチェーンでは他にも、メーカーがトラッキングおよび設置システムの改善を続けています。埋立地、丘陵地、利用中の農地、さらには水域など、これまで設置が困難、不適切、高コストだった地形に太陽光発電システムを設置できる機会が生じると考えられます。トラッキングシステムを使用することで、従来の固定式システムよりも初期コストは高くなりますが、地形を平らにする必要がなくなり、設置に適した土地が広がり、設置にかかる人件費も減るため、コストを下げることができます。

機械学習、高度な解析ソフトウェア、データ駆動型の故障防止技術、植生管理の自動化などのデジタル化の進展も、コストを削減につながります。初期設計段階から設置や運営・保守(O&M)に至るまで、コスト面でのメリットが期待されます。また、デジタル化のおかげで、太陽光発電システムを電力網に組み込み、収益性と耐久性を高めることができます20

さらに、多くの国で許認可の手続きを簡素化する取り組みが継続中であることも、将来の太陽光発電価格やテクノロジーの発達にプラスの影響を及ぼすと考えられます。注目すべきは、ハードウェア価格が下落したため、ソフトコスト(許認可や設置の人件費、運営・保守費用など)が太陽光発電プロジェクトのコストにおいて最大の割合を占めるようになっていることです21

太陽光発電モジュールメーカーは発電能力と効率を高め続けている

2022年、太陽光モジュールの主要メーカーは、高性能で極めて高効率な次世代モジュールの開発において大きく前進しました。その結果、価格は低下し、太陽光発電は大きく成長すると予想しています。

  • Canadian Solar:2022年12月、Canadian Solarは、2023年第1四半期に690W N型太陽光モジュールの大量生産を開始することを発表しました22。モジュールの電池効率は25.0%で、現在の主流モデルの平均電池効率をおよそ1.5%上回ります。このモジュールは、2023年の同社モジュール出荷全体の30%を占めると予想されています23
  • JinkoSolar:2022年12月、JinkoSolarはN型太陽電池において過去最高の26.4%の効率を達成しました。それ以前には、2022年4月に25.7%、10月に26.1%を達成していました。同社の最高技術責任者、ジン・ハオ博士は、研究開発(R&D)におけるこれらの成果は、効率が大幅に改善したモジュールを将来的に大規模生産する基盤になると述べています24
  • Longi:2022年11月、Longiは、ヘテロ構造太陽電池(詳細不明)によって26.81%のシリコン太陽電池効率の世界記録を達成しました25。この電池がいつ大量生産されるようになるかは明らかにされていませんが、同社がモジュールの将来世代について太陽電池効率を改善する研究開発に継続的に注力していることを示しています。
  • Trina Solar:2022年10月、Trina Solarは、商業・産業プロジェクト向けの最新モジュールを発表しました26。Vertex N 595Wモジュールの発電能力は、商業および産業(C&I)向け市場における従来のN型モジュールを約30W上回ります。生産は進行中で、2023年第1四半期には引渡しが始まる予定です。また、新世代モジュールとして、ユーティリティ規模プロジェクト向けには690Wモジュール、屋上設置型には445Wモジュールがあります。10月、グローバル製品戦略およびマーケティングの責任者、フランク・チャン氏は、発電能力700Wを上回るモジュールが約3年以内に主流となる可能性があると述べています27
  • JA Solar:2022年5月、JA Solarは第1世代のN型太陽光モジュールを発表しました。発電能力レンジを415~600Wから435~625Wに引き上げ、効率を高めました。同モジュールはまた、それまでの製品よりも耐久性が高く、30年の出力保証を提供しています28

結論:テクノロジーの進歩が太陽光発電をグリーンエネルギーの中で最適の選択肢に

太陽が豊富なエネルギーを有しているため、世界は大規模なクリーンエネルギーである太陽へ目を向けるようになりました。太陽光発電テクノロジーの発達のおかげで、太陽光発電が適合する範囲が拡大しており、プロジェクト規模は住宅システムの数キロワット(kW)からユーティリティ規模システムの1,000GW超に及んでいます。また、テクノロジーがさらに発達することで、太陽光発電の能力は高まり、そのコストは低下するとGlobal Xは予想しています。太陽光発電は間欠性がある(途切れることがある)電源であり、完璧ではありません。しかし、太陽光発電に蓄電テクノロジーを加えたハイブリッド・プロジェクトの継続的な発展など、テクノロジーの進歩のおかげで、電力網の信頼性は向上し、その過程で同産業が長期的に大きく成長する可能性が続くと予想しています。