AIブームは再生可能エネルギーと電力インフラにとって追い風となる

人工知能(AI)が急速なペースで進化し続ける中、その成長には、信頼性と耐久性の高い電源とインフラが不可欠であることが次第に明らかになっています。国際エネルギー機関(IEA)の推計によると、AI専用データセンターの電力需要は2026年までに2023年の10倍超の水準に達する可能性があり、対応が急がれることが浮き彫りになっています1。この新しい需要の源泉から長期的に恩恵を受けるのは、電力セクター全体の企業、中でも再生可能エネルギーのバリューチェーン全体にわたるさまざまな企業と、必須となる電力インフラや設備を提供する企業です。

重要なポイント

  • AIおよびデータセンターの分野では、今後数年間に世界中で数十ギガワットの追加発電容量が必要になる可能性が高く、企業はより多くの電力を確保するために設備投資を拡大しています2
  • あらゆる種類の電源が需要増加の恩恵を受ける可能性がありますが、風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギーシステムは、テック企業が電力の必要量を満たしながら、持続可能性の目標に向けて前進することにも役立ちます。
  • 最近の決算報告で、再生可能エネルギー業界全般の企業の経営者たちは、データセンターとAIが重要な成長手段になると強調しました。

AIとデータセンターの急成長に伴う電力需要予想の引き上げ

ChatGPTのような生成AIシステムが急速に進化を遂げている今、企業はAI革命に後れを取らないようにデータセンターの容量を大幅に拡大しようと努めています。AIチップメーカーのエヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏が示した予想によれば、AI向けの需要増加に対応するために、データセンターのインフラのアップグレードと拡張に向けた企業の設備投資は今後4年間で1兆ドルもの巨額にのぼる可能性があるということです3

データセンターは数が増加しているだけでなく、大規模化が進み、より多くの電力が必要になっています。バージニア州に拠点を置く公益企業のドミニオン・エナジーは、2024年第1四半期の決算報告で、データセンターの建設予定地で求められる電力需要は300メガワット(MW)~数ギガワット(GW)に及ぶと報告しました4。現世代のデータセンターでは通常、電力需要の必要量は30MW程度にすぎませんが、開発中の個々のデータセンターでは90MWも必要とされます5。また、トレーニングモデルで使用されるAI用のデータセンターラックは、従来のデータセンターラックと比べてエネルギー消費量が5~7倍になる可能性があります6

それに続く電力需要の増加は、世界中の発電事業者に大きな成長のチャンスを新たにもたらす見込みです。特に、IEAの予想によれば、全世界でデータセンターと暗号通貨により消費される電力は、2022年の460テラワットアワー(TWh)から2026年には1,050TWhに増加すると見られます7。そうなれば、この種の需要は現在のドイツの電力需要にほぼ匹敵することになります8。国別では、アイルランドでデータセンターが急拡大しており、2026年までに同国の電力需要全体の3分の1を占めることが予想されています。また、中国のデータセンターの電力需要は、2026年までに2020年の1.5倍の水準となる300TWhに達する可能性があります9

世界最大のデータセンター市場である米国では、2020年代末までに、データセンターの電力消費量が2022年の126Twhから390TWhと3倍超になる可能性があります10。これにより、データセンターが米国の電力消費量に占める割合は、2030年までに2022年の推計2.5%から7.5%へと拡大することが見込まれます11。電気自動車(EV)の普及率の高まりと産業活動の電動化が相まって、米国の総電力需要の伸びは2020年代末までに20%増加すると予想されています12。このような増加が達成されるならば、過去10年間ほぼ横ばいだった米国の電力需要の伸びは大きく転換することになります13,14

最近、米国の電力会社は、一層の成長を考慮に入れた計画について議論し始めました。例えば、ジョージア・パワーは、2022年1月の計画では負荷増加を400MW程度と予想していましたが、2023年10月の計画では6,600MW超に引き上げました15。つまり、2年弱のうちに需要増加の予想が16.5倍になったということです。ドミニオン・エナジーは、2030年にはバージニア州のデータセンターの需要が2023年の3.3GWから2倍以上に増加し、7GWを超えるとの予想を示しました16。このように、同社が最近、データセンター開発企業から「数ギガワット」の要請を受けたことは、需要増加がさらに拡大する可能性を示唆しています。

再生可能エネルギーは、企業の持続可能性目標を損なわずに需要増加に対応可能

データセンターは、天然ガス、原子力、風力、太陽光、水素、エネルギー貯蔵システムなど、さまざまな電源の成長機会をもたらす可能性が高いと考えられます。特に再生可能エネルギーシステムは、AIによる電力需要を満たしながら、企業がクリーンエネルギーの目標に向けて前進することにも役立つ可能性があります。マイクロソフトは、2030年までに自社の電力消費量の100%を常時ゼロカーボンエネルギー源にすることを目指しています17。グーグルは2030年までに常時カーボンフリーエネルギーで事業を行うことを約束しており、メタも、2020年代末までにバリューチェーン全体で排出量のネットゼロを達成する方針を示しています18,19

マイクロソフト、グーグル、メタなどの巨大テック企業やAIの主要企業は、すでにクリーンエネルギー購入の上位を占めています。これらの企業は今後、AI運用のためにさらに多くのクリーン電力を確保しようとするため、上位の買い手にとどまる可能性が高いとGlobal Xは考えています20。例えば、2024年5月、マイクロソフトとブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズは、2026年から2030年の間に米国と欧州で10.5GWの発電容量がある風力・太陽光発電所を開発するための企業電力購入契約(PPA)を結んだことを発表しました。この契約は過去最大規模の企業PPAと比べて約8倍の規模であり、この風力・太陽光発電プロジェクトの総コストは100億ドルを超える可能性があると推定されています21,22。両社は、さらに多くのプロジェクトや他の国を対象とする契約拡大についても協議しています23。メタは、2023年12月に再生可能エネルギー開発企業のオーステッドとのPPAを発表し、アリゾナ州メサのデータセンター事業所に電力を供給するため、300MWの太陽光発電所と、4時間の電力供給が可能な300MWの蓄電池システムを導入する計画を明らかにしました24。オープンAIやアマゾンなどの企業は、再生可能エネルギーに加え、より持続可能なデータセンター運営のために原子力を利用する可能性も模索しています25

また、グーグル、メタ、アマゾン、マイクロソフトが加盟するCEBA(Clean Energy Buyers Association)は、予想される需要増加に対応するための資源計画を策定する際、電力会社と協力しながら、話し合いの中で再生可能エネルギーが引き続き取り上げられるように努めています。例えば、2024年4月、CEBAとジョージア・パワーは、顧客向けの新しいクリーンエネルギープログラムを共同で開発する計画を発表しました。このプログラムは、2025年にジョージア・パワーが提出する統合資源計画(IRP)に組み込まれる予定です26。IRPとは、予想される将来の電力需要を電力会社がどのように満たす予定であるかを概説する計画文書です。この発表の前には、ジョージア・パワーは、ハイテク分野と産業分野の顧客から予想される需要増加に対応するため、化石燃料による火力発電所の容量拡大を計画していました27。CEBAとの共同の取り組みによって、再生可能エネルギーのソリューションに占める割合が拡大する可能性が広がります。

経営陣のコメントでAIによる電力セクターの成長機会が浮き彫りに

最近の決算報告では、再生可能エネルギーのバリューチェーン全体にわたるさまざまな企業の経営陣が、AIの導入により成長機会が見込まれることを強調しました。ブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズのCEO、コナー・テスキー氏は、AIの導入に必要とされる電力量について市場は理解し始めたばかりであり、「持続可能な再生可能電力の大規模調達は今、グローバルなAIの展開の実現に向けて重要な段階にある」と述べました28。ネクステラ・エナジーのエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼CFOであるカーク・クルーズ氏は、同社への好調な電力需要の一部は、事業の脱炭素化を目指し、AIとデータセンターの需要に対応しようとする産業界の顧客によるものだと明らかにしました29。ソーラーパネル機器を提供するファースト・ソーラーのCEO、マーク・ウィドマー氏は、データセンターの負荷増加が需要予想引き上げの一因だと述べています30

また、AI業界も、今後の進歩を支えるためには大幅な電力増加が重要であることを認識しています。半導体チップ設計企業のアーム・ホールディングスのCMO、アミ・バダーニ氏は、AIによる電力需要は「とどまるところを知らない」ため、電力需要の増加に対処せずにAIの進化を継続することは不可能だと述べました31。また、バダーニ氏は、ChatGPTの1回のクエリには、一般的なウェブ検索と比べて15倍ものエネルギーが必要であることにも言及しました32

結論:AIは再生可能エネルギーセクターと電力セクターに多大な影響を及ぼす可能性がある

オープンAIのCEO、サム・アルトマン氏は最近、「AI技術に必要なエネルギー需要はまだよく把握できていない」と認めました33。それでも現時点ではっきり言えることは、AI革命がさらに進展するためには今よりも多くの電力が必要とされるということです。AIの普及と関連するエネルギー分野の潜在的な機会について手がかりになりそうな材料を探している投資家にとって、ビッグテックがクリーンエネルギー購入の上位を占め、その支えになっているという事実は重要な情報だと考えられます。このようなエネルギー需要と、それが現在進行中のエネルギー転換に及ぼし得る影響は、再生可能エネルギーの生産企業・設備企業にとって長期的に大きな追い風になるとGlobal Xは考えています。

関連ETF

関連商品へのリンク先はこちら:

RNRG - グローバルX 再生可能エネルギー ETF

CTEC - グローバルX クリーンテック ETF