人口の高齢化:高齢化に伴う機会

この記事は、グローバルXの代表的リサーチCharting Disruption 2024年版で取り上げられることが多かったテーマをさらに深掘りするシリーズの一部です。本稿は、医療の進歩の項の一部として人口の高齢化に焦点を当て、この分野での様々なイノベーションについて検討します。このプロジェクトの詳細については、こちらをクリックしてください。

世界の65歳以上の人口は前例のないペースで増加しており、2053年には倍増し17億人になると予想されています。これは、人口全体の伸びをはるかに上回るペースです1。この人口構成の変化は平均寿命の延長と出生率の低下によるものですが、とりわけ75歳以上で顕著に見られます。最近の医学の進歩から生まれた有望なソリューションとして、GLP-1治療薬は、もともと2型糖尿病のために開発されたものですが、肥満や高齢者に多い関連慢性疾患の治療にも効果を発揮しています。医療業界はまた、増加する介護需要に対し、高齢者居住施設の拡大やワイヤレスな患者モニタリング技術で応えています。

重要なポイント

  • 世界の65歳以上の人口は、人口全体の伸びを上回るペースで急増しており、その結果、医療サービスへの需要が高まっています。このトレンドを背景に、高齢者の慢性疾患の有病率が上昇している米国では医療費と長期介護の供給に対する圧力が強まっています。
  • 当初、2型糖尿病のために開発されたGLP-1治療は現在、肥満とそれに関連する慢性疾患に対処するために活用されており、その減量結果は肥満手術に匹敵しています。現在進行中の研究と、FDAが適用拡大を承認したことにより、GLP-1治療の採用が広がりつつあります。
  • 米国の医療制度は医師不足の拡大と長期介護の需要増大という課題に悩まされており、介護人材と高齢者介護施設が追い付かない状況にあります。ウェアラブル・センサーなどの新たな技術は、介護を強化し、高齢者の医療を支援する革新的なソリューションを提供します。

慢性疾患の発生率が高いため、高齢者が医療費の大きな割合を占める

75歳以上の年齢層は2050年まで人口全体の増加率の8倍近い速さで増加する見通しです2。この傾向は、平均寿命の延長(2100年までに世界全体の平均寿命は80歳以上に達する見込み)と、出生率の低下(2050年までに人口1,000人当たりの出生数は現在の30人から15人に低下する見込み)によって促進されています3。こういった人口構成の変化は医療上、コスト管理と介護提供の面で重大な課題をもたらします。

米国では、65歳以上の成人が人口の16%を占める一方で医療費の37%を占めています4,5。この医療費の集中は慢性疾患の有病率を反映しています。60歳以上の95%が慢性疾患を少なくとも一つ有し、同79%が複数の慢性疾患を有しています6。最も一般的な疾患は高血圧(60%)、高コレステロール(51%)、肥満(42%)、関節炎(35%)で、結果として複雑な介護ニーズと医療費の増大が生じています7

オゼンピックなどのGLP‐1薬は加齢関連の慢性疾患に対する優れた広範なソリューションとなり得る

肥満有病率の上昇は、特に高齢患者の場合、関連する健康問題の急増につながっています。肥満を標的とする新たな治療法は、体重減少の面だけでなく、高齢者によく見られる複数の慢性疾患に対処するという面でも期待できます。GLP-1治療は当初、2型糖尿病を治療するために開発されましたが、2型糖尿病は他の慢性疾患と重複する部分が多く、肥満やそれと関連する疾患に対処するためにも活用されるようになっています。

GLP-1薬は肥満や心血管リスクの治療に成功したことで市場が急拡大しており、年間売上高は2024年の550億ドルから2030年には1,500億ドルに達する見通しです8。このカテゴリーには承認済みの13種類の薬剤が含まれ、2030年までにさらに17種類の薬剤が追加されると予想されています。また、依存症や肝疾患、神経疾患への新たな適用を追求する臨床試験が75件進行中です9,10。この分野の大手企業であるイーライ・リリー(マンジャロおよびゼップバウンド)やノボ・ノルディスク(オゼンピックおよびカグリセマ)は、加齢関連の健康状態の管理におけるこういった治療薬の重要性の高まりを背景に、一治療薬当たりの年間売上高が2030年には200億ドルを超えると見込んでいます11

慢性疾患の医療費はメディケアの年間支出の90%を占めます12。10万人が15%の減量をすれば、慢性疾患の予防を通じて5年間で8,500万ドルの節約になる可能性があります13。治療遵守度を向上させるために、多様な投与方法と投与頻度を伴う新しいGLP-1製剤が開発されつつあります。

医師不足の中で求められる高齢者施設の増設やウェアラブル技術の拡大

今後10年以内に医師の1/3が退職するとみられるため、米国の医療制度は大幅な人員不足に直面しています14。この人口動態の変化を背景に、高齢者介護施設に対する需要が高まっています。今後、高齢者の70%近くが長期介護を必要としますが、施設の整備が需要に追いついていません15,16。米国の老齢依存率(20歳~64歳の労働年齢の成人100人に対する65歳以上の成人数の割合)は2024年の30.83人から2050年には41.58人に上昇するため、高齢の親族を労働年齢の家族がより少ない人数で介護することになります17。この家族介護者の不足は、現在6,000億ドルに達する無給家族介護者の負担と相まって、専門的な高齢者介護施設に対する需要を増加させるとみられます18

テクノロジーは、高齢者の介護における介護者不足に対処する重要なソリューションとして浮上しています。ウェアラブル・センサーは遠隔での患者モニタリングや緊急通報、服薬管理の自動化を可能にします。これらの機能は転倒や服薬の不遵守が起きやすい高齢者にとって特に有用です。また、これらの機器は高齢患者によく見られる心血管疾患や神経疾患のモニタリングで特に重要になります。

結論

世界人口の高齢化は医療に対して大きな課題と機会の両方をもたらします。GLP-1治療などの医療イノベーション、高齢者介護施設の拡大、高度なモニタリング技術が一体となって高齢者の複雑な医療ニーズに対処する有望なソリューションを提供しています。人口構成の変化が続き、老齢依存率が上昇するにつれて、これらのソリューションは高齢人口に関する医療費の管理や介護提供の改善という点でますます重要になるでしょう。人員不足や介護施設の整備の面で引き続き課題がありますが、現在進行中の技術進歩と新薬開発は高齢者層の医療需要の変化に対応するための基盤を提供しています。

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