イールドコー(YieldCos)とは
イールドコーとは?
イールドコーとは、再生可能エネルギー資産から創出されるキャッシュフローを株主に還元することに注力している上場企業から成る新興資産クラスです。イールドコーは主に、長期エネルギー供給契約を顧客と締結している太陽光発電所や風力発電所で構成されます。多くのイールドコーは、税制優遇措置を利用して税負担を抑制することで、キャッシュフローのうち高い比率を株主に分配しています。2016年1月現在の上場イールドコーは20社を数え、うち16社は2013年初以降に新規株式公開(IPO)しています1。
イールドコー投資の潜在的利点とは?
- 利回り:2015年の上場イールドコーの平均配当利回りは2%でした。総じてイールドコーは配当可能なキャッシュフローの70-90%を株主に分配することで高い配当利回りを実現しています2。(過去の成績は将来のリターンを保証するものではありません)
- 配当成長:イールドコーは、キャッシュフローを創出する新たな資産を取得することで増配を実現するアプローチを採用しています。2015年第4四半期に対前年同期比で配当金を引き上げたイールドコーは14社に上り2、平均増配率は15%に達しています3。
- 低ボラティリティ:イールドコーは基本的に長期電力供給契約を顧客と締結している十分に確立された資産で構成されます。イールドコーは開発リスクや価格不確実性を軽減することで、再生可能エネルギー投資につきものの高リスク要因の排除に努めています。
- 分散化:イールドコーは、債券や伝統的株式、マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)、不動産投資信託(REIT)との相関性が低い代替収入源を投資家に提供するものです。
- 税効率:
- MLPとは異なり、イールドコーの大半がパートナーシップではなく株式会社(Corporation)の形態をとっています。したがって、これらイールドコーは、スケジュールK-1ではなくフォーム1099を株主へ交付します。
- イールドコーは、ETFやミューチュアルファンド、規制投資会社(RIC:Regulated Investment Companies)形態のクローズドエンド型ファンドの形で保有することができ、ファンドレベルでは課税されません。この点はMLPと異なります。
- 営業損失が計上されるため、現金配当は一般的に資本の返還とみなされ、その結果、投資原価は低下します。通常、税金は資産の売却時に長期キャピタルゲイン税率での支払いとなります。
潜在的リスクは?
- 利益相反:イールドコーに対する親会社の不当な影響力がイールドコーを利益相反に晒す可能性があります。ただし、このリスクは親会社から独立した取締役会の存在によって軽減できます。
- 租税政策:税制優遇措置を利用して税負担を軽減しているため、租税政策改定時には減配される可能性があります。
- 地理的環境:イールドコーは再生可能エネルギー源から電力を生産しているため、気象パターンの変化によって生産量が変動する可能性があります。複数のプロジェクトを有するイールドコーに投資したり、複数のイールドコーへ分散投資したりすることで、このリスクを緩和できる場合があります。
- バリュエーション:バリュエーションは配当可能キャッシュ(CAFD:Cash Available for Distribution)倍率や将来の配当成長予想に大きく左右されます。これら要因や外部金利環境の変化がイールドコーのバリュエーションに影響を及ぼす場合があります。
イールドコーの構造
エネルギー会社(親会社)が、プロジェクトを完成させ安定したキャッシュフローを創出し始めた段階で、一つあるいは複数の再生可能エネルギープロジェクトをスピンオフする際にイールドコーを設定するのが一般的です。大抵の場合、当該親会社はイールドコーの過半数株式の保有を続け、新規株式公開時に少数株式を一般株主に売却します。
通常はイールドコーの子会社が各プロジェクトの日々の運営を担います。各プロジェクトから得られるキャッシュフローは、プロジェクトを管理する子会社からイールドコーへと企業構造に沿って吸い上げられます。イールドコーレベルでの残存キャッシュ(一般的に配当可能キャッシュまたはCAFDと呼ばれる)のうち高い割合が、イールドコーの株主へ分配されます。
親会社から独立した取締役会は、新たな資産を親会社から取得する機会を模索します。親会社とイールドコーの間で生じうる利益相反は、独立した取締役会によって軽減されることが期待されています。
イールドコーに対する課税
イールドコーは、会社レベルでの利益に対する課税と株主レベルでの配当に対する課税の二重課税を回避できる構造になっています。しかしながらイールドコーは、REITやMLPのように会社レベルの課税が免除されているわけではないため、税制優遇措置を利用して高い租税効率を実現し、会社レベルでの課税対象利益を最小限に抑えるよう努めています。
大半の再生可能エネルギープロジェクトは、運転開始後、長期間にわたり課税所得を生み出しません。これは、減価償却費が収益を上回るためです。現行の税制下では、イールドコーは収益を減価償却費によって完全に相殺できる段階では法人税を負担しません。また減価償却費のうち、その年の収益を超過した部分は欠損繰越金として最長20年間繰り越すことができ、当該繰越欠損金を将来の納税債務と相殺することができます。イールドコーの場合、高い水準の年間減価償却費を維持するために継続的に新たな資産を取得するのが一般的です。
当期利益が発生しなければ、株主への配当金は資本の返還とみなされます。資本の返還は投資の原価を引き下げ、株式売却時にキャピタルゲイン税率で課税されます。
イールドコーとMLPの比較
イールドコーは、川中のエネルギー事業を手掛けるMLPへの投資と多くの類似点があります。下表に、両構造間の類似点と相違点を示します5:
YLCO:グローバル・X・イールドコー・アンド・リニューワブル・エナジー・インカムETFは、イールドコーを投資対象としています。投資対象企業には、再生可能エネルギー技術関連、バイオ燃料関連や、プラントの運営やスマートグリッド関連企業およびそれらにかかわる金融を含みます。
脚注
- Source: Bloomberg, as of January 6, 2016
- 3 of the 20 YieldCos had not IPO’d prior to Q4 2014, and therefore distribution growth for these YieldCos is not included in the analysis
- Source: Bloomberg, as of January 6, 2016
- Source: Cohen & Steers ‘Market Update’, September 2014
- Source: Latham & Watkins. Yield data as of March 31, 2015