次のビッグテーマ:2021年11月

ソーシャルメディア

メタバースの夜明け

フェイスブックは、メタバースに全面的に参入するとともに社名をMetaに変更し、メッセンジャー、ワッツアップ、インスタグラムを含むフェイスブックのすべての資産がその傘下に入ることを発表しました。フェイスブックは、コネクティビティのスペースを共有するバーチャルリアリティ(VR)のリーダであり、かつてのオキュラス(Oculus)ブランドのVRワールドを備えて、ユーザーに新たな体験をもたらすクリエイターや開発者のためのメタバース(仮想空間)のホストサイトとなることを目指しています。一方、マイクロソフトのバージョンでは、同社のオフィス製品群が搭載されます。マイクロソフト「Teams」は現在、アバターを用いたチャット機能と会議機能のテストを実施しており、2022年上半期にリリースされる見込みです1。また、ティンダーの親会社であるマッチ・グループを筆頭に、デーティングもメタバースに向かっています。同社は、ユーザーがリアルタイムの音声やバーチャルな出会いを通じて交流できる「シングルタウン」という世界を構想しています2

再生可能エネルギーとクリーンテック

バイデン大統領が気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に参加

米国のバイデン大統領が発表したふたつの新しい国際公約は、メタン排出量の削減と、2030年までに森林破壊をなくすというものでした3。これまでに105カ国が、2030年までにメタン排出量の30%削減を目指す「グローバル・メタン・プレッジ」に加盟しています4。また、100カ国以上の首脳によって、2030年までに森林破壊を止めるという共同宣言が発表されました。参加国の森林面積を合わせると、世界全体の森林面積の約85%に相当します5。バイデン政権は、他の先進国からの資金援助を合わせ、開発途上国が地球温暖化と戦いそれに適応するための支援として、年間1,000億ドルを援助する見込みであることを発表しました6。またバイデン大統領は、2024年までに米国が毎年30億ドルを拠出するとしています7。ネットゼロに関しては、450社の金融機関(金融資産合計130兆ドル)が2050年までにその金融資産100%をネットゼロ排出目標に移行することを約束しました8。また、100以上の国、地域政府、自動車メーカーが、2040年までに100%電気自動車に移行するとの、さらに強化した誓約を表明しています9

eコマース

贈り物で溢れるホリデーシーズン

今年のホリデーシーズンのEコマース売上高は14.4%増加し、年末までの全支出額の18.4%をオンライン取引が占めると予測されています10。米国の今年のホリデーシーズンで最も成長が期待されているのはアパレルおよびアクセサリーで、前年同期比(YOY)25.5%増が見込まれており、次いでコンピュータ・家電が同12.5%増、ヘルスケアおよびパーソナルケアが同12.1%増と予想されています11。この盛況を見越して、アマゾンは15万人の季節従業員を雇用する計画を発表しました。アマゾンはさらに、従業員応募者のモチベーションを高めるため3,000ドルのサインオン・ボーナスを提供しており、場所によっては時給を3ドル上げるとしています12。また、グローバル物流大手のUPSは、Eコマースの荷物量が持続的に増加している中小企業に焦点を当てる方向にシフトしています。なお同社は、サプライチェーンの問題にかかわらず、好業績を報告しています。

電気自動車&リチウム

OEMが自動車の電化をパワーアップ

米国では、OEM(相手先商標製品の製造業者)が電気自動車(EV)への取り組みを活発化させています。トヨタ自動車の米国における電動車両(ハイブリッド自動車(HEV)、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)、燃料電池自動車(FCEV)、二次電池式電気自動車(BEV)を含む)の販売台数に占める割合は現在約25%ですが、同社はこれを2030年までに約70%に引き上げる意向です13。また、ステランティスは、米国での販売台数の40%をEVおよびPHEVにすることを目標としています14。一方BMWグループは、2030年までに米国での販売台数の50%がEVになることを目指しています15。バッテリー技術も大きな焦点となっています。トヨタは、12.9億ドルを投じて、2025年までに豊田通商と共同でバッテリー工場を建設する見通しです16。また、ステランティスはLGエナジー・ソリューションと提携し、40gWhの生産能力を持つ工場の建設を目指しています17。一方テスラは、中国のガンフォンリチウムとの間で、2022年から3年間の供給契約を締結しました18。また、ゼネラルモーターズは、バッテリーコストを60%削減する目標を発表しました19

クラウドコンピューティング

雲にも届く勢いのクラウド支出

デジタル経済が引き続き発展するのに伴い、2021年第3四半期のクラウド・インフラストラクチャ・サービスへの支出額が500億ドルと過去最高を記録しました20。2021年第2四半期と比べて24億ドル、2020年第3四半期と比べると130億ドル、支出が増加したことになります21。新型コロナウィルスのパンデミックの影響で、企業のデジタル化が59%進んだうえ22、企業はハイブリッド型や在宅勤務型を取り込む経済に適応し続けています。直近でクラウドへの大規模な投資を発表した国は、フランスです。フランスはこの分野へ21億ドルの投資を計画していますが、その内訳は、公的補助が770百万ドル、欧州連合への資金提供が513百万ドル、民間の共同出資が785百万ドルとなっています23

サイバーセキュリティ

連邦レベルにまで拡大したセキュリティ

バイデン政権は、連邦政府機関に対し、政府ソフトウェアのサイバーセキュリティ上の脆弱性を解消するよう、新たな義務を課しました。この新たな義務化は、既知のセキュリティ上の欠陥約200件を対象としており、この種の取り組みとしては最も幅広い取り組みのひとつとなっています24。また、下院は中小企業局(SBA)Cyber Awareness Actを可決し、中小企業がサイバーセキュリティ侵害を議会に通知することを義務付けました。2つ目の取り組みには、サイバーセキュリティ・カウンセラー認定プログラムのための「米国中小企業庁 Cyber Training Act」が含まれます。

ロボティクスとAI

レポート:ロボットが過去最高を記録

国際ロボット連盟が毎年発表している「ワールド・ロボティクス・レポート(World Robotics Report)」に、ロボット産業の成長にとってポジティブなニュースが掲載されました。現在、世界の工場で稼動している産業用ロボットは300万台で、昨年よりも10%増加しています25。また、年末までに導入される見込みの産業用ロボットは、昨年の384千台から今年は435千台に増加すると同レポートは予想しています。アジアが依然として世界最大のロボット市場であり、168,400台の産業ユニットを有する中国がリードしています。日本が第2位の38,700台、米国が第3位の30,800台となっています。現在、産業用ロボットのアプリケーションが最も利用されているのは、電子産業、自動車産業、金属・機械産業です。また、サービスロボット市場も、2020年に全世界で67億ドル(前年比12%増)となり、過去最高を更新しました。