次のビッグテーマ(グローバル):2026年5月
米国の電化
ホワイトハウス、国防生産法を発動し国内エネルギー・電力生産の強化へ
ホワイトハウスは、国内のエネルギーおよび電力供給を強化するにあたり「国防生産法(Defense Production Act:DPA)」の適用を発表しました。トランプ政権は、米国のエネルギー供給拡大を加速し、電力価格の抑制につなげることを目的に、DPAに基づく複数の措置を発表しました。対象となるのは、主に次の3分野です。
1つ目は、送電網(グリッド)インフラおよび関連の上流サプライチェーンです。具体的には、送電線、変電所、原材料、電力制御用電子機器、変圧器などが含まれます。2つ目は、大規模なエネルギーシステムおよびインフラ開発の促進であり、許認可手続きや用地取得の迅速化も含まれます。3つ目は、石炭・天然ガス・石油といった化石燃料の生産拡大です。DPAは、これらの分野において政府が一時的に幅広い権限を持ち、補助金、融資、出資、長期購入契約(オフテイク契約、購入者が製品やサービスを一定期間継続して引き取ることを約束する契約)などを通じて生産能力の拡大を支援できる仕組みです。また、ホワイトハウスは、One Big Beautiful Bill Actに基づきエネルギー省へ配分された資金の執行を加速させる方針です1。今回のDPAの活用は、米国における電力需要の伸びが急速に加速しているというグローバルXの見方を裏付けるものであり、エネルギー安全保障への懸念が高まる中、連邦政府が送電網拡張を支援する政策をさらに導入し続ける可能性を示唆しています。特に、許認可プロセスの改革や送電網関連部材の国内製造投資が進む場合には、DPAの活用は大きな効果を持つ可能性があると考えています。
サイバーセキュリティ
アンソロピックの取り組みが示す、AI時代におけるサイバーセキュリティの「制御レイヤー」としての台頭
アンソロピックが新たに開始した「プロジェクト・グラスウィング」は、クラウドストライクやパロアルトネットワークスといった主要なテクノロジー・セキュリティ企業と連携のもと、制御された防御環境において高度なAIモデルを活用しながら、大規模な脆弱性の発見に取り組むプロジェクトです。この中で使われている「クロード・ミュトス・プレビュー」というモデルは、すでに主要なOSやウェブブラウザにおいて数千件規模の重大な脆弱性を発見しており、AIの能力の高さと同時に、その安全性確保の重要性を浮き彫りにしています2。脆弱性の発見から悪用までの時間が短縮される中で、企業や重要インフラにおけるシステミックリスクは高まっています。システムの複雑化、開発サイクルの高速化、そして攻撃の高度化により、リアルタイムかつ統合的なセキュリティソリューションへの需要は今後さらに拡大していくと考えられます。このような環境の下、サイバーセキュリティはAIによって置き換えられる領域ではなく、むしろAIを「制御・実装するための基盤レイヤー」としての役割を強めていくと見られます。
米国インフラ
3月の建設活動は回復、インフラ投資のモメンタムを裏付け
3月の建設着工は、前月比で約13%増加し、年率換算で1.22兆ドル(約195兆円)の水準となりました。これは2月の減少からの反発となります。今回の回復をけん引したのは非住宅インフラ分野であり、特に電力・公益事業関連の大型プロジェクトが約38%増加したことに加え、製造業施設の建設の大幅な増加が寄与しました。住宅投資は引き続き強弱が混在している一方、一部の商業セグメントでは短期的な調整が見られています。しかし全体としては、産業・エネルギー・インフラ関連の投資拡大トレンドは継続していると考えられます。なお、過去12か月ベースでは建設着工全体が約5%増加しており、特に非建築分野と非住宅分野が成長を牽引しています3。総じてこのデータは、大規模インフラ投資、エネルギー転換(エネルギートランジション)、および生産拠点の国内回帰(リショアリング)といった構造的なテーマによって、今後数年にわたる建設投資の拡大サイクルが続く可能性を示唆しています。短期的な変動はあるものの、中長期的には追い風が続く環境だと考えられます。
水素
EU、水素分野への投資を加速
欧州委員会は、地域横断型水素およびエネルギーインフラ整備に対して6億ユーロ(約1,100億円)の資金拠出を行うことを発表しました。この取り組みは「Connecting Europe Facility(CEF)」の枠組みのもとで実施され、水素パイプライン、電解装置(エレクトロライザー)、貯蔵設備、そして広範なエネルギーネットワークといったプロジェクトを対象としています。複数国にまたがる「共通利益プロジェクト」を優先的に支援することで、欧州域内のエネルギー連結性を高め、生産・供給能力の拡大を促進するとともに、化石燃料への依存度を低減することを目的としています。今回の資金は、200件以上にのぼる国境横断型エネルギープロジェクト群の一部であり、そのうち約100件が水素関連プロジェクトとなっています4。水素はまだ商業化の初期段階にありますが、今回のような政策主導の大規模な資金支援は、水素が「概念段階」から「実装・導入段階」へ移行しつつあることを示しています。政策支援、資金供給、産業界の取り組みがそろいつつあることで、水素エコシステム全体の中長期的な成長が期待される状況です。
AI半導体
ビッグテック各社が設備投資計画を再確認、半導体エコシステムを後押し
2026年1Qの決算発表で確認された通り、大手ハイパースケーラーによる設備投資(CapEx)の増加は、AI半導体バリューチェーンにとって大きな追い風となっています。米国の大手4社による合計設備投資は、2026年には7,000億ドル(約110兆円)を超える可能性があり、前年比約70%増という非常に高い成長が見込まれています5。この投資拡大により、各社はAIインフラの大規模な拡充を進めると同時に、半導体設計の構造や供給業者の多様化を加速させています。例えばメタ・プラットフォームズはAIインフラ拡張を積極的に進めており、アマゾンウェブサービスとの数十億ドル規模の提携を通じて、複数のチップ戦略を展開しています。この提携では、数千万規模のグラビトンCPUコア(数十万個のチップに相当)を活用し、エージェント型AIワークロードの処理能力強化を目指しています6。また、メタはブロードコムとの関係も強化しており、独自のAIトレーニングおよび推論用アクセラレーター(MTIA)を共同開発することで、トレーニング・推論に最適化された専用半導体への長期的なアクセスを確保しています7。これらの動きは、AIインフラがより垂直統合的かつ多様化した計算基盤へと進化していることを示しています。その結果、AIインフラの複雑性と資本集約度は一段と高まり、半導体エコシステム全体にわたる構造的な需要拡大を支える流れとなっています。
Eコマース
アマゾン、商取引事業で新たな成長機会の獲得へ
アマゾンは、自社のエンドツーエンド物流ネットワークをサードパーティ企業にも開放し、グローバルサプライチェーン市場への本格的な進出を進めています。新たに提供される「アマゾン・サプライチェーン・サービシズ」により、企業はアマゾンのインフラ(輸送、倉庫保管、注文処理および発送業務、最終区間の配送など)を、自社でアマゾン上に出店しているかどうかに関係なく利用できるようになります。初期の利用企業としてP&Gや3Mが挙げられており、統合型かつテクノロジー主導の物流ソリューションに対する需要の高まりが示されています。この取り組みは、アマゾンが自社の内部機能を外部向けサービスとして収益化する戦略の一環であり、かつてのアマゾンウェブサービスへの進化と類似しています。同時に、従来型の物流企業に対する直接的な競合にもなり得る動きです。
ネットワーク利用率が高まることで、アマゾンは1件あたりの配送コストを引き下げつつ、配送スピードと信頼性を向上させることが可能となり、これは同社のAmazonプライムの価値向上にも直結します8。サプライチェーンがますます複雑化する中で、物流は拡張性を備えた技術主導のサービス基盤へと進化しており、アマゾンはそのインフラを活用して新たな収益源を確立すると同時に、グローバルなコマース領域での主導的地位をさらに強化しようとしています。
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