次のビッグテーマ:2022年5月

メタバース

「仮想空間」が現実に

消費者がメタバースと関わるケースが増えてきています。エヌビディアが開発したメタバースのプラットフォーム「Omniverse」は、2020年12月の試用版リリース以来、5万人以上のクリエーターに利用されています。1 メタ・プラットフォームは、同社のヘッドセット「Quest 2 VR」や、ビデオ通信機器の「Portal」、スマートグラスなどを、消費者が実際に体感・購入できるような店舗をカリフォルニア州に開設すると発表しています。また、新たに「メタバース世代」や、「メタバース・セクター」といったものも登場しています。例えば、エピックゲームズはレゴと共同で、安全性と健全性を最重要視することを確約した上で、子供向けメタバースの開発に取り組んでいます。

サイバーセキュリティと国家インフラ

重要インフラに係るサイバー犯罪の脅威、急がれる対応

米国サイバーセキュリティおよびインフラ安全保障局(CISA)、連邦捜査局(FBI)、および国家安全保障局(NSA)が共同でサイバーセキュリティについての勧告を公表し、その中で米国の国家インフラが、ロシア政府が関与するサイバー犯罪の脅威にさらされているとの注意喚起を行っています。同勧告では、悪用されるおそれのある脆弱性の修復、多要素認証(MFA)の導入、リモートで利用されるデスクトップPCプロトコルのモニタリング、トレーニングを通してのエンドユーザーによる認知度向上といった、緊急の対応を行うよう促しています。米国エネルギー省(DOE)は先日、国内のエネルギー供給システムにおけるサイバーセキュリティ対策向上のために1,200万ドルの投資を行うことを発表しました、これらの対応策は、米国が再生可能エネルギーの供給能力を増強するにあたって、送電網の強度を確保する上で必須とされています。再生可能エネルギーの利用キャパシティ確保のために旧来のインフラを更新することは、バイデン大統領が目標に掲げている2035年までのクリーン送電網の全面確保、および2050年までのCO2排出ネットゼロの達成には不可欠のこととされています。2

電気自動車(EV)

米国内のEV売上、第1四半期は過去最高レベルに

2022年第1四半期におけるEV(プラグイン・ハイブリッド車を含む)の米国内売上台数は約20万8千台で、カリフォルニア州での売上台数はその約4割となっています。3 同州で販売されたバッテリーEV67,118台のうち、78%がテスラ社製のものです。4 上海では新型コロナ感染に伴う封鎖措置が解除されつつあり、同社の上海にあるギガファクトリー(世界最大のEV生産拠点)の稼働率は80%にまで回復しています(2022年4月19日時点)。5
テスラは上海の同敷地内に新たな工場を建設し、45万台の生産規模を確保、現在の生産能力を倍増させる計画を発表しています。6 同様の流れで、ゼネラル・モーターズとLGエネルギーソリューションの合弁会社「Ultinum Cells」も、EV電池の製造のみを目的とした新たな工場を少なくとも4か所開設することを計画しています。7 生産は8月にも開始される見通しです。

ゲノミクス

アルツハイマー新薬、早期開発・承認へ

アルツハイマー症候群の遺伝的危険因子の研究により、新たに42の遺伝子が同症候群の進行に関わっている可能性があることが判明しました。8 同症候群については、遺伝的要因が発症リスクの6~8割を占めているとされています。9 同研究では、免疫システムも未確認ながら発症に関与すると疑われている要素の一つとされています。これらのことが判明したことによって、科学者によるアルツハイマー症候群への研究や、新薬の開発が進むことになります。イーライリリーは今後1年半のうちに、アルツハイマー症候群に対する効果が期待できる「ドナネマブ」を含む5種類の新薬の販売を開始すると見られています。ドナネマブは蓄積されたアミロイドβペプチドの変形態様(アルツハイマー患者に多く見られる)を標的とする抗体で、早期発症型のアルツハイマー治療に対する効果が期待されています。

アグテックと食糧のイノベーション

肥料価格高騰の中、食糧不足の危機

ロシア・ウクライナ間の戦争により、肥料価格が天井知らずの高騰を続けています。ロシアは世界最大の肥料輸出国であることから、供給制約により肥料価格が年初来で3倍以上に跳ね上がっています。10 その結果、米国の農家は微生物や植物由来の生成物を利用して農作物に必要な養分を与えるなど、代替的な施肥技術への転換を図っています。いずれこのような技術が、伝統的な肥料に取って代わることになるかもしれません。

食糧不安が深刻化する中、バイデン政権は9月にホワイトハウスで「食糧・栄養・健康に関する会議(Conference on Food, Nutrition, and Health)」を開催することとしました。この会議は前回1969年に行われたものですが、今回の会議によって米国の食糧に関する方針の決定につながる可能性があります。この会議開催についての発表が行われたのは、折からのインフレとサプライチェーンの問題により食糧価格が高騰しており、これによって従来の国内における食糧・栄養に関する問題がさらに悪化する可能性があることがその背景にあります。

リチウム&バッテリーテクノロジー

今後のバッテリー生産、リチウムイオンが主力か

「超党派インフラ投資法」の一環として、米国エネルギー省(DOE)は31.6億ドルの投資を米国内のリチウムイオン電池供給のために充てることとしました。11 インフラ投資パッケージの中でも多大な予算が、この種の電池のサプライチェーン強化のために割かれることからも明らかなように、リチウムイオン電池はEV業界の発展やクリーンエネルギーへの移行にとって極めて重要なものです。12 同法では75億ドルがEV用充電機器、50億ドルが電力を使う通常バス、50億ドルがクリーンエネルギーや電力を使うスクールバスに割り当てられています。13