次のビッグテーマ:2023年3月

人工知能

ChatGPTへの賭け

今月、OpenAI社はChatGPTとWhisperのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の提供を開始し、既に複数の新興企業のプラットフォームに統合されつつあります。1 AIの普及が本格化する中、SnapやShopifyといった会社がトレンドに沿って技術的に高度なツールを導入し、スナップチャットのMy AIやShopifyのAIを活用したショッピングアシスタントが例として挙げられます。2 ChatGPT APIを利用することで、Snapchatユーザーはカスタマイズ性が高く、パーソナライズされたレコメンドやプロンプトを提供するチャットボットを楽しむことができます。 同様に、Shopifyの消費者向けアプリ「Shop」はチェックアウトを支援する支社製チャットボットにChatGPT APIを導入しています。エドテック(教育テクノロジー)については、大手言語学習アプリDuolingoはGPT-4を搭載したDuolingo Maxを提供できるようになりました。3 「Duolingo Max」というのは、ユーザに「Explain My Answer」と「Roleplay」という二つの新しい機能と演習を提供するサブスクリプションティアです。その他、Spotifyの人工知能駆動DJやCoca-Colaの最新マーケティング活動など、OpenAIが支援するプロジェクトは脚光を浴び、人工知能業界の今後の展開を垣間見えるようになりました。

遠隔医療とデジタルヘルス

指先にあるヘルスケア

CVS、ウオールグリンズ、アマゾンなどといった大手各社が在宅医療サービスを提供するためにプライマリケア施設と合併を行うことにつれ、ヘルスケアのアクセシビリティはかつてないほどの高さに達しています。アマゾンによるOne Medicalの買収のおかげで、サブスクモデルでメンバーに24時間365日の遠隔医療と任意対面式ケアが可能になりました。初年度にOne Medicalは通常の年間の199ドル4 のところ、144ドルの割引年会費を提供しています。更に、CVSヘルスはOak Street Healthを買収することで医療サービスの範囲を拡大しました。なお、Oak Street Healthはテクノロジーを駆使した高齢者向けのプライマリケア施設であり、50%以上の患者は住宅・食料・孤立リスクに直面している困窮者です。5 ヘルスケアが進化することに伴って、ウェラブル製品とデジタルヘルス技術が医療従事者の患者モニタリングに役立ちながら、患者の自主性も保ち得ています。アップルはこの業界の先端に立ち、シリコンフォトニクス半導体と光吸収分光法を活かすアップルウォッチで血糖値を非侵襲的に測定さえできるようになりました。この技術は既に概念実証段階に達しています。6

電気自動車

米国でEVの普及が拡大

テスラはインベスターデーで生産コスト削減計画を掲げ、“エクストレームサイズ”に拡大することが狙いであると明かしました。注目すべきは、同社は「マスタープラン3」という計画を通じて持続性を上昇すると発表したことです。これを実現するには、現存電力網に再生エネルギーを導入することや、EVの増産、また、住宅・商業ビルにヒートポンプを装置する取り組みが必要です。その他にも、高温の熱供給と水素を産業用に活用することや、環境に配慮した船と飛行機の開発等、様々な取り組みがあります。7 そのうえ、最高経営責任者イローン・マスクはメキシコのヌエボレオン市にギガファクトリー(工場)の建設を発表し、そこで次世代自動車の生産を行う予定です。8 本格的に稼働すれば、メキシコギガファクトリーのコストは100億ドルに達すると想定され、テスラのネバダ州・ニューヨーク州・テキサス州・上海・ベルリンにあるギガファクトリーに加わることになります。9 最近、テスラは人気を集めている「モデル3」と「モデルY」自動車の価格を20%まで削減し、消費者の需要増へとつながっています。10 それ以外に、USPS(米国郵政公社)は今年後半に9250台フォードE-Transit電気自動車を購買する計画を披露し、1.4万個充電スタンドをUSPS施設に装置する目標もあります。11 以前、USPSは電気配送車の購買を増やし、2028年まで6.6万台を購買する計画を発表しました。12 8月に、EVの購買と充電インフラの建設を後押しするために、米国議会は4,300億ドルの気候変動法案の一環として30億ドルをUSPSに割り当てました。13

米国インフラ整備

米国が国産建築材料の使用を促す

米国企業が使用する建設材料のおよそ32%は輸入品であり、輸入相手国の上位はユーロ圏の国々、中国、韓国、カナダと日本を含みます。14 しかし、米国政府の公的資金によるプロジェクトにバイ・アメリカ(米国製品優先購入)条項を付けているため、米国の輸入材への依存度を押し下げる可能性があります。バイデン大統領の一般教書演説に続き、米国の行政管理予算局(OMB)はインフラ投資・雇用法の中のビルド・アメリカ・バイ・アメリカ法の条項を実行するように案内しました。条項によると、製品の総コストの55%以上が国内で採掘や、生産、または製造されている場合、米国製品とみなされます。15 バイデン政権は米国国内サプライチェーンを支持するために国内製造業の強化に向けて力を注いでいます。

モノのインターネット(IoT)と人口知能

人工知能が半導体メーカの最新収入源となる

将来にOpenAI社のChatGPTの動作には3万枚以上のグラフィックスカードが必要になると予想されています。16 ChatGPTに対する注目度の急上昇はGPUとAI半導体の追い風になると想定されています。なおChatGPTの土台となるGPT(Generative Pre-Trained Transformerの略)は1.2億パラメータで訓練されましたが、2020年まで1,800億パラメータに跳ね上がりました。17 2020年、GPTの訓練データを処理するには2万枚のGPUが必要でしたが、NVIDIA社のA100を起点に計算した際GPTモデルの商用化を実現するには3万枚以上のGPUが必要となると予想されます。18 NVIDIA社はAIアクセラレータの筆頭サプライヤーでありつつも、AI市場ではインテルとAMDも似たような製品を提供しています。

サイバーセキュリティ

バイデン大統領がサイバーセキュリティ説明責任の強化に乗り出す

今月発表されたホワイトハウス全国サイバーセキュリティ戦略はサイバーセキュリティの焦点をIT業界とソフトウェアメーカにシフトし、ハッカー団体からシステムを保護するために、より大きな責任を負うことを求めています。19 当戦略では、法執行機関と軍事機関がランサムウェアとデジタル窃盗の防止策を積極的に取るようにも呼び掛け、中国とロシアは米国にとって最も重大なサイバーリスクであると出張しました。更に、当戦略は国防総省(DOD)や証券取引委員会(SEC)や連邦通信委員会といった連邦政府機関は規制権力を活用し、契約者とサプライヤーに義務的サイバーセキュリティ要求を実行することも求めています。