次のビッグテーマ(日本):2023年6月
ロボティクス・人工知能
ファナックの協働ロボットは記録を刷新
5月15日、産業用ロボットの先駆者であるファナックは50キログラムを持ち運べるCR‐35iB協働ロボットを発表し、既存のCR-35iAのソフトウェアを更新することで可搬質量を35キログラムから50キログラムまで引き上げ、協働ロボットの可搬質量の限界を刷新しました1。CR‐35iBは同社のCRXシリーズの最新モデルとなり、主にハンドリングと組立用途に使用されるとのことです。同社は、5月22~25日、かつて米国自動車産業の中心であったミシガン州デトロイト市の「Automate」自動化技術展示会でCR-35iBを展示し、8月に生産を開始します2。
サイバーエージェントは自社開発の大規模言語モデル(LLM)を発表
対話型AIの争奪戦が本格化する中、5月17日、国内のメディア・広告・ゲーム大手サイバーエージェントは自社開発の日本語LLMの公開を発表しました。同社のモデルは、ウィキペディアとCommon Crawlの日本語データで訓練され、日本語と日本の文化に相対的に強いLLMの提供を目指しています3。また、このモデルは機会学習アプリケーションのプラットフォーム、米Hugging Faceでアクセスできます。更に、5月18日、サイバーエージェントは、同社の「極予測AI」サービスに、自社開発LLMと米オープン社のChatGPTのAPIを組み合わせる広告コピー自動生成機能を導入するとも発表しました4。
ゲーム
任天堂「ゼルダの伝説」最新作、発売開始直後から歴史的な販売本数を記録
5月12日、大成功した任天堂ゲーム「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(略: BotW)の続編となる「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(略:TotK)がリリースされ、わずか3日間で1000万本を売り上げる快挙を成し遂げました5。「ティアーズ オブ ザ キングダム」は最も早く売れた「ゼルダの伝説」タイトルとなり、北米地域においてゲームコンソール問わず最も早く売れた任天堂ゲームとなりました。従来のゼルダ伝説ゲームとは異なり、2017年にリリースしたBotWは、オープンワールド形式で設計されました。オープンワールドとは、プレイヤーが広大な仮想世界を探索し、自由に行動することができるビデオゲームのジャンルの事を言います。TotKの早期販売データは、オープンワールド形式が「ゼルダの伝説」に適していることを示唆していると言えます。
フィンテック
日本取引所グループはアジア開発銀行と覚書を締結、アジア・太平洋地域フィンテックの促進へ
5月3日、日本取引所グループ(JPX)はアジア開発銀行(ADB)との調印式で、アジア・太平洋地域における資本市場の発展やサステナブル・ファイナンスや金融サービスのデジタル技術を推進する協力枠組みの構築に向けて覚書を締結しました。JPXとADBは、環境・社会・ガバナンス(ESG)債券の発行を促進することに加え、サステナビリティに貢献するフィンテックスタートアップにも支援を提供し、アジア地域の経済発展を目標として掲げています6。2022年、アジア・太平洋地域のフィンテック向け投資額は500.5億ドルに達し、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)を上回りました7。
半導体
日本半導体メーカーは炭化ケイ(SiC)パワー半導体の量産・増産に取り組む
5月19日、半導体大手ルネサスは、2023年にSiCパワー半導体製造の投資を始め、2025年は同社の高崎工場で量産を開始する予定だと発表しました8。 SiCパワー半導体は、従来のシリコン(Si)半導体と比較して、より高い耐電圧と高い耐熱性を備えており、より高速なスイッチング動作と低い電力損失を実現します。近年、SiCパワー半導体に対する投資が増加しつつあり、2022年11月にロームは2026年までSiCパワー半導体に最大2200億円を投じると発表したことに加え、2023年3月に三菱電機は熊本県菊池市で工SiC工場棟を建設し、2026年4月に稼働開始を見込んでいると述べました9,10。