次のビッグテーマ:2021年1月

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自動運転車&電気自動車

アップルが自動運転車及び電気自動車業界の主役に浮上

これまで長期間にわたり、アップルは、テクノロジー最先端企業と言われてきました。この「名声」に恥じない取り組みとして、同社は革新的なバッテリーを搭載する自動運転車の開発に努めてきましたが、向こう数年の間に、この取り組みの成果が表れる可能性がでてきました。アップルの自動運転技術自体は長年の話題でしたが、直近の情報によると、同社初の自動運転車が 2024年に発表されるようです。「プロジェクト・タイタン」と名付けられた同社の自動運転車開発事業は2014年に始まりました。しかし、発足当初の数年間はほとんど進捗しませんでした。動きが出たのは2019年でした。テスラからプロジェクト・マネージャーとして迎え入れたダグ・フィールド氏が開発部門を再編成した時でした。アップル車の際立った特徴としては、極めて低価格で航続距離も長い単一セルバッテリーに加え、ライダーセンサー(三次元画像測定技術)を搭載していることです。この技術は、同社のiPhone 12 Pro機種とiPad Proに採用され、距離計測に使われます。1 懸念されているバッテリーの過熱対策として、アップルは、リン酸鉄リチウム(LFP)を使うバッテリーの独自開発を検討しています。2 アップルのような巨大企業が新規参入を狙っている事実は、自動運転車と電気自動車が、移動手段に破壊的変革を引き起こす可能性が高まっていることを示しています。

ゲノミクス

CRISPR遺伝子編集によるライフスタイル革命

米国で鎌状赤血球病患者の治療に初めて成功した事例は、CRISPR遺伝子編集技術にとっても重要な節目になりました。患者のビクトリア・グレイさんは、治療後わずか1年で、飛行機に搭乗できました。治療を受ける前は、副作用を引き起こす懸念があるため、生涯飛行機に乗ることを諦めていました。グレイさんの順調な回復ぶりは、CRISPR遺伝子編集が有効な治療法である証拠となります。CRISPR遺伝子編集とは、特定の病気に罹患する患者のDNAに、精密な変化を加えることによって病気を治療する技術です。グレイさんに続き、9人の患者が同様の治療を受け、各患者とも術後の経過は順調で、疾病は完治しているようです。3 ここで紹介した治療は、遺伝子編集と一連の化学療法によって「胎児性ヘモグロビン」と呼ばれる血流内のタンパク質レベルを上昇させ、新しい細胞の再生を図るものです。4 CRISPR技術は、すでに癌や視覚回復の治療に採用されています。そして今後は、より広範な領域への適用が計画されています。

医療&健康

トップに向かって快走するペロトン

自宅トレーニング機器企業のペロトン・インタラクティブは、コロナ感染症拡大のなかで一気に認知度を向上できました。さらに、生産能力の拡大を図り、4億2,000万ドルを投じてフィットネス機材企業のプリコーを買収しました。5 買収手続きは2021年初旬に完了します。前年度は、顧客基盤の拡大に生産が追いつかない状況に苦しみましたが、この買収により生産能力の拡充が可能になります。
獲得したプリコーの強みは、生産量スケール能力(拡大・縮小)で、ペロトンは、この能力を自社事業に取り込む計画をしています。また、プリコーの倉庫と製造施設を取得しただけでなく、約100人の研究開発エンジニアリングスタッフも獲得できました。6 なお、買収完了後もプリコーは子会社として存続することになります。コロナ禍の行動制限措置により、ジムでのトレーニングができない状況が続きますが、自宅トレーニング機器のペロトンにとっては事業成長を維持する追い風となっています。

クリーンテック

日本がアジアのクリーンエネルギー計画に参画

日本の菅義偉首相が発表した、2050年までに日本の二酸化炭素排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とする計画は、経済にも有益な成果をもたらすと考えることができます。現在のビジネスモデル改革と新技術の開発に伴う経済効果(年間ベース)は、2030年に90兆円、2050年には190兆円に達すると試算されています。7 カーボンニュートラル実現に向けた戦略施策の柱は、移動手段と暖房機能の電化です。
その他の重要な施策には、2030年代半ばまでに純ガソリン車の新車販売禁止、省エネ半導体で2030年までに電力消費量を半減、農業排出量のゼロ化などがあります。8

クラウドコンピューティング&ソーシャルメディア

TwitterがAWSのグローバルクラウドを採用

Twitter (ツイッター)は、自社の新たなパブリック・クラウド・プロバイダーとして、アマゾンウェブサービス(AWS)と複数年の利用契約を締結しました。AWSの採用により、保存とセキュリティ能力を強化し、消費者体験の向上を図ります。両社は提携して、信頼性の高い機能を備えたソーシャルメディアプラットフォームの運用を可能とする、インフラの構築を目指します。Twitterとしては、AWS Graviton2プロセッサーの採用により、自社のクラウド環境プログラミング機能を強化し、AWSコンテナーサービスの採用により、プラットフォーム上で新しい機能を投入する予定です。また、上記2点の新機能に加え、アマゾンCloudFrontとアマゾンDynamoDBサービスを提供する従前のAWSの使用も継続する予定です。CloudFrontにより、データ処理の待機時間を短縮できます。また、DynamoDBサービスを使い、キー・バリュー型データベースで毎秒2,000万リクエストの上り処理を実行します。9

リチウム

テスラが雅化実業集団とリチウム売買契約締結

電気自動車メーカーのテスラは、雅化実業集団(Yahua Industrial Group)と、向こう5年間にわたるバッテリーグレードの水酸化リチウム供給契約を締結しました。この契約で、テスラは、雅化実業集団の100%子会社であるヤーアンリチウム(Yaan Lithium)から、年間12,600~17,600トンの水酸化リチウムを購入します。10 昨年はコロナ禍の環境にもかかわらず、ヤーアンリチウムは水酸化リチウム工場の生産量を倍増させています。すでに、テスラは、世界最大級のリチウム生産企業である中国のガンフォンリチウム(Ganfeng Lithium Co Ltd)からリチウムを調達しています。したがって、新たに雅化実業と売買契約を結んだことは、テスラのリチウム需要が増えていること、そして供給先の分散化を狙った動きかと思われます。11

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