次のビッグテーマ(グローバル): 2024年12月
米国インフラ
多数のプロジェクトにインフラ投資雇用法の資金が流入
インフラ投資雇用法(Infrastructure Investment and Jobs Act)の設立から3周年となる11月15日、米国運輸省(DOT)は、旅客鉄道、港湾、道路インフラ、サプライチェーンを改善するための34億ドルを超える助成金を発表しました。助成金のうち、北米で最も交通量の多い鉄道通路である北東回廊鉄道沿いの19のプロジェクトには、スピード、アクセシビリティ、信頼性を向上させるため、最大14億ドルの資金が提供されます。さらに、15の州ではサプライチェーン強化および港湾と貨物の効率向上のため、15の港湾関連プロジェクトに5800億ドルの補助金が交付される予定です。残りの資金のうち12億ドルは、将来の安全で持続可能なインフラ建設に不可欠である、よりクリーンな材料の使用を促進するため、39州の運輸省全体で持続可能な輸送材料の国内製造に充てられると公表されています。また、更なる追加の1.72億ドルは、道路の安全性を向上させるプロジェクトに充てられる予定です1。
人工知能
エンタープライズAIへの企業による支出と投資、急増が続く
従業員50人以上の企業のITリーダー600人を対象とした調査によると、生成AIへのビジネス支出は今年500%急増し、2023年の23億ドルから138億ドルに増加しました2。その中、企業の活用事例のトップに浮上したのは調査回答者の50%以上が使用していると回答した、コード生成でした。他の活用例には、サポートチャットボットやエンタープライズサーチ(企業内のデータを保管場所関係なく横断して検索できる、企業内検索エンジン)が挙げられました。現場での応用を可能にさせるための基盤モデルとなるオープンAIのChatGPT、グーグルのGemini、アンソロピックのClaudeなどは企業予算の大部分を占めていることから、大規模な言語モデルは大手ハイテク企業からの増加投資にも繋がっています3。アマゾンは、11月下旬にアンソロピックがユーザーに代わって複雑なタスクを処理できるAIエージェントをデビューさせた直後、同社に40億ドルの追加投資を行う旨を発表しました。これにより、アマゾンのスタートアップ企業への投資総額は80億ドルに達しています4。AIエージェントは、グーグル、マイクロソフト、オープンAIのような企業が注力しているテクノロジーであり、2024年のAI投資トレンドの主役だとも考えられます5。
リチウムとバッテリー技術
大型合併と米国進出がリチウム産業の加速に貢献
リチウム採掘企業二社、豪サヨナ・マイニングと米ピエモント・リチウムは、50対50の合併を行い、6.23億ドルの連結企業を設立すると発表しました6。現在スポジュメン(リチウム鉱石)価格が低水準にある中、この合併は世界のリチウムのサプライチェーンにおけるリーダーを誕生させる可能性があります。両社のカナダとアメリカ全土における事業規模を考慮すると、この新会社は2030年までに北米第2位のリチウム鉱山会社になる可能性があります7。また、オーストラリアのもうひとつのリチウム大手アイオニアは最近、米ネバダ州南部のライオライトリッジ・リチウム鉱山開発プロジェクトの最終認可を受けました。同プロジェクトは、バイデン政権が国内鉱物生産を加速させるための施策の一環として承認した、米国初のリチウム・プロジェクトです。事業が23年間継続すると見込まれるこの鉱山は、年間37万台以上の米国産電気自動車に必要なリチウムに加え、重要な電池材料の加工に使われる分も供給できる可能性があります8。
防衛テクノロジー
防衛テクノロジー、投資減速の兆しなし
無人航空機システム(UAS)と徘徊型兵器で有名な防衛請負業者エアロバイロンメントは、ドローンスウォームと対ドローン技術を専門とするブルーハロ(BlueHalo)を買収する計画を発表した9。この41億ドルの買収により、エアロバイロンメントは、空、陸、海、宇宙、サイバーなど複数の領域で活動する次世代防衛技術の特化した事業体の設立を目指している。ブルーハロの広範なポートフォリオと、宇宙技術、対無人航空機システム(cUAS)、電子戦およびサイバー戦、AI、無人水中車両などの分野における100件以上の特許は、エアロバイロンメントの既存の能力を補完し、強化することが期待されています。この契約は2025年前半に両社の取締役会で承認され、最終決定される予定です10。防衛技術セクター全体における資金調達の増加傾向は続いており、今回の取引もその傾向に沿ったものだと考えられます。2024年11月中旬までに防衛技術関連のスタートアップ企業は合計30億ドル近くを調達しており、2022年の26億ドルというこれまでの記録を上回りました11。兵器メーカーのアンドゥリル・インダストリーズや自律型海上車両のサロニック・テクノロジーズといった企業が多額の投資を集めているのは、多様で革新的な防衛ソリューションへの関心が高まっていることを反映しています12。
ヘルスケア・イノベーション
肥満症治療薬は減量以外にも有益であることが明らかに
ノボ・ノルディスクは、後期臨床試験において、肥満に伴う一般的な肝疾患で良好なデータを報告しました。プラセボ投与群では22%に過ぎなかったのに対し、既存の肥満症薬オゼンピックとウゴービ同じ有効成分を持つ「セマグルチド」を投与された患者の37%が、肝線維化の病状を悪化させることなく改善が見られました。さらに、「セマグルチド」を投与された患者の62.9%が肝線維症の悪化を伴わずに脂肪性肝炎が改善したのに対し、本試験の対照群ではその割合が34.1%でした13。ノボ・ノルディスクは「セマグルチド」について、来年早々にも適応拡大するための承認申請を行う予定です。承認されれば、肥満症治療薬が体重減少以外の効果をもたらすことを保険会社にアピールすることができ、治療対象となる患者層が拡大する可能性があります。一例として、ノボ・ノルディスクのウゴービは過体重または肥満な患者の間で心血管疾患のリスク低減にも適応できるとして、既に承認されています14。
自動運転と電気自動車
中国で電気自動車の普及が進む
10月、3か月連続で中国の電気自動車(EV)販売台数が100万台を超えました。新エネルギー車(NEVもしくはプラグイン・ハイブリッド車、バッテリー式電気自動車)の販売台数は、前年同月比56.7%増の119.6万台となり、過去最高を記録しました15。この好調な伸びは、2024年4月の発表後、同年7月に強化された中国の自動車買い替え補助金制度によるものです。中国の電気自動車販売台数の伸び率は、引き続き米国や欧州よりもはるかに高い水準を維持しています16。米国の自律走行車分野においては、次期トランプ政権が連邦規制を緩和することで、完全自律走行車の路上走行をより容易に行えることが期待されています。現在、米国運輸省道路交通安全局は各自動車メーカーに年間2,500台までの自動運転車を配備することを許可していますが17、自律走行車数の上限の引き上げなど、新たな規制を導入することで既存の課題を減らせる可能性があります。
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