次のビッグテーマ:2021年4月

フィンテック

最新通貨の大物となったNFT

暗号通貨の世界は、非代替性トークン(NFT)を網羅するまでに広がりつつあります。NFTは通常の暗号通貨とは異なり、複製や他のNFTとの直接交換ができません。NFTのブロックチェーン台帳は、その固有のデジタル資産の正当な所有者が誰なのかを検証します。相互運用性がなく分割・破壊が不可能で、検証が容易なNFTは、従来の通貨というよりも、むしろ経済価値ベースの資産としての機能を果たします。NFTは現在、デジタルアート分野で急速に盛り上がりをみせています。デジタルアーティストBeepleは、美術品オークションハウスのクリスティーズで競売に出品したデジタル作品が6,900万ドルで落札され、史上最高額を記録しました。1NFTの多様性を示す例として、スポーツファンはスポーツのトレーディングカード、ビデオクリップ、その他のデジタル資産にニッチ市場を見出しています。2年初来、NFTプロジェクトの合計時価総額は18倍超増の4億3,200万ドルまで拡大しました。3

自動運転車&電気自動車

フォルクスワーゲン、Power Dayで電気自動車について発表

フォルクスワーゲンは、スウェーデンとドイツを皮切りに欧州のパートナーと協力して6カ所のギガファクトリー(電気自動車バッテリー製造工場)を建設する計画を発表し、電気自動車の生産能力増強に取り組んでいます。2030年までにギガファクトリーは、約500万台の自動車への電力供給に十分な年間合計240GWhの生産能力を備える見通しです。また、フォルクスワーゲンの工場は2023年までに統一規格のバッテリーセル設計に移行し、同社の自動車全体の80%に搭載することを予定しています。新しいバッテリーは内製化し、バッテリーのコスト削減と複雑性の軽減、同時に航続距離と性能の向上を目指しています。電気自動車向けパワートレインの人気が上昇を続けていることから、手頃な価格が電気自動車業界の主な目標です。フォルクスワーゲンは、バッテリーシステムのコストを1kWhあたり100ユーロを大幅に下回るレベルまで削減する計画で、これにより同社のEVは従来の内燃エンジン車と同等のコストを実現する可能性があります。4また、欧州の充電ステーションネットワークを1万8,000カ所まで拡大し、北米では急速充電ステーションを3,500カ所増設する予定です。5ボルボが2030年までに全販売をオンラインに移行して完全EV化する意向を発表したことから、自動車メーカー間では内燃エンジン車の未来は限られているという意見で概ね一致しています。6

ロボティクス

ファナック、中国の自動化市場へ投資

ファナックは、2023年までに生産量を5倍に拡大するため、上海工場への260億円(2億4,000万ドル)の投資を計画しています。7日本の産業用ロボットメーカーは、中国において工場自動化への需要が急速に高まっていることを認識しており、ロボットのアームとセンサーを各顧客のニーズに合わせてカスタマイズすることを目指しています。
中国は人件費の上昇に伴って工場自動化ブームの真っただ中にあり、2019年には世界最多の78万台もの産業用ロボットが稼働していました。8ところが中国では、2019年の産業用ロボット密度が1.9%とロボット採用がまだ初期段階にあり9、成長の余地が大きいことを示しています。ファナックの競合である安川電機とABB、それに現地メーカーも中国での新工場建設に投資しており、どうやらこの好機に気づいているようです。

エッセンシャルワーカーとしてのロボット

ロボティクス企業のBoston Dynamicsが、最新作となる倉庫用ロボット「Stretch」を発表しました。Stretchは、Boston Dynamicsが過去に製作したロボットHandleと同等の機能を備えています。Handleには、箱をつかんでトラックからの荷下ろし/パレット積み込みを行うための吸引アームも装備されていました。ところが二輪でバランスをとる構造のHandleは、倉庫内での作業に広範囲な空間を要し、移動速度も速くありませんでした。Stretchは四輪で機能する構造で、それぞれの車輪が独立して動作することができるため、エネルギー効率が大幅にアップしています。また、本体全体で方向転換しなければならなかったHandleとは異なり、Stretchにはベース部分周辺で回転できるという利点があります。一般的な産業用ロボットアームの4分の1の重量で、なおかつ50ポンド(約23kg)を持ち上げる能力を活用するこのロボットは、人力による倉庫作業に代わるのではなく補完するためのものだとBoston Dynamicsは述べています。10Stretchは半自律型であるため、倉庫管理者が割り当てた特定の作業を完了します。

人工知能

新たな半導体技術を扱う企業

インテルは、ファウンドリ事業への参入発表に続き、アリゾナに新設する半導体製造工場に200億ドルを投資する意向を示しました。半導体の大部分を内製化する方向に向かっている同社にとって、これは出発点にすぎません。11インテルの社内ファウンドリサービスでは、自社のx86技術を用いて他社向けの半導体も製造する予定です。インテルの長年のライバルであるArm Ltd.は、インテルの生産能力増強と事業拡大のニュースを受けて、自社の技術を一新しています。Armの新半導体は、機械学習処理の需要と最先端のセキュリティ機能に対応可能で、次の2世代のプロセッサで30%の性能アップを実現するとみられます。12

再生可能エネルギー

炭素排出量削減に貢献する発電機

リニア発電機は、空気と燃料を利用して銅コイルの内側で磁石を振動させ、電流を作り出します。そして、未来の電力となる可能性があります。NextEra Energy Inc.は、スタートアップ企業のMainspring Energy Inc.と連携して、温室効果ガス排出削減を目指す企業に最新技術を公開すると同時に、自社の発電を維持し送電網の供給停止を回避しています。発電機は数秒でフル稼働に達し、天然ガスかバイオガス/水素を燃料としています。いずれも石油や石炭よりかなりクリーンな燃料になります。13また、リニア発電機はコスト効率が良く、グリッドと比較すると、一般的な食料品店では10~20%の節電になると推定されます。昨年、新たな発電機は多くの企業に流通し、天候や時間帯に関係なく必要に応じて電力を供給できる能力に顧客はしきりに感銘を受けています。

リチウム

リチウムイオン電池への過小評価

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが行った最近の調査でリチウムイオン電池の改善率に関する洞察が示されていますが、改善率は非常に過小評価されていました。調査結果により、能力の割に、電池の実質価格は1991年の発売開始以来、約97%も下落したことが明らかになりました。14この分析をさらに進めたところ、エネルギー容量当たりの価格は1992年から2016年までに年間13%下落したものの、累積市場規模は倍増していました。15 電池寿命の急速な向上は電気自動車のコスト全体の低下と相互に直接関連するため、内燃エンジン車に対する電気自動車の競争力は一層高まっています。