ソーシャルコマース:ソーシャルメディアとEコマースの交わりに立ち、成長の機をうかがう

既に確立された多くのソーシャルメディア・プラットフォームにとって、市場で新たに獲得できる新規ユーザーはもはや底をつきつつあり、ここ数年にわたってこれら巨大インターネット企業のユーザー数増加は鈍化しています。期待されているような高成長を達成するために、これらの企業は営業戦略を「新規ユーザー獲得」から、「既存ユーザーからの収益最大化」へと移行させつつあります。ARPU(ユーザー1人当たりの平均収益)最大化の第1段階は、対象を絞り込んだ広告を中心としたものでしたが、最近ではソーシャルコマースに対してより注力されています。ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディアとEコマースの相互作用により、SNSプラットフォーム上で直接ショッピングが体験できるサービスです。この急成長しつつあるトレンドによって、小売業界ではSNSを使ったビジネス戦略の強化が進み、またSNS各社ではショッピングに特化したアプリの導入が進んでいます。

ソーシャルコマースは、専用のEコマース・サイト上ではなく、ユーザーが普段利用しているSNSプラットフォーム内でショッピングができる点において、従来のEコマースとは異なります。このような方法ではユーザー側はあまりストレスを感じることなく、SNS上でコメントしたり友達と相談したりしながら、対象が絞られた広告を閲覧し、カスタマイズされたショッピングを体験することができます。逆に、従来のEコマース(オンライン・ストア等)の場合は、よりブランドや商品が中心となる傾向があり、ユーザー側はしばしば、欲しい品物を見つけるために多くの商品のサイトを検索しなければならないことがあります。

重要なポイント:

  • 各種ブランドはソーシャルメディアとの連携を強め、そのプラットフォーム上で多くの時間を費やす顧客とコンタクトしようとしています。
  • ソーシャルメディアのサイトがビジネスを押し進める中で、ARPUを引き上げることが今後の成功につながる重要な指標となります。
  • 消費者は従来のEコマースから離れ、ワンストップでショッピングが完結する手軽な方法に魅力を感じています。

ソーシャルコマースは、「新し物好きが利用し始める段階」に

大多数のインターネット・ユーザーが既にSNSを利用していることから、従来のソーシャルメディア・プラットフォームが多くの新規ユーザーを集める段階は終わりつつあるといえます。この段階が成熟してくると将来の成長が鈍化する可能性があるので、SNS各社は膨大なユーザーベースや技術的ノウハウを積極的に活用し、「新し物好き」が多く、成長機会が豊富な新興セグメントに参入しようとしています。ソーシャルコマースは、SMS各社にとってはそのような成長機会の1つ(恐らく、最大のものの1つ)です。米国のソーシャルコマースによる売上高は、2021年の360億ドル(小売Eコマース全体での売上額の4.4%)から、2025年には800億ドル規模(同5.9%)に到達すると予測されています。12中国はソーシャルコマースにおいて最も進んだ市場として既に先行しており、2021年の売上規模は米国市場における予測額のほぼ10倍にあたる3,516.5億ドルで、昨年1年だけでも最大31%増加しています。3

ソーシャルコマースはまだ初期段階にありますが、今後は広義のEコマースを上回る速度で成長を続け、2025年までに世界中での普及率は最大6%にまで到達することになるでしょう。

SNS向けデジタル広告費が増加傾向

新型コロナウイルス感染拡大当初、企業のマーケティング関連予算は縮小し、その結果広告費も減少しました。しかし、2020年末までには、デジタル広告への支出が前年比12.2%増加しました。企業は消費者の志向がEコマースに移ったことを認識したからです。4そして、その大部分はSNS関連に向けられたのです。

2021年8月に実施されたCMO(最高マーケティング責任者)サーベイによると、SNS関連の広告費がマーケティング予算全体に占める割合は、2020年2月には13.3%だったものが、2020年6月には23.2%にまで上昇したことがわかりました。5この結果は、特に中小企業にとって大いに期待できるものです。例えば、ある報告によると、中小企業の広告会社がツイッター社の「クイック・プロモート」を利用すれば、広告会社は顧客の対象を場所、年齢、性別によって絞り込むことができるため、2021年第2四半期には、キャンペーン1件当たりの売上高は、従来の広告戦略をとった場合よりも26%増加しました。6メタ・プラットフォームズ社のフェイスブックは年末商戦の時期を控えて、「メッセンジャー」機能上で、中小企業向けに「ビジネス・インボックス」を展開しています。同社によれば、個人向けの広告を使用する米国内の中小企業のうち72%は、ビジネスの成功のために個人向け広告は重要だ、と語っています。7

10月4日に、フェイスブック、インスタグラム、ワッツアップのサービスが一時機能停止となったことにより、中小企業がいかにこれらのオンライン・プラットフォームに依存していたかが明らかになりました。ブラジルでは、この6時間にわたる機能停止による損失は660万レアル(約120万ドル)と見積もられており、この額は同国Eコマースによる一日の平均売上額の約2%に当たります。8

「時は金なり(特にSNS上では)」

Global Xの見解では、SNS関連の広告に多くの費用が使われるようになることは有意義であり、多分に必然的なものだったと考えられます。ただ、新型コロナによってその時期が早まっただけのことです。SNSが多くのユーザーにとって日常の一部になっていることから、この戦略は納得できるものです。最近のGlobal Xによる調査によると、66%の人が、アカウントを有しているSMSのうち最低1つを毎日利用していると回答しています。9つまり、新型コロナが猛威を振るい、ユーザーがこれまで以上に家にいることが多くなった時期に、電子チャネルの広告に多くの費用をかけたことは、この機会を活用したということです。2021年10月時点で、SNS利用のために費やされた時間は1日平均2時間27分で、前四半期に比べて2.1%長くなりました。10

ユーザーの時間が、伝統的な消費者の娯楽に対して、より多くSNSに費やされるようになったことを受けて、SNS各社はユーザーの利用の増加に向けて投資することが今後の商機につながる、と認識するようになりました。2017年以降、SNSが利用時間が増える一方で、テレビやラジオといった伝統的なメディアの1人当たりの利用時間は減少傾向にあります。

新型コロナウイルスによってSNSにより多くの時間が使われるようになったことにより、SNS各社は自社のユーザーベースからより多くの収益を上げられるようになりました。下のグラフは、大手ソーシャルメディア・プラットフォームが、ここ数年でいかにARPUを上昇させたかを示したものです。メタ・プラットフォームズ社の四半期毎のARPUは、2020年第3四半期の7.89ドルから、2021年第3四半期の10.00ドルまで、26.7%上昇しました。11

SNS上でのワンストップ型ショッピング

従来、SNS上の広告の目的は、まずユーザーにクリックしてもらうことでした。それにより広告主のサイトにつながり、最終的にユーザーがショッピングを行うという仕組みになっていました。しかし、このような過程では不必要な手順が加わるため、結局一部のユーザーが、ショッピングを完結させる気をなくしてしまうということもありました。SNS各社や広告主が、プラットフォーム内だけで直接ショッピングが行えるようにすることでこのようなストレスを軽減できれば、より高いコンバージョン率につなげられると考えたのはもっともなことです。さらに、アプリ上でのショッピングによって、SNS各社はユーザーの買物の傾向についてより総合的なデータを集めることができます。このデータを利用することによって、より的確な商品を勧めたり、的確な広告を打ったりすることができ、最終的にはこれがさらなる売上増加につながります。

ソーシャルコマースは口コミレベルにまで展開させることもできます。SNS上で友達同士がどの商品を買うか意見交換ができるのです。友達同士(フォロワー同士というだけの関係であっても)での意見交換を円滑にする手段は、買うかどうかの決断に大きな影響を及ぼすことになります。Global Xによる調査によると、48%の回答者が、「知人からのお勧め」が購入するかどうかを決める最も強力な動機づけになると回答していました。「ブランドへの信頼」は2番目でした。

最新のショッピング機能が次々とSNS上に登場し、サイトそのものがダイナミックなショッピングの場に変わりつつあります。例えば、スナップチャットでつながっているショッピング体験は、消費者に対して「類似品」の提供を行うだけでなく、AR/VR(拡張現実/仮想現実)技術を駆使して、物理的体験の特長とデジタル体験との融合を行い、自らが試着室にいるかのようなイメージを映し出します。

結論: ソーシャルコマースは、SNS各社にとっては収益増強のビッグ・チャンス

ソーシャルコマースは、ソーシャルメディアを広告媒体から店舗そのものに転換させようとしています。ショッピングにおける人との交流という側面と、アカウントから手軽にショッピングできる体験を組み合わせることで、ユーザーの財布の紐はますます緩みがちになります。多くの消費者が同じことを考え始めており、オンラインで買い物をする人の30%がソーシャルコマースを利用しても良いと言っているのです。12企業側からみれば、ソーシャルコマースを通じてデータとAIの力を活用でき、これによって伝統的な広告媒体よりもコンバージョン率を上げ、ユーザー側のストレスも軽減できることになります。また、ソーシャルコマースによって、もっとも影響力のある広告である「知人からのお勧め」も取り入れることができます。SNS各社が高成長を維持しようとする中で、ソーシャルコマースは今後の企業戦略の重要なカギとなることでしょう。