四半期インカムコメンタリー:魅力的なインカム・ソリューションとしてのカバード・コール戦略

前四半期のレポートでは、金融政策の転換の可能性について論じました。その後、連邦準備制度理事会(FRB)は2023年6月の会合で利上げの一時停止を決定しましたが、経済状況と独自のデータ分析によって妥当であると判断される場合には、2023年に利上げが行われる可能性があるとも発表しました1。株式市場は前向きなセンチメントを経験しましたが、その多くは大手テック数銘柄に牽引された結果であったため、マーケット・ブレドス(指数に目立つ動きがある場合の、その動きを牽引する銘柄数の多寡)が懸念材料となっています。投資家が、主要な株価指数エクスポージャーに加え、コール・オプションの売却をすることで、コール・オプションの売却から得られるプレミアムを通じてインカムを補うとともに、市場の下振れ懸念を軽減できるとGlobal Xは考えています。

重要なポイント

  • 2023年上半期の米国株式市場は、主要企業数社が牽引し、底堅く推移しました。これにより、一部の投資家は、市場がここからどういった展開を見せるのかを予想しきれず、岐路に立たされています。
  • 潜在的な市場のボラティリティを抑えつつ、アップサイドからある程度の恩恵を受けようとする投資家にとっては、ロングポートフォリオ資産の一定の割合で株式指数コール・オプションを売却し、かつ、その指数の構成銘柄を保有すること(カバード・コール&グロース戦略)は、トータルリターンの観点から魅力的な戦略となり得ます。
  • 株式市場が上昇基調にある中でも、インカム投資家は依然としてカバード・コール戦略を好んでいます。なぜなら、潜在的なインカムに加え、下落相場に転じる場合には、受け取るオプション・プレミアムがバッファーとなり得るからです。

2023年の年初来株式市場のアウトパフォームは一部銘柄が牽引した

利上げの引き締めサイクルは終盤に差し掛かっていると思われますが、景気への影響はまだ感じられます。直近の6月の報告書によると、全米供給管理協会(ISM)製造業景気指数は8か月連続で低下しました2。購買担当者景気指数(PMI)の算出に使用される5つのサブインデックスもすべて縮小しました。しかし、インフレ調整後の実質国内総生産(GDP)は、フィラデルフィア連銀が調査した2023年第1四半期の予想中央値0.6%を上回る2%と、直近の予想値を上回りました3,4。2023年第2四半期の決算発表シーズンに向けて、S&P500構成企業のうちポジティブな業績ガイダンスを発表している企業の数は、2021年第3四半期(56社)以来の高水準である45社に達しており、ソフトランディングの可能性を示唆しています5

金利の上昇と昨今のAI・テクノロジーの躍進は、今年上半期の米国株式市場のパフォーマンスの主要なカタリストとなり、S&P 500のトータルリターンは16.89%、ナスダック100指数は39.35%となりました6。大型の多国籍企業に牽引され、S&P500指数(SPX)とナスダック100指数(NDX)の上位10銘柄の年初来リターンはそれぞれ73%と80%となりました7。同様に、これらの伝統的な時価総額加重指数と、均等加重指数との間の四半期リターンの差額は、過去10年間で最高水準に達しており、2023年後半の株式市場のアウトパフォームの持続性に懸念が生じています。

カバード・コール&グロース戦略は、インカムとグロースをバランス良く提供する

2023年後半に突入し、不確実性が高まるにつれて、投資家は株式インカム・ポートフォリオに対してよりバランスの取れたアプローチを取りたいと考えるかもしれません。高配当の企業や、一定期間における配当成長の実績がある企業は魅力的に見えますが、こういった企業は、年初来のリターンを牽引してきた主要セクターであるテクノロジーなどのグロース系セクターの企業とは異なることが一般的です。

代替案の1つとして、すでにロング・エクスポージャーを維持しているポートフォリオの半分を対象としたコール・オプションを売却するバイ・ライト戦略(いわゆるカバード・コール&グロース戦略)が考えられます。この戦略の主な目的は、オプションインカムとヘッジの両方の特性を提供すると同時に、特定の参照資産または指数の潜在的なアップサイドの可能性を提供することです。例えば、Global Xの代表的なカバード・コール&グロース戦略であるQYLGとXYLGは、それぞれのポートフォリオの資産の50%に「アット・ザ・マネー」(ATM)カバード・コールを設定し、残りの50%には設定しません。従って、これらの戦略は、高配当戦略では通常含まれないセクターへのエクスポージャーを維持しながら、主要な株式指数であるナスダック100(QYLGの場合)とS&P500(XYLGの場合)の上昇による収益の半分及び魅力的な利回りを享受できる可能性があります。

米国株式市場全体の上昇基調が続く場合、このような戦略は参照指数の上昇率の50%に加え、コール・オプションの売却によるプレミアムの獲得を維持することが予想されます。QYLGとXYLGは、テール・リスクの尺度である下方変動率が参照指数よりも低い水準であることを実証しており、株式市場が過去6か月間の方向から反転した場合、一定レベルのリスク管理を提供できる可能性があります。

高いインカム・ポテンシャルを重視するGlobal Xのカバード・コール戦略の需要は引き続き高まった

最新のカバード・コール・コメンタリーで論じたように、オプション・プレミアムの重要な決定要因であるインプライドボラティリティは、今年に入って低下傾向にあります。その結果、プレミアムは低下していますが、QYLD(ナスダック100)、XYLD(S&P500)、DJIA(ダウ30)、RYLD(ラッセル2000)などの戦略は、ロングポートフォリオの100%を対象にATMコール・オプションを売却することで、同じ参照指数のカバード・コール&グロース戦略に比べて、高いプレミアム獲得の可能性があります。これは、株式や債券のさまざまなセグメントと比較して、カバー率100%のカバード・コール戦略の利回りが比較的魅力的であることにつながっています。

カバード・コール戦略は、通常、主に金利水準によって収益が決定される債券や、株式の発行会社の財務の健全性によって収益が左右される配当株などの伝統的なインカム投資とは関係のない源泉からインカムの大部分を生み出します。一方で、オプション・プレミアムは歴史的に、原資産のインプライドボラティリティの水準によって主に左右されてきました。

2つの変数の関係を説明するために使用される統計モデルである線形回帰分析を利用すると、計算された決定係数(R2)から、QYLDのプレミアムとナスダック100のインプライドボラティリティの相関関係を見ることができます。さらに、この相関関係は、グラフ内の式からモデル化された回帰直線によってさらに可視化されます。

同様の回帰分析を行ったところ、XYLD(0.6352)とRYLD(0.8029)でも有意なR2が得られ、インプライドボラティリティが3つの異なる指数のオプション価格決定において有効であることが証明されました。一般的に、このようなダイナミズムが生じるのは、インプライドボラティリティ自体が、市場のオプション需要に基づいて算出されるフォワード・ルッキングな指標であるためです。したがって、この需要が増加すれば、オプション・プレミアム価格も増加するはずと考えられます。

カバード・コール戦略ファンドの資金流入の勢いは強く、年初来の純流入額は164.5億ドルに達しています。これは主にインカムの可能性に魅力を感じたゆえの流入であると考えられますが、リスク軽減目的であることも考えられます8。ロングポートフォリオの資産に対するコール・オプションの比率を高めることで、ダウンサイドの損失を相殺できる、より多くのプレミアムを受け取ることが期待できます。そのため、他のすべての条件が同じであれば、コール・オプションの比率を高めるほど、リスク軽減の可能性が高まります。米国株式と債券が過去20年以上に強い相関関係で取引されていることを見れば、100%のカバード・コール(バイ・ライト)戦略は、伝統的な資産配分を補完する魅力的な戦略となり得ます。

結論:カバード・コール戦略はポートフォリオの多様性を高める可能性がある

2023年初頭のコンセンサス予想では、米国が今後1年以内に景気後退に転じる確率は65%とされていたため、今年前半の展開は一部の投資家を驚かせました9。それ以来、エコノミストたちは、米国の失業率が依然として4%未満であることから、この予想を修正しました10。しかし、株式市場のマーケット・ブレドスや、上昇基調が今後も続くかどうかについては懸念の声があがっています。経済がソフトランディングする可能性は確かにあるものの、慎重なインカム投資家は、潜在的なアップサイドとインカムの両方に対するバランスの取れたアプローチとして、カバード・コール&グロース戦略がダウンサイド・リスクを軽減する可能性があると考えるかもしれません。トータルリターンよりもインカムを優先する投資家は、ボラティリティの低下によりトータルリターンが増加する可能性がある現在の環境では、ポートフォリオ資産の100%を対象にコール・オプションの売却を行うカバード・コール戦略が魅力的に映るかもしれません。

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