2022年第4四半期と1年後の見通し:景気後退はチャンスをもたらす

第3四半期前半の上昇から一転、9月の相場は、米国および世界の株式指数が弱気相場に逆戻りする結果となりました。不確実性、ボラティリティ、そして景気後退のリスクはいずれも高まっていますが、投資家はボラティリティの高い時期にこそイノベーションとチャンスが生まれることが多いことを念頭に置くべきです。景気後退は通常、景気循環の中で最も短い期間ですが、このような時期に下した決定がその先数年間の投資の結果を左右する可能性があります。投資家は、現在の環境を利用してポートフォリオを再構築するとともに、この機会に損失通算による節税効果を得ることができるとGlobal Xは考えています。

重要なポイント

  • 米国経済は、過去の景気後退期に比べて緩やかな収縮にとどまると予想しています。
  • 収益の循環性が低下しているため、ディフェンシブおよびクオリティ重視のポジションが引き続き有効です。
  • 分散投資の効果は市場の混乱時に最も顕著に現れるものであり、投資計画の価値を際立たせます。

米国経済は緩やかに減速すると予想

景気後退は常に厳しいものですが、その内容はそれぞれ異なります。最近経験したことの記憶が、今回の景気後退に対する投資家の反応に影響を与えている可能性があります。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退と世界金融危機は、経済成長が劇的に鈍化した直近の例です。どちらも負の連鎖を伴うショック要因を伴っており、米国の経済成長が徐々に減速しその規模が縮小していくと予想されている現在の状況とは、比較対象として不適切と言えます。

しかし、景気予測や市場環境の悪化がどの程度進むのか不明であるため、不安が払拭されていません。米国では、銀行の資本水準は引き続き十分で、消費者と企業のバランスシートは健全であり、労働市場もタイトな状況です。1 持続的な経済の縮小が重くのしかかる可能性はあるものの、これらの分野の現在の強さは、米国の景気後退が浅いもので終わる可能性を示唆しています。

但し、ドル高を背景に、市場は米国の経済成長のペースが他の主要経済圏を上回ると見ています。ドル高はグローバル規模で見れば米国の購買力を向上させますが、米国の輸出を圧迫する可能性があります。また、グローバル経済の減速が長期化した場合、米国製品に対する世界的な需要が減少し、米国の経済活動の重しとなる恐れもあります。

ボラティリティ上昇時に特有の投資家心理を克服する

経済の不透明感と市場ボラティリティの上昇により、投資家の多くが様子見モードに入っています。顧客との会話からは、投資に向けて潤沢な資金が滞留していることが窺えますので、不透明感が払拭されれば楽観的な見方が広がるとGlobal Xは考えています。

投資家心理は、不透明感が後退すると急速に変化し改善する可能性があります。10月最初の2日間のリバウンドは、リスクオフのセンチメントのわずかな後退がいかに大きな影響をリスク資産に与えるかを示しています。市場の回復は、景気後退を脱する前に始まる可能性が高く、GDP成長率に景気縮小の全容が反映される以前に始まる可能性さえあります。念頭に置くべき重要な点は、市場は常に、熱狂と過度な慎重の両方向にオーバーシュートするということです。ウォーレン・バフェットはいみじくも、「他人が貪欲なときは恐れ、他人が恐れているときは貪欲になれ」と述べています。2

景気後退に向けたポジショニング

単純な配当ディスカウントモデルを目安として使用すると、配当金、配当金の予想成長率、長期金利という証券価格を動かす3つの主な要因は、いずれも現在の環境下ではマイナスの影響を受けています。

FRBの急速な利上げが、ディスカウント率を通じてバリュエーションの重しになっています。Global Xは、FRB が金融引き締めを終了する時点が見えてくるまで、不透明感が続くと見ています。
市場は現在、2022年第4四半期にさらに125ベーシスポイント(bps)、2023年第1四半期に25bpsの利上げを織り込んでいます。3 米国のインフレはピークを迎えたとする見方もありますが、月次の数値を見ると依然として頑ななまでに高い水準で推移していることが分かります。FRBの対応によっては、米国の消費者物価総合指数の行方が市場心理に大きな影響を与える可能性があるでしょう。一方で、米国のインフレ率が急速に正常化した場合、市場は利上げ期待を縮小すると思われます。逆もまた然りです。

経済成長の鈍化に伴い、企業業績にその弱さが反映される可能性があります。第3四半期にS&P500構成企業の業績予想は-6.6%修正されましたが、これは、過去5年間の平均である-2.3%を大幅に上回る下方修正です。4 米国企業の業績が後退に向かった場合、一部の企業は減配や配当成長の抑制を余儀なくされるかもしれません。これらの反応の規模によって、本源的価値に与える影響が決まります。

企業収益の循環性は、セクターや産業によって異なります。経済成長期待が減速する中にあっては、収益の安定性が高い市場セグメントに妙味が出る可能性があります。現在Global Xは、ディフェンシブでクオリティに焦点を当てた銘柄を選好しています。フリーキャッシュフローの強さは引き続き重要です。

Global Xはまた、米国外の先進国市場や新興国市場よりも、米国株式へのエクスポージャーを選好しています。ドル高とエネルギー危機が相俟って、ドル高がグローバル経済に与える影響が強まっています。米国経済は相対的に強いポジションにありますが、数多くの米国企業が海外市場にエクスポージャーを持っています。ドル高により、海外での売上や収益のドル換算が押し下げられるうえ、米国以外の国々での経済成長の鈍化は企業業績を悪化させる可能性があります。

長期トレンドを捉えるポジショニング

2022年はこれまでのところ、金利感応度と経済成長感応度のバランスの面で、高配当銘柄が有利でした。しかし、景気後退が本格化すると、市場は安定性のある分野、および景気が悪くても成長できる分野に目を向け始めると思われます。Global Xは、投資家がディフェンシブなポジションにある企業、経済が低迷していても成長できる企業、そして持続的な配当と強力なキャッシュフローを持つ相対的に質の高い企業の間でエクスポージャーのバランスをとるようになると予想しています。

Global Xでは、長期的に追い風に乗る主な分野として、再生可能エネルギー、エネルギー移行に不可欠なコモディティ、サイバーセキュリティ、オートメーションおよびロボティクスなどを想定しています。

  • 欧州のエネルギー危機は、依然として重要な市場リスクの一つです。クリーンエネルギーのソリューションはこの危機を解決するものではありませんが、エネルギー自給を向上させるための長期的なソリューションの一部となるでしょう。クリーンテクノロジーはイノベーションへの、そして再生可能エネルギー配電は公益事業へのエクスポージャーを提供します。投資家は、自身が許容できるボラティリティの水準に応じて、これらのエクスポージャーを組み合わせることが可能です。
  • リチウムと電池の技術は、再生可能エネルギーへの移行に不可欠です。また、グリーンエネルギー技術が発展し、蓄電池の選択肢が改善する一方で、原子力はギャップを埋めるためのクリーンで信頼性の高いエネルギー源を提供することができます。原子力発電の利用の高まりから恩恵を受けるのは、ウラン生産者です。
  • グローバル経済のデジタル化の進展に伴い、サイバーセキュリティリスクが高まっており、企業が厳格なサイバーセキュリティプロトコルを導入する重要性が高まっています。これらのプロトコルは、サイバーセキュリティ保護を提供する企業に定期的な収益機会を創出する可能性があります。
  • 労働市場の逼迫と賃金の上昇により、企業がロボットの利用拡大をはじめとする業務の自動化を進めるインセンティブが生まれます。ロボットのコストが下がり、ディグローバリゼーションによりコスト効率の高い生産および製造のニーズが高まることで、ロボット市場が拡大するとGlobal Xは予想しています。

結論:ボラティリティが投資計画の重要性を高める

ボラティリティが高まると、市場が両極端に動く可能性があります。言い換えれば、市場にとって最良の日は、通常の場合、乱高下する時期に訪れます。しかし、市場のタイミングを捉えるのは、最も経験豊富で成功した投資家にとっても極めて困難です。一般的に、市場においてチャンスは悲観的な見方がピークに達したときに最も大きくなるため、ボラティリティが高まっている時には長期的な投資目標に焦点を当てた投資計画を立てることが重要です。

弱気相場によってリセットのチャンスが生まれます。つまり、投資家は下落したバリュエーションを利用してポートフォリオをリポジショニングしたり、損失通算による節税効果(タックス・ロス・ハーベスト)を得たりすることができるのです。現在の状況は確かに厳しいですが、逆に割安銘柄を発見するチャンスと見ることもできます。守りの姿勢を保ちつつ、より高い成長のチャンスを窺うことで、長期的な視野に立ちながら短期的なボラティリティを受容可能なものにすることができるはずです。