ニューヨークオートショー総括:際立つ電気自動車のイノベーション
先月、Global X は、2023年ニューヨーク国際オートショー(NYIAS)に参加しました。123回目を迎えた今回のオートショーでは、100万平方フィート以上の展示スペースに数百台の車両が展示されました1。NYIASは、自動車メーカーが最新モデルを発表する場であり、自動車の主要なトレンドを概観することができます。今年は、電気自動車(EV)が大きく取り上げられ、多くの自動車メーカーがEVモデルや技術について主要な展示やプレゼンテーションを行いました。
本稿では、カンファレンスで得た収穫をご紹介するとともに、NYIASへの参加で輸送の未来はますます電動化されると改めて確信したことについてお話したいと思います。
重要なポイント
- 従来の自動車メーカーにとって電気自動車はますますイノベーションの焦点となっており、ほとんどのOEM(開発メーカー)が次期EVモデルを前面に押し出して展示していました。
- 自動車メーカー各社は、EV所有に対する不安を解消するため、EVや充電システムに関する潜在的な購入者への啓蒙活動を積極的に行っています。
- ニューヨーク州のDrive Clean Rebate Programやニューヨーク市の公用車電化の取り組みは、政府の政策がEV普及の追い風になることを実証しています。
自動車メーカー各社が最新のラインナップでEVの提供を拡大
NYIASでは、小型乗用車、トラック、クロスオーバー、SUVの計216台が展示されました2。そのうち、プラグインハイブリッド車(PHEV)が34台、バッテリーEV(BEV)が19台、燃料電池車(FCEV)が2台でした3。このため、EVの展示台数は25%程度でしたが、多くのOEMがEVを押し出して大々的に展示していたことから、その存在感はより大きく感じられました。例えば、オートショーの会場に入ると、トヨタのオール電化SUV「BZ4X」、起亜自動車の3列シートバッテリーEV「EV9」、現代自動車のバッテリーEV「IONIQ 5」「IONIQ 6」の大きなバナーが参加者の目に飛び込んできます。トヨタ、ステランティス傘下のジープ、ゼネラルモーターズ傘下のシボレーは、看板やディスプレイの多くを今後のEVラインアップに割いていました。EVに重点を置くことは、OEMが保有する車種を電動化する計画と合致しています。
さらに、今回のオートショーで最も期待された2つの発表がEVでした。ステランティスの一部門であるドッジが、ドッジ・ラム1500 REVを量産型として発表しました。ラムトラック初のEVバージョンとなるこのモデルは、2024年第4四半期から発売される予定です4。起亜自動車は、同社史上最大級の3列シートSUV「Kia EV9」を発表しました5。
この2台の大型車のデビューは、米国の消費者に最も人気のあるSUVとトラックのセグメントで、各社が電動化を進めていることの表れであるとGlobal Xは考えています。2023年3月の米国自動車販売台数は、SUVとトラックセグメントを合わせて8割近くを占めています6。SUVセグメントは他の主要な自動車市場でもシェアを拡大しており、2022年にはインドで乗用車販売の50%超を占め、2022年上半期にはヨーロッパで新車販売の50%近くを占めるまでになっています7,8。
消費者の不安解消にはEVの航続距離と充電に関する教育が不可欠
OEM各社はまた、自動車購入希望者にEVの走行性、航続距離、充電システムなどを説明するためにオートショーを活用しました。会場では、現代自動車の「Ioniq EV」やフォードの「Mustang Mach-E」の同乗試乗、シボレー、フォルクスワーゲン、BMW、日産、起亜のEV試乗などのEVデモが実施されました。また、フォルクスワーゲン、ジープ、シボレーなどのOEMは、EV充電システムにおいて、EV充電時間の目安や潜在的なメリットなどを紹介するディスプレイを設置していたのが特徴的でした。例えば、Jeep Brand Level II EV Home Charging Stationは、屋内でも屋外でも設置可能で、内蔵のWifi接続とモバイルアプリで遠隔操作でき、Level 1充電システムより最大6倍速く充電できます9。
また、ニューヨーク州電力公社とニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)は、EV充電システムのレベルの違いや、EVがさまざまなタイプの自動車ユーザーの日常生活にどのようにフィットするかについて、消費者を教育するための展示全体を用意しました。EVの充電システムには、充電に最も時間がかかり、家庭用充電器として作られたレベル1から、公共の急速充電ステーションに設置され、わずか15分でEVをフル充電できるレベル3まであります10。一部の消費者が抱くEV所有への不安を解消するためには、OEMや地方自治体がEVの航続距離や充電インフラの進化を伝える努力が不可欠だとGlobal Xでは考えています。
ニューヨークは政府がEV普及推進を牽引する代表例
ニューヨーク州の部署が、EV充電に加え、購入希望者に同州のDrive Clean Rebateを啓発する資料を用意しました。ニューヨーク州では、EV購入者はEVの購入またはリースに対して最大2,000ドルのリベートを得ることができます11。このリベートは、適格な新車EVの購入に対して最大7,500ドル、適格な中古EVの購入に対して最大4,000ドルの連邦EV税控除と組み合わせることが可能となっています12。
また、ニューヨーク市は、市の完全電化のバス、ユーティリティビークル、タクシー、サニテーショントラックを紹介する展示を行いました。注目すべきは、ニューヨーク市Cの電気自動車保有台数が2015年の929台から2022年9月には4,050台以上に増加し、4,000台のEV目標を3年以上前倒しで達成したことです13,14。ニューヨーク市は2035年までに約3万台の市が保有する車両の電動化を目標としています15。
ニューヨークの州政府および地方自治体は、地方自治体政府がEVの普及にさらなる追い風をもたらすうえでカギとなる事例を提供しているとGlobal Xは考えています。EV購入者に対する州レベルの財政的インセンティブは、連邦レベルの強力な政策的追い風をさらに加速させる可能性があります。また、自動車メーカーにとっては、都市レベルの政府によるEV購入が潜在的な顧客層として拡大しています。
結論:NYIASはEV革命の試金石
NYIASでは、予想通り、EVとEV充電インフラの最新イノベーションが紹介されました。自動車メーカーによる車両の電動化が大幅に進展していることに加え、政策的な追い風もあり、EVの販売台数は堅調な伸びを示すことが予想されています。EVの世界販売普及率は、2025年に25%、2030年に42%、2035年に62%に達することが予測されます16。将来の輸送手段がますます電化されるにつれ、EVメーカー、EV用バッテリーメーカー、リチウム鉱山など、電気自動車のバリューチェーン全体が利益を得る可能性があります。