インフレクション・ポイント:自動化時代の物語
関税とその影響、さらにインフレや金利の今後の動向を読む上で、今後数か月が非常に重要になると考えられます。これらの点に関する政策決定がニュースの見出しを引き続き独占する一方で、経済を変革させつつある長期的な転換の動きが加速しています。
Global Xは昨秋、「情報化」時代が終わり、「自動化」時代が始まったという見方を提唱しました(リンクはこちら)。この影響は広い範囲に及びますが、最も重要な変化の1つは、従来、多くの資産を保有し非効率だった業界が事業を合理化する機会を得ることです1。フロリダ州はエバーグレーズ国立公園におけるビルマニシキヘビの脅威を調査・対処するため、40匹のウサギ型ロボットを投入するのとのことですが、「不思議の国のアリス」に例えると、私たちは(アリスのように)自動化というウサギの穴に深く入り込んでいます2。
ウサギはさておき、自動化は超大型テック企業を超えて大きく広がりつつあり、かつては取り残されていると思われていたセクターで新たな効率化を推進しています。S&P 500の資本財・サービスセクターがその典型例で、1990年から2021年までの同セクターの平均利益率は6.4%でしたが、それ以降は平均9.1%になっています3。ロボットによる身体活動の自動化とAIによる認知機能の自動化はすでに経済を大きく変えつつあり、企業の規模問わず、収益機会を生み出しています。
重要なポイント
- ロボットとAIは建設、インフラ、公益事業などの業界に浸透しており、効率性と利益率の向上に貢献しています。
- 消費者は、レストランからタクシーまで様々な業界への自動化の導入を経験する間近の段階まで来ています。
- SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)によってより多くの企業が大企業向けのテクノロジーを利用できるようになったのと同様に、ロボット・アズ・ア・サービスは物理的な自動化の状況を大きく変えつつ、より安定したキャッシュフローをロボット・メーカーにもたらす可能性があります。
思いがけない場所で利用されるロボット
米国最大の州営公共電力組織であるニューヨーク州電力公社(NYPA)は、およそニューヨークからデンバーまでの距離に相当する約1,550サーキット・マイル(約2,500キロメートル)の送電線を管理しています4。送電線の手作業による点検は、当然、非効率的でコストが高く危険である上、多くの場合複数のチームで作業を行う必要があり、完了までに数か月から数年かかることも珍しくありません。
効率性を向上させるため、NYPAなどの公益事業会社やインフラ関連企業は、Skydioのドローンを使用して送電線をより効率的に点検し始めています5。公益事業会社の利益率は、2022年より前は平均7.5%とそれなりに安定していましたが、それ以降は11.5%で推移し、2025年第1四半期(1-3月期)には過去最高の13.8%を記録しました6。
ロボットはインフラにも進出しています。ロボット関連の部品メーカー、アドバンスド・コンストラクション・ロボティクスのTyBOTは、橋梁建設でよく使われる水平鉄筋を固定します。通常の手動溶着の場合、一時間で150本から200本しか固定できませんが、TyBOTは一時間で1,100本という驚異的な速度で作業することができます7。また、同社のラインアップには水平および縦方向の鉄筋を持ち上げ、運び、適切な場所に配置するIronBOTもあります。この2種類のロボットは共同で、フロリダ州ポートセントルーシーのプロジェクトで鉄筋工事の時間を半分に短縮するのに貢献しました8。
また、建設会社は何年も前からコンピューター支援ツールを使用していますが、新たなAI活用事例も現れていることから、今後も期待されています。エネルギー機器・製造会社のGE ベルノバが買収計画を発表したフランスのソフトウェア企業Alteia SASは、送電線や送電構造の写真を使用して暴風雨による被害を評価するAIシステムを開発しました9。この情報に基づき、電力網を管理する企業は、より迅速に修理を行い、最も脆弱な地域のリスク軽減に一層素早い対応をとることができます。2025年第2四半期の米国内投資のニュースで目立ったものは特段ありませんが、(ソフトウェアを含む)情報技術と産業機器への投資はともに過去最高に近い水準で増加しています10。
消費者の日常を取り巻く自動化
ユーザーが通信販売やオンラインで購入した商品の到着に1週間以上待たされる時代はほとんど過ぎ去り、ほぼ即時に配達されるという満足が得られるようになったのは主に自動化の進歩のおかげです。例えば、アマゾンは現在、全ての配送施設において荷物の移動を支援するロボットを計75万台以上使用しています11。例えば、ヘラクレス(Hercules)ロボットは最大1,250ポンド(約567kg)の在庫を持ち上げて100万平方フィート(約9.29万平方メートル)の広さを移動することができます。また、在庫管理システムSequiaは、従業員が注文の品を素早く見つけるのに役立ち、ロボットアームのSparrowは、特定の商品を識別して仕分けするのに役立ちます12。
ロボットはレストラン業界にも貢献しており、教育やサービス業向けにロボットを提供している米ロボットラボなどの企業が接客、フード・デリバリー、特定のキッチンやバーの業務を自動化するソリューションを提供しています13。他にも、QRコードによってアクセスできるクーラー・ヒーター付きのロボットがテイクアウト食品を配達しています。2024年には23億ドル(約3,400億円)の市場だったフードサービス・ロボット市場は、2034年まで毎年20%以上の伸びが見込まれます14。
そして、自動運転タクシーが広がりつつあります。アルファベットのウェイモはすでにフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、オースティン、アトランタでウーバーを通して1,500台を運行中で、今年はマイアミ、ワシントンD.C.、ラスベガス、サンディエゴに拡大する予定です15。ウェイモは、世界最大級のレンタカー市場であるニューヨーク市での試験運用を検討していますが、現在の法律では運転席に人が座る必要があります16。他にも自動運転車サービスの提供に関心を持っている企業が複数あり、おそらく多くの消費者が予想するよりも早く実現すると考えられます。
中小企業向けロボット・アズ・ア・サービス
歴史的に、自動化技術の導入は企業の設備投資を通じた固定資産の購入と等しいものでした。公開市場や金融機関を通じて投資資金にアクセスできる大企業は、これらの高額商品を購入する余裕がありました。ただし、中小企業にとっては、このような設備投資は難しくなります。しかし、下記のような新しいトレンドがこの問題の解決に一役買う可能性があります。
ロボットはレンタルで利用できるようになりつつあります。主なメリットとして挙げられるのは、リソースが限られている企業が効率性や収益性を向上させるツールを利用できるようになることです。二つ目は、ロボット製造業者の収益構造が企業の設備投資のタイミングに左右されるものではなく、より持続的で安定したキャッシュフローに転換できる可能性があることです。これは、クラウドコンピューティングやサイバーセキュリティ分野において、ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)が果たした役割と似ています。
ロボット・アズ・ア・サービスの市場は、ナイトスコープなどの企業の活躍で2025年の162億ドル(約2.4兆円)から2034年には1,252億ドル(約18.5兆円)に拡大する見込みです17。ナイトスコープは、ハードウェア、ソフトウェア、サポートに対して顧客が月額料金を支払うマシン・アズ・ア・サービスと呼ばれるサブスクリプション(継続課金)モデルを通じて自律型セキュリティ・ロボットを提供しています。最近では、ナイトスコープはセルフストレージ(レンタル収納)、ホスピタリティ、ヘルスケア、住宅、物流業界の顧客と14件の契約更新を行ったと発表しました18。
世界最大級のロボット・メーカーABBもロボット・アズ・ア・サービスのモデルを取り入れています。ロボティクスおよび個別自動化部門にて上場しているABBの売上高は、2025年第2四半期に前年同期比6%増となり、同部門からのキャッシュフローが25%近く増加しました19。同社が開発したGoFaロボットは人間と一緒に作業するように設計された協働的なシステムで、複数の業界、中でも中小企業で幅広く使われています20。
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