インドのデジタル化の進展:ベンチマークを上回る銘柄選定のチャンス
インドではデジタル化が着々と進んでいます。インドは、2015年に「デジタル・インディア」計画を開始しました。その結果、構造改革が進み、スタートアップから多国籍企業に至るまで、最終的に誰もがインドの先進的な技術スタックを活用できることを目指して門戸が開かれる中で、国内総生産(GDP)に占める「ニューエコノミー」セクターの割合は約5%から約15%に上昇しました1。それに加え、現在、政府による景気刺激策がさらなる長期的な成長機会をもたらす促進剤となっています。その結果、インドには、またとない長期的な投資機会が豊富にあります。
重要なポイント
- インドのデジタル化は約10年前に「デジタル・インディア」計画によって始まり、インド経済は今、その成果を実現しつつあります。
- 改革と景気刺激策を背景に海外直接投資(FDI)志向のシフトが進んでおり、こうした動きがインド国内、とりわけ「新しい」デジタル経済における長期的な成長の支えとなる見込みです。
- このような急速な変化は、積極的な銘柄選定を行う投資家にとって、平均的なインドのベンチマークを上回るパフォーマンスを達成する絶好の投資機会になるとGlobal Xは考えています。
「デジタル・インディア」の開始
2015年の「デジタル・インディア」計画は、電子サービスを通じて国民と政府をつなぐための3つの重要な柱を土台として立ち上げられました。
- 強固なデジタルインフラ(ID):デジタル革命を支える1つ目の柱は、アドハー(Aadhaar)のようなイニシアチブを基礎としています。アドハーは、数百万人のインド国民に必要不可欠なサービスへのアクセスと金融包摂(ファイナンシャルインクルージョン:経済活動に必要な金融サービスをすべての人々が利用できるようにすること)を提供する独自のデジタルIDプログラムです。アドハーの導入前には、正式な身分証明書を持っていたのは国民の25人に1人、銀行口座を持っていたのは4人に1人にすぎませんでした2。現在、このオンライン生体認証デジタルIDシステムは13億5,000万人以上の国民をカバーしています。その結果、本人確認(KYC)プロセスが改善され、電子KYCのコストは12米ドルからわずか0.06米ドル(6セント)に低下しました3。
- 政府サービスへのアクセス(決済):2つ目の柱は、UPI(ユニバーサル決済インフラ)を基礎とするものです。UPIは、銀行口座を持たない小規模な企業や個人が金融取引記録やクレジット履歴を作れるなど金融包摂を強化することで、デジタル経済を形作るのに役立ち、結果的にeコマースの発展につながります。UPIの取引額は、2017年度~2018年度の120億米ドルから2022年度~2023年度には1兆6,600億米ドルに増加し、2023年中の取引件数は1,180億件となりました4。
- 国民の権限強化(データ):3つ目の柱は、インドのクレジット業界の変革につながり得るアカウントアグリゲーターの枠組みを構築することを焦点としています。簡単に言うと、アカウントアグリゲーターは、2021年に公開されたDEPA(データによる力の付与およびデータの保護に関する基本設計)インフラを利用して、異なる機関の間のデータ共有を管理する同意管理者の役割を果たします5。これは、担保不足や非標準的な融資要件といった一般的な問題の解決に役立ちます。また、高コストであることが多い金融書類の取得と確認にかかる費用も削減されます。
開発のロードマップ
インド企業は、イノベーションを推進する独自のインフラから恩恵を受けています。「インディア・スタック」が一連のオープンAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を提供することで、起業家は国内インフラを活用してインドの全国民を対象とするサービスを開発することができます。
インドは、国民がデジタルサービスを利用できるように、高速のインターネット網を全国に拡大しました。スマートフォンの普及台数は2015年の約2億5,000万台から2023年には10億台を超え、普及率は71%近くに達しています6。これらの10億台のスマートフォンのうち3億5,000万台超が18米ドル程度のものですが、それでもUPIとの相互運用が可能です7。
これに伴い、イノベーションと起業家精神を支えにデジタル経済の成長が進んできました。インドはグローバルなハイテク企業にとってすでに長らくサービス大国となってきたため、当然、次のステップは国内のイノベーションだと考えられます。実際、グーグルは、中小零細企業の事業運営のデジタル化を支援することを目的として、「Google for India Digitization Fund」により2025年までに100億米ドルを投資する予定です。また、マイクロソフトは、「AI Odyssey」イニシアチブのもと、インドで10万人の開発者に最新のAI技術とツールのトレーニングを実施することを計画しています8,9。
インド決済公社(NPCI)は2016年に電子決済システムUPIの提供を開始しました。UPIは、インド準備銀行(RBI)、公的・民間銀行、政府から成るコンソーシアムによって作られました。UPIは、隣国の中国の閉鎖的な決済システムとは異なり、オープンなAPIを提供する、24時間365日体制、モバイルファーストの即時決済システムです10。このような「インディア・スタック」のオープンアーキテクチャは、民間企業が様々なアプリケーションを組み込む誘因となり、UPIの取引額は大幅に増加しました。その結果、取引の効率化、金融包摂の強化、経済の形式化が進展しました。これに伴い、クロスセルの機会の拡大、コスト削減、収益性の向上につながり得る決済・融資機能のデジタル化が実現し、企業が成長を遂げる土台が整いました。
ベンチマークを上回る投資機会
インドの積極的なデジタル化は、ベンチマークを上回る投資機会をもたらしており、長期投資家にとって魅力的な支援材料となる可能性を秘めています。例えば、モバイルフードデリバリーとクイックコマースのプラットフォームであるゾマトは、2021年に上場したばかりですが、半年後にはMSCIインド指数に採用されました。同社株は上場以来150%近く上昇していますが、そのトータルリターンのうち100%強がMSCI指数への採用前に達成されています11。同社はUPIの成長の恩恵を受け続け、オンライン決済アグリゲーターとして事業を行うためにインド準備銀行(RBI)の承認も得ました。
ゾマトは最もよく知られた成功事例の1つかもしれませんが、インドにはインターネットとスマートフォンの普及の拡大を利用しようとするデジタル関連やEコマース関連のスタートアップが無数にあります。インドは、123,000社以上のスタートアップを抱える世界第3位の規模のスタートアップエコシステムを有しており、これには114社もの「ユニコーン」(企業価値が10億米ドル以上のスタートアップ)が含まれます。このようなスタートアップの企業価値を合計すると3,500億米ドル以上に達します12。さらに、インドのオンラインショッパー数は2030年までに世界第2位の水準となる5億~6億人にのぼると予想されており、商品回転率が高い消費財から地方のマイクロファイナンスに至るまで様々な業種で、さらに多くの企業が市場に参入し続ける見込みです13。
また、リライアンス・ジオ・インフォコムの上場の可能性など、今後のIPOの見通しにも期待が持てます。同社はインド全土に5Gを展開し、手頃な価格のスマートフォン「ジオ・バーラト(Jio Bharat)」を投入しました。これにより、低所得者層もデジタル経済に参加できるようになります。
eコマースによってD2C(Direct to Consumer:消費者との直接取引)チャネルが急成長を遂げる中で、ビューティー&パーソナルケア(BPC)業界もインドのデジタル化の恩恵を受けています。デジタルファーストのBPC企業は従来型企業の2倍のペースで成長しています14。2027年までに300億米ドル規模に達すると予想されるインドのBPC市場でしのぎを削っているナイカ(Nykaa)は、その筆頭です15。2024年度には、同社の顧客数は約1,200万人、注文件数は4,000万件以上に達し、年間総商品価値(GMV)は10億米ドルを超えました16。
デジタル・インディア
「デジタル・インディア」は包括的で発展的な政策です。新型コロナウイルスのパンデミック前には、インドの中小零細企業の92%が正式な融資を受けることができませんでした17。「デジタル・インディア」により、それが変わりつつあります。「デジタル・インディア」は、効率性の向上と競争力の強化につながり、農村部の経済格差を埋めるのに役立ち、今後10年間の経済成長に向けてインドの体制を整えるものと期待されます。中小零細企業はGDPの約30%、輸出の約50%を占めているため、インドのデジタル開発・変革が進めば、飛躍的な経済成長が実現する可能性があります18。現在、「インディア・スタック」は依然としてデジタルプログラムのグローバルベンチマークであり、UPIとデジタル決済の普及拡大が経済の形式化と成長を支えている現状を踏まえると、先行きは明るいと考えられます。経済がこのような力強い構造的な転換期を経る時には、積極的な銘柄選定を行う投資家にとってまたとない投資機会が生まれるものです。
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