ついにイーサリアムの時代が到来か

過去2年間、暗号資産市場では、全く異なる2つのストーリーが展開されてきました。ビットコインは、米国でETFの上場が承認されて以来、大幅な上昇トレンドをたどり、次々と最高値を更新してきた一方で、イーサリアムは後れをとり、2021年に付けた最高値を最近ようやく突破したばかりです。

しかし、そのような対照的な状況は今、新たな展開を迎えようとしているかもしれません。規制の明確化、ETFへの資金流入の増加、注目度の高い暗号資産事業者の相次ぐIPOなどを背景に、投資家心理は変わり始めています。ビットコインの勢いが和らぐ中、ついにイーサリアムが影から抜け出して表舞台に立つ時が来たのかもしれません。

重要なポイント

  • これまで強気相場では、イーサリアムのパフォーマンスがビットコインを上回ってきました。ビットコイン現物ETFのタイミングと話題によってバランスが崩れましたが、イーサリアムETFの普及は追いつきつつあります。
  • 注目度の高い暗号資産事業者のIPOや政策の明確化に伴い、改めて注目が集まり、個人投資家と機関投資家の両方で積極的に参加する動きが広がっています。

ETF:変化のきっかけ

2010年代後半にイーサリアムが暗号資産の主力通貨として、また、代表的な優良アルトコイン(ビットコイン以外のコイン)としての地位を確立して以来、投資家はイーサリアムとビットコインの動きがほぼ連動することを期待するようになりました。さらに、時価総額が小さく、「ハイテク株のような」性質があるイーサリアムは、ビットコインの大きな値動きに対するレバレッジの手段とみなされてきました。

そのような背景の中、過去2年間、イーサリアムのパフォーマンスが低迷してきたことは、多くの暗号資産関係者にとって予想外でした。ビットコインが最高値を更新する一方、イーサリアムは2021年の高値に戻すのに苦戦し、イーサリアムに熱狂していた投資家を困惑させてきました。

なぜ、今になって変化が起きたのでしょうか?

グローバルXの見解では、現在の暗号資産の強気サイクルがそれまでの流れから明らかに変わった主なきっかけは、米国上場の現物暗号資産ETFが登場したことが要因だと思われますi。こうした新しい投資手段の開発は、この資産クラスを多くの人々に広める強力な要因となり、数十億もの新しい資金流入と、投資家の裾野の拡大につながりました。特にビットコインETFは劇的に普及し、2024年1月の導入以来、純流入額が500億米ドル(約7.4兆円)を超えています1

とはいえ、このような動向はビットコインだけでなく暗号資産全体にプラスになるはずです。両方の通貨が現物ETFの承認を受けたにもかかわらず、新規の資金流入がビットコインにはっきりと偏ったのはなぜでしょうか?

パフォーマンスの格差と、関係性の変化を説明できる要因は、市場のタイミングシンプルさという2つだとグローバルXでは考えています。

市場のタイミングを計ることは重要?

まず、市場のタイミングを計ることは、見極めやすく直感的に理解できます。米国で初めてビットコイン現物ETFが導入されたのは、間違いなく強気相場の時期であり、投資家はAIブームを背景にした好調な2023年の勢いを引き継いでいました。リスクオン状態の投資家たちは、実質的に新たな「半減期」が近づく中でビットコインへの投資に飛び付きましたii。対照的に、イーサリアムの現物ETFの登場は7月下旬のことであり、日本のキャリートレードの巻き戻しのわずか1週間前というタイミングでした。このショックは重要な米国大統領選挙を前に市場のボラティリティが高まるきっかけとなり、新しいリスク資産にとってははるかに厳しい環境となりました。

ビットコインとイーサリアムが足並みをそろえて動くことが多かった過去の市場サイクルとは異なり、今回は2つの資産が異なる動きをたどりました。ビットコインETFは既に主力としての地位を確立し、新たな投資家基盤を築いていたことで、相場低迷時の下落が抑えられ、回復を支える足場が確保されました。一方、イーサリアムETFは、そのような基盤がないまま急落に陥りました。規模を拡大する時間がほとんどなかったイーサリアムは、下落を和らげる手立ても、勢いを取り戻すために必要な大きな投資家基盤もなく、ビットコインに対するベータは実質的に低下しました。

年が明けると、この違いはさらに顕著になりました。ビットコインの勢いは雪だるま式に加速し、新たな資金を呼び込み、さらに底堅さが強まった一方、イーサリアムは追いつくことができず、その結果、パフォーマンスの格差が拡大しました。こうした中、成熟途上の暗号資産市場では、資産の投資家層の厚さ(この場合はETFによって確立)がいかに大きな影響を及ぼすかが浮き彫りになりました。

シンプルは簡単、シンプルは素晴らしい

暗号資産のような新たに登場した資産クラスでは、「理解しやすい」ことは、地味ながらも有力なメリットになります。ビットコインのストーリーは直感的で、「デジタルゴールド」という概念は理解しやすく、10年間にわたる繰り返しを経て徐々に受け入れられてきました。

対照的に、イーサリアムははるかに複雑です。イーサリアムは、DeFi(分散型金融)を実現し、ステーキング(暗号資産を預け入れることで報酬が得られる仕組み)を可能にし、デフレ型トークノミクス(トークンの総供給量が決めることで、希少性を高めて価値を上昇させる仕組み)を組み込み、PoS(プルーフオブステークシステム、取引を承認するためのコンセンサスアルゴリズム)で動作する「プログラマブル・スマートチェーン」と謳われています。このような特徴は、イーサリアムに大きな可能性をもたらす一方で、説明が難しくなり、規制当局による明確な政策設計が難航する原因にもなっています。ETFの発行体にとっても、ファイナンシャル・アドバイザーにとっても、イーサリアムの複雑さは普及の障壁となってきました。

しかし、2025年に入って状況は変わりました。米国では最近、画期的なジーニアス法が可決され、長らく待ち望まれてきた、ステーブルコイン(広範な暗号資産エコシステムを支える基盤)に関する規制が明確化されました。さらに、他の暗号資産関連法案も超党派の強い支持を得ています。同時に、世界的な金融テック企業「サークル・インターネット・グループ」や暗号資産プラットフォームを運営する米国企業「ブリッシュ」などの注目度の高いIPOにより、ビットコイン以外の通貨でも信頼感が高まってきました2。その結果、米国のイーサリアム現物ETFの需要が急増し、現在、資金流入額は130億米ドル(約1.9兆円)を超えています3

総じて言えば、暗号資産で新たな強気相場が生まれつつあり、ビットコインの原動力となってきた時と同じ投資インフラの整備が進んだ今、イーサリアムはついにその差を縮めようとしています。

結論:巻き返しの準備は万端

イーサリアムのストーリーは現在、ビットコインと比べて不足していることよりも、ようやく確立された基盤に関することが焦点になっています。規制明確化の勢い、機関投資家からの資金流入の急増、イーサリアムの実用化を叶えるアプリケーションエコシステムの成熟など、イーサリアムがビットコインとの差を埋めるための状況が整いました。市場では、一度枠組みとアクセスポイントが確立すればすぐに資金が流入することは既に実証されています。その同じインフラがイーサリアムの味方になった今、イーサリアムは永遠の「ナンバー2」ではなく、その差を縮められる可能性が最も高い資産として位置付けられています。

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