コモディティトラッカー:2月
原子力とウラン
重要なポイント
エヌビディアとアイダホ国立研究所は、AIを活用した原子力研究開発を加速するためのパートナーシップを締結しました。一方、カリフォルニア州は、新規の原子力発電の拡大を禁じる方針から転換しました。米国以外では、カザフスタンの原子力企業カザトムプロムがインドとの間で、同社の簿価のほぼ半分に相当するウラン供給契約を結びました。
エヌビディアとアイダホ国立研究所(米国原子力研究機関)は、米国エネルギー省の「ジェネシス・ミッション(Genesis Mission)」のもと、人工知能を使って原子力エネルギーの普及を加速するための提携を発表しました1。「Prometheus」(プロメテウス)というコードネームで呼ばれるこのプロジェクトは、原子炉の設計、認可、製造、建設、運転にAIを活用することで原子力エネルギーの普及を加速させることを目指しており、工期半減と最大50%のコスト削減を目標としています2。この官民パートナーシップは、成功すれば、原子力研究開発に変革をもたらす可能性があります。
世界最大のウラン鉱山会社であるカザトムプロムは、インド原子力省との間で、同社の帳簿価額のほぼ半分に相当する長期供給契約を締結しました3。その規模を考えると、臨時株主総会での承認が必要になる見込みです。カザフスタンは世界のウラン生産量の約40%を占め、国営の鉱山企業であるカザトムプロムがすべての探査・採掘活動をコントロールしていることから、この取引が承認されれば、世界のウラン供給のかなりの部分が売約済みの状態になります4。
カリフォルニア州は、長年にわたる新規原子力発電所の建設禁止措置から、先進的原子炉を除外できる法律を検討しています5。現状では、カリフォルニア州のディアブロ・キャニオンに稼働中の原子力発電所1基があり、州の電力需要の10%を賄っています6。この法案が成立すれば、2005年1月1日以降に原子力規制委員会(NRC)に承認された新しい設計の原子炉について、導入拡大への道が開かれる可能性があります。カリフォルニア州の原子炉拡大に道が開かれる可能性があります。そうなれば、事実上、同州における新規原子力発電所建設の禁止措置に終止符が打たれ、2045年までに100%クリーンエネルギーを達成するという目標に向けた道筋がつくことになります7。
価格動向
ウランのスポット価格は、1ポンドあたり約90ドルにむけて推移する中、1月28日に100ドルを一時的に超え、今は調整局面に入りました。2月25日現在、ウランのスポット価格は1ポンドあたり87.80ドルで推移しています8。
- スポット市場は1月下旬から2月前半にかけて活発な動きとなり、130件の個別取引で約1,410万ポンド(U3O8e)が取引されました。時期を同じくして、ウランのスポット価格は1月29日まで年初来で24%近く上昇した後、2月下旬には87.80ドルに反落しました9。
- 長期契約価格(ターム価格)は年初の2か月間で着実に上昇を続け、2月末までに1ポンドあたり90ドルと、2008年5月以来の高値を付けました。電力会社とウラン鉱山企業との間の契約活動は穏やかな動きにとどまっていますが、最近のオファーは継続的な価格上昇圧力を反映しており、最低価格の引き上げや数量の柔軟性の低下が契約内容に表れています10。
見通し
カリフォルニア州の新法案は、ニューヨーク州とイリノイ州における原子力エネルギーを支持する方向への同様の転換に続くものであり、今後数年間の州レベルの送電網拡大のベースとなります。このような連邦レベルと州レベルでの取り組みの方向性の一致は、協調の機会をもたらすだけでなく、米国内で原子力発電を支持する超党派の強い後押しがあることを浮き彫りにしていると考えられます。こうした取り組みは、認可スケジュールや規制上の障壁を乗り越えるために不可欠となります。これは数千万ドル規模のコスト削減につながる可能性がありますが、依然として原子力を活用した電力供給網の拡大の足かせとなっています。
カザトムプロム(カザフスタンの国営ウラン会社)とインドの間の供給契約は、承認されれば、同社の帳簿資産価値のほぼ半分に相当し、今後生産される大量のウランが事実上、政府備蓄用に確保されることになります。
銅
重要なポイント
米国最高裁が一部の関税を無効とする判決を下したことを受け、銅価格は急騰しました。決算発表では、銅関連事業の利益率が改善し、収益に大きく寄与していることが示されています。
2月22日に米国最高裁が国際緊急経済権限法(IEPPA)に基づく緊急関税措置を無効とする決定を下したことを受け、銅価格は上昇しました11。この決定により、中国、ブラジル、インドなどの産業用の銅消費国への関税が相対的に低下しました。米政権が新たに定めた世界的な関税率のもとで、アジア向けの加重平均関税率は20%から17%に引き下げられ、中国向けの加重平均関税率は32%から24%に引き下げられました12。市場にもたらされた短期的な安心感は一時的なものにとどまる可能性があるものの、最高裁判決による影響は金属市場にとって総じて好材料であると受け止められました13。
銅鉱山企業の当初の決算は、金属価格の上昇と過去最低水準の製錬・精製費(TC/RC)を背景に数年ぶりの高水準となっています。
銅価格は、2025年には年間で1トンあたり平均9,954ドルと過去最高を記録し、2026年に入って1トンあたり13,000ドル超の水準まで上昇しました14。金や銀など、銅採掘に伴う副産物も、歴史的な高値またはそれに近い水準で取引されており、銅鉱山企業に副次的な収入と利益率の拡大をもたらしてきました。最後に、銅製錬所の急増によりTC/RCが記録的な低水準となったことで、鉱山企業が自社の銅取引量の処理に支払う費用が大幅に抑えられ、多額の事業コストが削減されました15。
BHPグループやリオ・ティントなどの世界的な総合鉱山企業では、銅事業が収益の主な原動力となっており、営業利益のうち銅事業に帰属する割合はそれぞれ約51%および約30%でした。BHPでは、総収益への寄与度で銅が鉄鉱石を上回りました16。注目すべき点は、鉱山企業各社がM&A活動を拡大しようとする中で、銅業界が新たな長期鉱床の取得を目指していることです。このことは、BHPとアングロ・アメリカンとの交渉と、リオ・ティントとグレンコアとの交渉が、どちらも評価額の不一致を理由に進展せず、決裂したことでも示されました。これは、新規鉱山の取得が難しくなっていること、銅資産のプレミアムが上昇していること、資産の価値見通しが上昇していることを反映しています。
価格動向
銅価格は1月に過去最高値を更新しました。一時、14,527ドルに達し、2008年以来最大の上昇幅となりました17。2月下旬には13,000ドルまで戻したものの、市場が春節後の中国の工業需要に関する材料を見極めようとする中で、銅価格は高値圏にとどまっています18。
- 報告されている中国の銅在庫は通常の水準を上回っており、中でも民間保有の銅在庫が2020年以来の高水準へと急増していることから、短期的な現物需要が減速していることが示されています19。
見通し
中国の春節が終わるとともに、世界的な貿易環境が改善する中で産業用の買い手が市場に戻り、銅市場も通常の状態に戻ると考えられます。また、米連邦最高裁が、IEPPAに基づいて設定されたいくつかの関税を撤廃する決定を下したことも、新興市場や銅生産企業にとって有利な需要状況をもたらします。ただし、第232条に基づく銅製品に固有の関税は依然として有効であり、2月の最高裁判決とは無関係である点には注意が必要です。短期的な見通しは不透明ですが、再び米ドル安が進む可能性がある中、進む可能性がある中、2026年後半の銅価格の推移については楽観的な見方を維持しています。
米国最高裁の2月の判決により、米国政府が新たに導入した一律15%の関税のもとで世界の輸出企業の加重平均関税が低下するため、産業用の消費が押し上げられる可能性があります。
貴金属
重要なポイント
2月上旬に、貴金属市場は約十年ぶりの高い変動性に見舞われましたが、月末には下落分の大半を取り戻しました。コモディティ価格の乱高下にもかかわらず、第4四半期の金鉱山企業の決算では過去最高水準の利益増加と明るい見通しが示されました。
現在、2025年第4四半期の金鉱山企業の決算が相次いで発表されており、一部の企業は過去最高の四半期業績を達成すると予想されます20。例えば、バリック・マイニング社は、調整後税引き後純利益が前年比で2倍超に増加し、ニューモント社は5四半期連続で利益と売上が予想を上回り、金の販売が前年比23%増加しました21。また、フリーポート・マクモラン社は、グラスベルグ銅鉱山の事故があったのにもかかわらず、純利益が前年の2.74億ドル(約440億円)から4.06億ドル(約650億円)に増加し、予想を上回る業績を発表しました22。
1月下旬の変動性を受けて、CMEグループは1月13日以降で3回目となる金・銀先物の証拠金の引き上げを行いました。証拠金は、潜在的な損失をカバーするためにトレーダーが差し入れる担保金であり、変動性の上昇期には予防措置として引き上げられることがあります。当初証拠金と維持証拠金は、COMEX 100金先物では8%から9%に引き上げられ、COMEX 5000銀先物では15%から18%に引き上げられました23。
価格動向
2025年に驚くほど上昇した金価格は、2月初旬には約十年ぶりの大幅な下落に見舞われ、銀、プラチナ、貴金属を含む金属全体で変動性が高まりました。急落のきっかけとなった主な要因は、市場の予想に反して次期連邦準備制度理事会(FRB)議長にケビン・ウォーシュ氏が指名されたことを受け、予想外にドル高が進んだことでした24。貴金属価格は、2月初旬に乱高下したものの、下旬には下落分を概ね戻し、直近では金価格は2月26日時点で1オンスあたり5,185ドルの水準を再び試す動きとなりました25。
- 昨年は、貴金属の取引が特に活発な年でした。銀は2025年に5年連続の供給不足となり、供給弾力性の低さと強い産業需要が価格上昇に拍車をかけました26。電化と太陽光発電の普及が安定的に進むのに伴い、銀の在庫は引き続き減少し、現物市場はさらに逼迫しています。
- 金価格は2025年に過去最高値を53回更新しましたが、金の総供給量は1%の増加にとどまりました27。金の総需要も2025年に初めて5,000トンを超え、前年比の価格上昇率は45%近くに達しました。中央銀行による金購入が高水準にとどまる中でも、金購入に最も寄与したのは金ETFおよび金地金・金貨の購入でした28。
見通し
2月初旬の調整局面は、貴金属の相場上昇が過熱気味になった後の健全な調整になったとグローバルXは考えています。貴金属市場の構造的な強気相場に関してグローバルXは楽観的な見方を維持しており、中央銀行による準備資産の購入、通貨の価値低下、産業需要の回復など、今回の上昇局面の全てのファンダメンタルズ要因が依然として有効であることに注目しています。2月下旬の最高裁判決は、市場に貿易関連のボラティリティを再びもたらすと同時に、中国などに課された関税の相対的な負担を軽減すると考えられます。このような要因は、金や銀が不安定な環境におけるリスクヘッジとしての役割を歴史的に担ってきたことを踏まえると、金と銀の両方にとって、それぞれ別個の上昇材料となる可能性があります。鉱山企業は、営業効率の向上に重点を置くことで、コモディティ価格の上昇から引き続き恩恵を受けると考えられます。
トランプ政権は、2月22日の最高裁判決を受けて、150日間の暫定措置として世界全体に対して15%の関税を課すことを決めました。これに伴い、市場は関税をめぐる不確実性のある環境に戻る可能性があり、その結果、さらに米ドル安や貿易リスクの上昇が進むおそれがあります。このような状況は金にとってプラス材料となります。
重要鉱物、バッテリー技術、リチウム
重要なポイント
リチウムおよびレアアースのいずれでも、供給サイドのファンダメンタルズは引き締まりました。アフリカ最大のリチウム生産国がリチウム精鉱の輸出を停止した一方、レアアースのサプライチェーンの制約により、米国の航空宇宙サプライヤー2社が生産を一時停止しました。
アフリカ最大のリチウム生産国であるジンバブエは、2月25日にリチウム精鉱の輸出を無期限で停止しました。ジンバブエ政府は、鉱山企業宛ての文書の中で、輸出許可制度を簡素化し、不正輸出を取り締まる意向を示しました。ジンバブエは2025年にリチウム生産で世界第4位となり、生産量は炭酸リチウム換算(LCE)で132キロトンと、世界のリチウム採掘量の10%近くを占めました。このため、今回の輸出停止により、世界のリチウム供給はさらに逼迫し、2025年12月以降すでに2倍に上昇しているリチウム価格は一層の上昇圧力を受ける可能性があります29。
レアアースの一種であるイットリウムとスカンジウムの供給不足が深刻化する中、米国の航空宇宙サプライヤー2社は今月、一時的に生産を停止し、受注を断らざるを得ませんでした。融点が高いためタービンのコーティングに使われるイットリウムの価格は、昨年11月から60%急騰し、前年比では69倍に達しています30。
一方、5G技術向けの先進的な半導体チップ加工の主原料であるスカンジウムは、米国の半導体メーカーが中国からの新たな輸出許可の取得の遅れを指摘しているように、供給不足に陥っています31。
価格動向
旺盛な磁石需要と中国の供給管理が引き続きレアアース価格の上昇の原動力となっています。生産企業による在庫積み増しが春節の時期と重なったことや、割当量の引き上げが限定的であったことで、スポット市場の流動性は一段と悪化し、国営の生産企業は価格引き上げを示唆しました32。一方、リチウム価格は、ジンバブエでの供給障害を受けてトンあたり約19,000ドルまで上昇しました33。
- レアアース、ネオジム・プラセオジム(NdPr)の価格は、堅調な需要と供給の制約を背景に2月18日までに123ドルに上昇しました。これら二つのレアアースの価格は過去7か月でほぼ2倍になり、現在は、MPマテリアルズと米国政府との間で合意された1kgあたり110ドルの最低価格を上回っています34。
- レアアース価格の上昇は続いているものの、レアアース関連銘柄は1月下旬に高い価格変動性に見舞われました。そのきっかけは、市場で期待されていた最低価格保証を撤回することを米政府当局者が示唆したことでした。これは、政策転換の可能性を示しており、議会での資金確保や市場の価格設定メカニズムに伴う複雑さを暗に認めたと言えます。なお、このような変化は今後の重要鉱物取引の構造を左右する可能性がありますが、MPマテリアルズに対して既に行われた以前の最低価格保証に影響を及ぼすことはありません35。
見通し
供給面のファンダメンタルズはリチウム市場とレアアース市場で引き続きタイト化しており、米航空宇宙企業や半導体企業における供給不足や原材料の配給制限も問題の深刻さを浮き彫りにしています。
トランプ大統領は今後予定されている米中首脳会談で中国の習近平国家主席と会談する見通しですが、2月の最高裁判決がその貿易交渉の行方に大きな不確実性をもたらしており、今後、重要鉱物取引のボラティリティはさらに高まる可能性があります36。
中国のレアアース輸出規制の実施を受けて、PrNdなど一部の重要なレアアース鉱物の価格はここ数か月で2倍以上に上昇し、航空宇宙企業や半導体企業での生産停止や材料の配給制限を招いています。
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