なぜヘルステック?なぜHEAL?

ヘルスケア業界は、従来のケア・モデルでは増大する需要に対応することが難しくなり、転機に直面しています。予防的アプローチによって慢性疾患の管理や患者の治療成果は改善していますが、医療の需給ギャップは拡大し続けています。テクノロジーはこのギャップを埋める不可欠な存在になりつつあり、ヘルステック市場は2022年の約2,250億ドルから2032年には1兆ドル以上へと劇的に拡大する見通しです1

この市場拡大は、ヘルスケア分析とソフトウェア・ソリューション、テクノロジーを活用した一般向け医療、スマート医療機器、AIを活用した創薬の4つの主要分野にわたるとみられます。医療従事者のキャパシティを拡張し、医療提供の効率性を改善する方法は分野ごとに独特です。これまでヘルスケア業界は新しいテクノロジーの導入に慎重な姿勢をとってきましたが、高齢化への対応、慢性疾患の管理、医療アクセスの改善を求める圧力の高まりを受けて、業界全体でデジタル変革が加速しています。

こうしたトレンドに対応するため、当社は「グローバルX eドック(遠隔医療&デジタルヘルス) ETF」(EDOC)を「グローバルX ヘルステック ETF」(HEAL)に改定し、同ファンドが連動するインデックスを2025年4月1日付けで変更しました。この変更は、急拡大するヘルステック業界を反映したもので、デジタル医療エコシステム全体でより多くの機会を取り込むことによって投資範囲を拡大します。 HEALが目指すのは、ヘルスケア業界の技術革命を推進する企業への包括的な投資機会を投資家の皆様に提供し、この業界で見込まれる成長の恩恵を受けられるようにすることです。

重要なポイント

  • HEALは、成長中のヘルステック業界への投資機会を投資家の皆様に提供することを目指しています。同業界は、医療キャパシティや高齢化社会、慢性疾患管理における緊急のニーズを背景に、2022年の2,250億ドルから2032年には1兆ドル以上へと4倍に成長すると予想されています2
  • 当ETFはAIの医療への適用に対する投資機会を提供します。AIは事務作業の合理化から医薬品研究開発の迅速化まで様々な形で活用され、ヘルスケア業界で革命を起こしています。
  • HEALは、ヘルスケアに急速に統合されつつあるスマート医療機器を組み込むことができます。FDAは現在、950件のAI搭載医療機器を承認しています(10年前にはわずか6件)3

AIの活用による創薬

技術が進歩しているのにも関わらず、新薬開発には依然として平均10~15年の期間と13億ドルの費用が必要です4,5。しかし、試験研究段階にある医薬品のうちで上市に至るのは、わずか10分の1に過ぎません6。AIソフトウェアは、数百万ものシナリオを実行することで、臨床前の医薬品開発のコストを20~40%削減し、候補薬の設計と検証のスピードを最大で15倍加速させる可能性があります7,8

医薬品開発プロセスは複雑であり、特に有望な候補薬だけが臨床試験および米国食品医薬品局(FDA)の審査に進むように、各段階で慎重な検証が必要です。初期段階で仮定や関連付けに誤りがあれば、患者にとって有効性がないという結論に至る薬剤の開発に何年も無駄な時間とリソースを費やすことになりかねません。そこで、AIテクノロジーはその解決策となります。AIによって、研究者は膨大な量の健康データを活用し、医薬品開発プロセスのごく初期段階から、多くの情報に基づく決定を下すことが可能になります。こうしたデータに基づくアプローチは、潜在的な問題の早期特定に役立ち、成功に至る候補薬を選定する確率を高めます。

創薬ソフトウェア企業Schrodinger、製薬モデリング開発企業のSimulation Plus、AI創薬企業アブサイといったAI創薬ソフトウェア企業が急拡大しつつある産業の先頭を走っています。これらのプロバイダーは、何十億もの化合物候補を迅速に評価し、分子が体内でどのように動作するかを予測することができます。さらに、機械学習を活用して膨大な生物医学データセットを分析することにより、病気のメカニズムでこれまで隠れていたパターンを明らかにし、物理的な試験を行う前に医薬品の設計をデジタルで最適化することができます。

AIを活用した創薬ソフトウェアは、2032年にかけて最も急速な成長が見込まれる生成AI分野であり、年平均成長率は121%になると予想されます9。HEALは、このようなソフトウェア・プロバイダーへの投資機会を提供します。

この産業は、以下の企業にも恩恵を与えるとみられます。

  • 製薬会社:AIとの統合に伴い、医薬品開発の経済性が根本的に改善する可能性があります。現状では、製薬会社は、上市まで至る医薬品はごく一部であることを承知の上で、何百種類もの候補薬に投資せざるを得ません。このため、承認された医薬品の薬価には、成功した開発と失敗に終わった開発の両方のコストが反映されることになります。AIの活用により成功率が高まれば、製薬会社では、より多くの医薬品をより効率的に開発できるようになり、その結果、投資収益率の向上と薬価の低下につながる可能性があります。
  • テクノロジー・インフラ企業:テクノロジー業界は医療用のAI機能に多額の投資を行っています。中でも半導体メーカーは、創薬需要の増加に対応するために医療関連の開発に優先的に取り組んでいます。例えばエヌビディアは、数百社もの製薬会社やゲノム企業と提携しており、同社のヘルスケア部門の年間売上高は10億ドルにのぼると推計されます10

スマート医療機器

医療供給の拡大を支えるために、医療システム全体でスマート医療機器の導入が進んでいます。そのようなデバイスは、多くの場合、新しいソフトウェアやAIアプリケーションを革新的なハードウェアに適用することで、医療におけるギャップを埋めるのに役立っています。米国では、FDAによるAI対応医療機器の承認件数が、10年前のわずか6件から約950件へと急増しました11

スマート医療ウェアラブルは、医療テクノロジーを直接患者に適用し、快適さを犠牲にしない継続的なモニタリングを可能にします。インスリン送達システムを開発する企業Tandem Diabetesや、グルコースモニタリングシステムで知られているDexcomといった企業の糖尿病機器がこの分野を切り開いています。これらの機器の成功(入院件数が67%減少)は心血管系疾患や神経系疾患全般へモニタリングを拡大する基盤となっています12。マルチバイオマーカー追跡機器は、様々な治療応用にまたがるウェアラブル・ヘルステクノロジーの将来像を示しています。

手術用ロボットの活用範囲も次第に拡大させています。手術ロボットは20年以上前から利用されてきましたが、技術とソフトウェア統合の進歩により、現在では一層複雑な処置が可能になっています。その利点として、入院期間の短縮、最小限の手術跡、感染リスクの低下、術後の痛みの軽減などがあります13。オルタナティブファイナンスを含む、様々な資金調達手法によって導入が進み、業界最大手のインテュイティブ・サージカルが提供するロボットの導入件数のうち、約60%がリース契約となっています14。インテュイティブ・サージカルでは、2000年に最初の手術ロボットの承認を受けて以来、導入台数が約1万台、年間処置件数は260万件以上へと増加の一途をたどっています15

同様の機器が、おそらく患者からは直接動作が見えない舞台裏で配備されつつあります。医療施設では、バックエンドの自動化テクノロジーの導入が急速に進んでいます。成長を遂げている900億ドル規模の薬局向け自動化市場では、統合調剤システムが薬剤管理に革命をもたらしています。米国の病院の85%が薬剤師不足に直面する中で、オムニセルなどのこういったシステムは重大なニーズに対応します16。オムニセルの自動調剤システムなどの最新ソリューションは、在庫管理能力を30%向上させ、薬剤師の作業負担を75%削減するなど、大幅な改善を実現します17,18

ヘルスケア分析とソフトウェア・ソリューション

医療分野では、ゲノミクスや手術ロボットなどの分野でテクノロジーが急速な進歩を遂げている一方で、基本的な事務処理プロセスは驚くほどアナログのままです。米国では、医療関連の書類の80%が依然としてファックスや郵便で送られていると推定されています19。こうした高度な医療技術と時代遅れの事務処理プロセスとのずれは、医療従事者と患者の双方に以下のような大きな問題をもたらしています。

  • 医師は、勤務時間の40%近くを患者の治療ではなく書類業務に費やしています20
  • 医療スタッフの4分の3は、書類作成の要件が患者の治療の妨げになっていると報告しています21
  • 医師の4分の3以上が、勤務時間外に書類業務をこなしています22
  • 医師の80%近くが医療ITシステムに関して疲弊した経験があります23

現在、AIを活用したソリューションにより情報処理機能を持つ自動ワークフローが実現し、このようなずれが解消しつつあります。医療従事者向けのSNSを運営しているDoximityが提供するソフトウェア機能などの高度な自然言語処理は、経過記録から退院サマリーまで、臨床文書を作成することができます。
ライフサイエンス業界を専門とするクラウドアプリケーション企業、Veevaの主力製品である「Vault」のような企業向けコンテンツ管理プラットフォームは、規制文書や臨床試験データの管理に役立ちます。臨床試験の推定80%が登録期限に間に合わないことを考えると、IQVIAの「COREテクノロジー・ソリューション」など、臨床試験登録の支援を目的とした、臨床試験に係る患者募集・維持ソフトウェアには非常に高いニーズがあります24。医療データとAIを掛け合わせる企業、Tempusの革新的な「Tempus One」プラットフォームのようなAIチャットボットは、関連する臨床研究やゲノムの知見を瞬時に要約することができ、患者の治療に関して医師がより多くの情報に基づいた判断をできるよう支援します。

このような技術革新は、単なる効率化にとどまらず、医療機関での情報との関わり方を一変させるものです。

その影響は、個々実務や事業にとどまりません。こうしたプラットフォームは、多様な母集団を網羅する匿名の臨床データを集約することで、生きたナレッジ(知識)ネットワークを構築します。医療従事者は、何百万人もの患者への対応から得られた知見を入手することや、最新の研究状況を把握すること、最新の治療基準に沿ってエビデンスに基づいた意思決定を行うことが可能になります。プライバシー保護のもとでの分析を通じて提供されるこのような集約的な情報は、医療上の意思決定のための新たな基盤となります。

ヘルスケア分析とソフトウェア・ソリューション

デジタルヘルス・ソリューションの台頭により、患者が医療にアクセスし、治療を受ける方法が根本的に変わりつつあります。アクセスしやすい便利な診療の選択肢を求める需要の高まりを背景に、世界の遠隔医療市場の規模は2032年までに2,800億ドルに達すると予想されています25。コロナ禍でオンライン診療の導入が加速しましたが、この分野の進歩は基本的なビデオ診療をはるかに超えた段階に達しています。

デジタル薬局は薬剤管理に革命をもたらしており、デジタルヘルス企業ヒムズ・アンド・ハーズのようなプラットフォームは現在、200万人以上の加入者を擁しています26。このようなサービスは、AIを活用した薬剤管理システムと宅配サービスを組み合わせることで、ミスを減らし、アドヒアランス(患者が治療方針の決定に賛同し積極的に治療を受けること)を改善することにつながります。
一方、オンラインヘルスケア市場では、患者が受診先を見つけて予約する方法が合理化され、専門医の予約の待ち時間が大幅に短縮されています。

新たなハイブリッド治療モデルは、バーチャルと対面のサービスを融合させたもので、現在では大多数の医療機関が何らかの形でハイブリッド治療を提供しています。このようなソリューションは特に慢性疾患の管理に役立ち、継続的なモニタリングと医療従事者による定期的な状況確認により治療成果が大幅に改善する可能性があります。遠隔患者モニタリングプログラムにより、心不全や糖尿病などの疾患による再入院が50%減少しました27

結論

ヘルスケア業界は人工知能やロボティクス、スマート医療機器などの革新的なテクノロジーによって、かつてない変革を経験しています。これらのテクノロジーの進歩により、ヘルスケア分析、一般向け医療、医療機器、創薬の分野でまったく新しいソリューションが登場しています。また、患者のプライバシーと安全に不可欠である強固なデータ保護基準が保たれています。

HEALは、投資家の皆様に、この投資機会をターゲットとしたファンドを提供します。投資家の皆様は、ヘルスケアとテクノロジーが交差する分野で事業を展開する企業へのエクスポージャーを保有することができます。ヘルステック業界が進化する中、HEALは医療の重要な課題に対処し、かつ拡大が見込めるイノベーションへのアクセスを提供します。

関連ETF

HEAL – グローバルX ヘルステック ETF (HEAL)