次のビッグテーマ(グローバル):2025年12月
米国の電力化
新たな電力の時代の到来
国際エネルギー機関(IEA)の年次報告書によると、世界のデータセンターによる電力消費量は2030年までに約2倍に増加する見通しです。特にAIを中心としたデータセンターでは、電力使用量が4倍以上に増えるとされています。電力は世界の市場において最も重大なボトルネックになりつつあり、特にデータセンター建設が先行している米国ではその傾向が顕著になりつつあります。またIEAは、地政学的な緊張の高まりにより、各国が自国内での電力生産や重要鉱物への投資を拡大する必要性が高まっていると指摘しています。さらに、原子力発電が再び注目され始めている初期段階にあるとも述べており、足元で発電や電化への投資は世界全体のエネルギー投資の約半分を占めています。IEAは、データセンターへの設備投資が2025年に5,800億ドル(約91兆円)に達し、世界の石油供給への投資額を初めて上回ると予測しています1。これらの内容から、経済の中心が電力主導に急速に移行していることが分かります。
人工知能
相次ぐAIインフラ関連取引
AIモデル「クロード」シリーズを開発するスタートアップ企業アンソロピックは、マイクロソフトおよびエヌビディアと新たに大規模な提携を結びました。アンソロピックがマイクロソフトのクラウドサービス「アジュール」を約300億ドル(約4.7兆円)分の購入契約をした一方、エヌビディアは最大100億ドル(約1.6兆円)、マイクロソフトは最大50億ドル(約7,800億円)の投資を行います。この動きは、マイクロソフトにとってはオープンAIからの脱却を図り事業ポートフォリオの多角化を進める戦略的転換を示すものであり、また、エヌビディアにとっても、オープンAI中心だったAIチップ需要を他社にも広げる狙いがあると考えられ、この取引により、アンソロピックの企業価値は約3,500億ドル(約55兆円)に達しました2。さらにエヌビディアは、半導体設計支援ソフト大手のシノプシスに20億ドル(約3,000億円)を投資し、複数年にわたる包括的な提携を開始しています。この協業では、エヌビディアのAI計算能力と、シノプシスの半導体設計およびエンジニアリングツールを組み合わせることで、AIを活用した設計プロセスの開発を加速させることを目指します。対象は、半導体設計、物理検証、シミュレーション、デジタルツインなど幅広い分野に及び、エヌビディアがハードウェアだけでなく、ソフトウェアや設計分野へも事業領域を広げていることを表しています3。
防衛テック
防衛の在り方を変え続けるドローンおよび対ドローン技術
防衛分野の最新技術として、イギリスが開発した高出力レーザー兵器「ドラゴンファイア」は、実地試験で時速400マイル(約640キロ)以上のスピードで飛ぶドローンの撃墜に成功しました。地平線の先にある目標を迎撃できたのは、今回が初めてのケースです。この成功を受け、イギリス政府は3.16億ポンド(約670億円)の契約を結び、当初の予定より5年早い2027年にも、同システムを英国海軍の駆逐艦に配備する計画を進めています。ドラゴンファイアは、従来のミサイルに比べて非常に低コストで運用できる点が特徴で、レーザー1回の発射コストは約10ポンド(約2,100円)に過ぎず、1発あたり数十万ポンドかかるミサイルの代替手段となり得ます4。一方で、NATOとウクライナのBrave1が共同で進めるプログラム「UNITE – Brave NATO」も、新たな動きを見せています。本取組では、実戦にて効果が確認された技術を迅速に拡大・実用化することを目的とした、前例のないイノベーション競争が立ち上げられる予定です。初期段階として、対ドローン技術、前線での安全な通信、先進的な防空システムを対象に、1,000万ユーロ(約18億円)の資金が投入されます5。ドラゴンファイアのような実用的な物理的防衛技術と、UNITE – Brave NATOによる同盟国主導の研究開発が組み合わさることで、対ドローンを中心とした無人兵器対策分野における防衛技術の進化が、今後さらに加速していくことが読み取れます。
AI半導体
半導体業界の変化の中で、代替となるAI専用チップが存在感を高めている
メタは、グーグルが独自に開発したAI向けチップ「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」を、2027年から自社のデータセンターで使用するため、数十億ドル規模で購入する方向で協議を進めています。また、早ければ2026年からグーグルクラウドを通じてTPUをレンタルする可能性についても話し合われています。この取引が実現すれば、これまでTPUを主に社内利用に限定してきたグーグルにとっては大きな戦略転換となり、主要な外部顧客にTPUを提供することで、急成長するAIインフラ市場におけるグーグルの存在感は一段と高まる見込みです。グーグルクラウドのアナリストによれば、この動きによって、これまで他の半導体メーカーが獲得してきた収益の最大10%をグーグルが取り込める可能性があるとされ、同社のAIチップ戦略が本格的な商業段階に入ろうとしていることを示しています6。今回の協議は、AI業界全体で従来型チップに代わるAI専用チップへの需要と勢いが高まっていることを浮き彫りにしており、AIの進化が半導体業界の構造そのものを大きく変え続けると考えられます。
ヘルステック
製薬大手がD2C(消費者直結)プラットフォームを通じて減量治療へのアクセスを加速
イーライリリーとノボノルディスクは、自己負担で治療を受ける患者向けに減量薬の価格を大幅に引き下げることで、ヘルステック分野における新しい商業モデルの有効性を明確にしました。イーライリリーは、自社の消費者直結型プラットフォーム「LillyDirect」を通じて、減量薬ゼップバウンドの2.5ミリグラムの初期用量を299ドル(約47,000円)、5ミリグラムを399ドル(約62,000円)に値下げし、割安な治療を患者に直接かつ迅速に提供しています。一方、ノボノルディスクも独自の直接提供チャネルを活用し、減量薬ウゴービの自己負担価格を月額349ドル(約55,000円)に引き下げ、導入キャンペーンでは199ドル(約31,000円)から利用できるようにしました7。これらの施策により、保険に加入していない何百万人もの米国民にとって、市販ブランドのGLP-1薬の金銭面でのハードルが下がることで利用層の裾野が広がり、市場規模は大きく拡大しています。その結果、本来は調剤薬局や他社製品に流れていたかもしれない需要を、同社が直接取り込めています8。また、テクノロジーを活用した供給・配送の仕組みによって供給の不足や制約を解消している点からも、デジタルヘルスのプラットフォームは単なる補助的な存在ではなく、価値創出や継続的な収益確保、さらには医薬品サプライチェーンの再構築を担う中核的な存在へと進化していることが明らかになっています。
eコマース
AIの活用により、ブラックフライデーおよびサイバーマンデーのオンライン消費が過去最高を記録
今年のブラックフライデーにおける米国のオンライン消費額は、過去最高となる118億ドル(約1.8兆円)に達し、前年から9.1%増加しました。この急増を支えた大きな要因が、AIを活用したショッピングツールの急速な普及です。AIによって消費者は、価格比較や商品のおすすめ表示、最安値の即時検索などを簡単に行えるようになり、購買行動が大きく変化しました。特に、生成AIを使った検索ツール経由のアクセス数は前年から800%以上増加しており、繁忙期の買い物における商品探しの方法が大きく転換していることを示しています。また、小売業者がアプリや決済画面を最適化してより速くスムーズな取引を提供していることを背景にスマートフォン経由の購入が増加し、モバイルショッピングの存在感も引き続き高まっています。人気の高かった商品分野は、電子機器、玩具、衣料品で、例年より早いホリデー向けセールやオンライン限定の大幅な割引が消費を後押ししています。さらに数日後に迎えた今年のサイバーマンデーでは、オンライン消費額が142.5億ドル(約2.2兆円)に達し、前年から7.1%増加して米国史上最大のオンラインショッピングデーを記録しました。これらの結果は、eコマースとAIが、米国の消費者の買い物の仕方を根本から変え続けていることが明確に表れています9。
関連ETF