次のビッグテーマ:2020年8月
モノのインターネット(IoT)
“スマート化”するグーグル
グーグルは8月3日、セキュリティとスマートホームソリューションの大手企業であるADTに4億5,000万ドルの投資を行い、両社の長期的な関係をスタートさせたことを発表しました。この投資によりグーグルの持株比率は6.6%となります。グーグルのスマートホーム製品としてはNestが有名ですが、その製品ラインナップにADTが誇る強力なスマートホームとオフィスモニタリングのネットワークシステムが加わります1。また、本件の一環として、両社は新製品開発、マーケティング、テクノロジー研究の共同事業に1億5,000万ドルを投資することも約束しています。ADTは今年中にも、顧客向けに一部のグーグル製デバイスの提供を開始する予定です。
人工知能とビッグデータ
詩や散文を書ける芸術的AIの登場
オープンAIが開発した最新ソフトウェア「GPT-3」は史上最強のAI言語モデルになる可能性があります。GPT-3は単語間の確率的なつながりに基づく高度な機械学習(ML)機能を備えており、十分な量のテキストを学習させれば、完全にオリジナルな内容の論理的かつ現実的な文章を生成できます。現段階では、詩や散文の作成、作曲、コンピュータープログラムの作成、質問への流暢な回答などが可能です。GPT-3はまだプライベートなベータ版の段階であり、アクセスできる開発者は数百人にとどまっています。しかし、彼らはさっそく活用を進めており、電子メール返信文の自動作成や、テキストベースのコンピューターゲームにおける登場人物の構築といった実例が生まれています2。
自動運転車&電気自動車
電気自動車の売上が増加し市場シェアが拡大
2020年6月の全世界の電気自動車(EV)販売台数は23万台となりました。これは同月の全自動車販売台数の3.6%に相当します3。ノルウェー(2020年上半期の全自動車販売台数のうち48%が電気自動車)ほどの高い比率ではないものの、良好な結果であることには間違いなく、2019年通年の記録である2.5%も上回っています4,5。6月のEV販売台数は対前年比で22%の減少となったものの、過去1年半では3番目の好記録でした。また、2019年に打ち切られた中国のEV購入補助金によって販売台数が上昇しており、比較が難しくなっている面もあります6。全体としては、2020年上半期のEV販売台数は合計で約95万台となりました。2019年同期は約110万台でしたが、自動車全体の販売台数が24%減少していることを考えると、評価すべき結果だといえるでしょう7,8,9。
ソーシャルメディア
動画プラットフォーム間の競争が激化
ソーシャルディスタンスのルールが広がる中、全世界でこれまで以上に人々の孤立化が進んでいます。それを埋めようとして人々の交流はオンラインに移っています。新型コロナウイルス感染症の流行開始以来、全世界でソーシャルメディアの利用者が42%増加したことからも明らかです10。たとえば、Tiktokなど動画共有プラットフォームの利用者は大幅に増加しており、生涯ダウンロード数は2019年比で倍増となっています11。Tiktokは国家安全保障の問題により米国で利用禁止となる可能性に直面していますが、同じようなソーシャルメディアプラットフォームに対するニーズは今もなお増大しています。大手ソーシャルメディア各社は、今後Tiktokを離れるユーザーの移行先に選ばれようと奮戦しています。FacebookはTiktokの対抗馬としてインスタグラムで「リール」機能の提供を開始し、Snapchatはユーザーが投稿に音楽を添付できる機能をテストしています12。
サイバーセキュリティ
デジタル化の拡大によりデジタル防衛の機運が高まる
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりデジタルトランスフォーメーションが加速し続けており、大企業ではクラウドコンピューティングなどの破壊的テクノロジーの採用が進んでいますが、こうした変化に伴ってサイバーリスクに対応するコストも上昇しています。2020年上半期に生じた大規模なデータ漏洩は約300%増となっており、ウェアラブル製品メーカーのガーミンが最近受けたサイバー攻撃では、同社のシステムの多くがダウンしました13,14。世界経済フォーラムによると、大企業の50%以上が、リモートワーク環境への移行によりサイバー攻撃のリスクが上昇することを懸念しています15。その結果、多くの企業でサイバーセキュリティ関連の支出が増加しています。たとえば、デロイトが新たに発表したレポートによれば、金融機関のサイバーセキュリティ関連支出は今年になって15%増加しました16。また、別の面から見ると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより大きく影響を受けた業界では、予算縮小のためサイバーセキュリティ関連支出を引き下げる必要に迫られる可能性があります17。製造業や小売業のうち3分の1以上の企業ではサイバーセキュリティ対策を実施していないことを考えると、この問題は特に深刻だといえます18。
クラウドコンピューティング
経済活動再開に向けてハイブリッド勤務体制の導入が進む
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりステイホーム経済が生まれ、リモートワーク環境が脚光を浴びるようになりました。パンデミックが始まって5カ月が経とうとしていますが、社会は経済活動の再開に向けて動き出しています。これからの社会は、ステイホーム経済と従来型経済の両方の要素を備えることになります。勤労者のうち6人に1人が、パンデミックの収束後も週に2日以上はリモートワークを続けたいと考えています19。グーグルは7月に、従業員のリモートワークを2021年7月まで継続することを発表しました。また、フェイスブックとツイッターは、従業員の一部を永続的なリモートワークに切り換えたことを既に発表しています20。ただし、この傾向は大企業に限ったものではありません。幅広い企業において、採用担当者の61.9%が将来的に業務のバーチャル化を拡大したいと考えています21。
パフォーマンス数値
下図は、投資テーマ(対応するETFに基づく)ごとのリターンおよび予想売上高成長率です。