グローバルXテレメディシン&デジタルヘルスETF(EDOC)のご紹介

Global Xは2020年7月30日付でグローバルX eドック(遠隔医療&デジタルヘルス) ETF(EDOC). を上場しました。EDOCは、遠隔医療、コネクテッド・ヘルスケア・デバイス、ヘルスケア分析および管理業務のデジタル化に取り組む企業、遠隔医療やデジタルヘルス分野のさらなる進歩から恩恵を受けることのできる企業への投資を目指します。

遠隔医療とデジタルヘルスは、コロナウイルスの世界的感染拡大が続く中、大きな注目を集めています。非常に多くの世界の人々が外出禁止令の下にあることから、医師とのリモート・コミュニケーションを容易にし、患者のモニタリングを可能にするテクノロジー・ベースのツールが極めて重要になりました1 。米国の一部医療提供者は、コロナウイルスの世界的感染拡大が始まってから、遠隔医療訪問(患者がボイスチャットまたはビデオチャットを介して医師と連絡を取る診察と定義される)が175倍に増加したと報告しています2。さらに、コロナウイルスの世界的感染拡大が世界のヘルスケアシステムのあらゆる側面に及ぼした影響で、ヘルスケアの近代化に向けた機会が幅広く存在することが浮き彫りになりました。これはテクノロジーとデジタル化を一層効果的に活用することによって可能になります。

最近では、このテーマに向けられた関心が高まっていますが、デジタル化に向けたヘルスケアの長期的なパラダイムシフトはまだ初期段階にあります。当社では、いくつかの根本的な要因があると考えています。

  • 人口動態や地域によっては医療へのアクセシビリティは平等ではなく、そのためテクノロジーによる医療の守備範囲の拡大余地が大きいことが浮き彫りになっています。2016年には中・低所得国で1,560万人を超える死亡者が出ていますが、その55%は不適切な医療によるもので、45%は医療を受けられなかったことによるものです3
  • 長寿化により、人口は高齢化しています。平均余命率は2000年から2016年にかけて急速に上昇しましたが、これは1960年代以降のどの期間よりも早いものでした4 。そして、2100年までに、世界の人口の28%が60歳以上になる可能性があります(2017年はわずか13%)5 。高齢者の医療ニーズは高く、医療提供者はこれら高齢者を効果的かつ効率的に治療するためにイノベーションを起こす必要があります。
  • 世界の医療システムの非効率性と停滞は、医療提供者と患者の双方に不適切な結果をもたらしています。OECD諸国の年間医療支出の20%に相当する1.3兆ドルは、管理業務の複雑性、価格設定の誤り、無駄、詐称を含むシステム上の非効率性に起因するとOECDは推定しています6
  • 通信技術の向上により、仮想医療サービスの提供が可能になります。今日、世界全体で46億人のアクティブなインターネット・ユーザーが存在しています7

こうしたトレンドは遠隔医療とデジタルヘルスに大きな機会をもたらすと当社は考えています。こうしたテクノロジー市場は2019年に推定1,750億ドルに達し、2026年までに6,570億ドル以上に成長すると予想されています8。 以下の部分では、こうした成長がどのように達成されるのかを探ります。

ヘルスケアの守備範囲を拡張する

世界の全人口の半分は、必要不可欠な医療サービスが利用できずにいます。9 この原因の一つには、地理的な問題や、医療リソースや医療専門家からの物理的な距離の問題にあります。遠隔医療は、必要不可欠な医療サービスをこうした人々に拡大するのに役立ちます。

米国の農村地域では2010年以降120の病院が閉鎖されてきましたが、遠隔医療を受け入れてきた結果、早い段階での成功を収めています。10 NPRが実施した最近の調査によると、農村部の成人の24%が遠隔医療を利用した経験があり、そのうち90%が内容に満足していると回答しました。11 農村部で遠隔医療が採用されることで、緊急治療のために地方から先進地域へと移送される患者の数を抑制することができます。これは、個人と医療システムの両方にとって有益なことです。12 ブロードバンドインターネットの欠如は、かつては遠隔医療の利用可能性を制限する要素の一つでしたが、農村部の遠隔医療インフラを改善するために2億ドルを投じることをFCCが2020年7月に約束したことは、高速インターネットと5Gテクノロジーの展開拡大と同様に、遠隔医療のための追い風になるはずです。13

テクノロジーがもたらす同様の機会は、世界中のさらなる遠隔地にも存在します。サハラ以南のアフリカでは、多くの皮膚疾患が見られますが、皮膚科医の不足という問題があります。そのため研究者たちは、モバイル遠隔皮膚診察サービスを確立しました。このサービスによって研究者たちは炎症性皮膚疾患のある患者の49%を診断し、地元の医療従事者の81%から肯定的なフィードバックを受けました。14 国境なき医師団もソマリアで遠隔医療プログラムを実施しました。1年間で行われた遠隔での診察のうち56%で新たに重大な診断が下され、25%で命に関わるケースが見つかりました。15 現在のところこれらの遠隔地の多くでは、遠隔治療を本格的に導入するための通信接続インフラが不足しています。ただし、インターネットの導入は世界的に増え続けています。

経済的制約もまた、人々が治療を諦める原因となります。OECD諸国では、成人の17%が、経済的な懸念が理由で医療ニーズが満たされていないと報告されています。遠隔医療は、こうした医療コストの削減に貢献できます。米国では、医療保険会社のAnthemが遠隔医療外来に対する自己負担を5ドルに減らしました。対面の初期診療の外来に対して請求される25〜35ドルと比較すると大きな差があります。16 1回限りの診察でも利点は明らかですが、その後の経過観察も含めると、遠隔医療がもたらすコスト削減は、患者の医療に対する需要曲線にプラスの影響を与える可能性があります。米国退役軍人健康協会は、遠隔医療に参加する各患者の年間節約額を合計6,500ドルと見積もっています。17 移動コストが最小化されることからも、さらなる節約が可能です。カリフォルニア大学デービスヘルスシステムが同施設の患者について実施した調査によると、遠隔医療によって、1996年から2013年の期間にわたって直接移動コストが総額290万ドル、移動時間が9.0年節約されました。18 ただし、手頃な価格はサービス提供者にとっては利用回数ごとのサービス料金の削減を意味します。とはいえ、全体的なコスト削減、利便性、満たされていない需要への対応がもたらすインセンティブによって、サービスの利用と採用が促進されることで、減少分を補う以上の収益が発生する可能性もあります。19

スマートな治療でより良い成果を

デジタル医療ツールにより医療従事者が医療サービスを提供する方法に大変革が起こりつつあり、様々な分野で医療の効果を向上させる新規ソリューションが提供されています。治療の遵守(「アドヒアランス」:患者が医師の助言や治療に最後まで従う能力・性向)はその内の1分野です。

治療の遵守は医療を効果的に提供するにあたって主要な課題であることが広く知られています。医師が指示する投薬計画を完全に遵守する患者は50%未満にとどまっています。20 複数の研究から、アメリカの年間入院数の最大25%が、患者の不遵守が原因となっています。21 遠隔医療により、医師とのコミュニケーションが便利で安価なものとなることで、有効な解決策が提供される可能性があります。特に、継続的なモニタリングが求められる慢性疾患においては重要です。

例えば、慢性心疾患(CHF)患者では病状の管理のためには、刻々と変化するリスクの識別とそれに対するタイムリーな対応が求められます。うっ血性心不全に関する研究では、遠隔医療を利用する患者の死亡率が、利用しない患者と比較して15~56%低下することが示されました(検討した19件の研究の内18件)。22 別の研究では、重度の精神疾患患者における治療の遵守の向上における遠隔医療の有効性が検討されました。その結果、6か月間で、遠隔医療を利用する患者群において、治療の遵守がはるかに高かったことが分かりました。23

IoT医療機器、インターネットに接続されたウェアラブル機器、自動レポート機能付きの携帯健康アプリなどにより、医療従事者と患者間の物理的距離が一層縮まり、従来の医療現場から離れた場所でのモニタリングが可能になっています。FDAは2017年に、成人の統合失調症、躁病、双極性I型障害、うつ治療に対する体内摂取型センサー搭載の錠剤を承認しました。錠剤は装着パッチと同期し、パッチがスマートフォンと通信して摂取経路周辺の情報を生成します。このことは患者と医療従事者にとって有益となり得るものです 24

遵守モニタリング以外にも、このような技術を利用して遠方にいる患者の健康に関する重要な情報を医師に提供することができます。遠隔集中治療室(eICU)には、体温やSpO2、ECG、心拍数、血圧などを監視するモニタリングシステムや、カメラ、人工呼吸器などの接続機器が配備されます。実証データからは、このようなセンターの設置によって、死亡率を15~60%低下させることができ、平均治療期間を平均30%短縮できると示されています。25

簡易的なケースでは、自動的に管理された接続医療機器により、情報を医師に提供できる一方、患者が自身で治療を管理するのに役立ちます。このような機器の利用は、I型糖尿病のような生涯にわたる慢性疾患の治療において特に効果があります。従来、I型糖尿病は血糖値の不断のモニタリングやインスリン投与の管理が必要でありました。しかし今日では、IoTによる継続的血糖モニター(CGM)とインスリンポンプのような機器によって、ほとんど自動でこの工程を実施できるようになっています。自動的に血糖値を確認し、予測用量で投薬し、アクセス可能な方法での医療データ等々を統合します。 26

より広範なヘルスコミュニティからゲノム情報やデータを組み合わせると、これらのデバイス、ヘルスアプリケーション、その他の情報源のデータから予防的な健康の向上効果が得られる場合があります。人工知能(AI)は、精密な治療やスマートな診断を導くパターンを探しながら、このデータを利用できるようにします。2020年1月までに、FDAは、60件以上もの様々な医療用AIアリゴリズムを承認しました。これらには、甲状腺結節の発見や、肝臓や肺の病斑を見つける、あるいはレントゲン技師の精度と同様の精度で乳がんを検出するものを含め、医療スキャンや画像を分析するアルゴリズムが含まれています。 27

医療制度をより合理的なものに

医療制度は、健康上のアウトカム(結果)が効率よく発揮されたときに、最も効果があると評価されます。しかしながら世界の多くの医療制度が悪戦苦闘しています。高所得国家の患者10人に1人は入院治療が受けられない状態ですが、実はその50%は回避可能とみられます。28 米国の約30%の医療支出は無駄になっていると見なされており、その額は年間で7,600億ドル~9,300億ドルにのぼります。29 高齢化人口の増加によりヘルスケアサービスの需要が高まり、インフレーションの伸びを超えて上昇するというような、高コスト構造となっている昨今、テクノロジードリブンのヘルスケアソリューションは、こうした欠点への最良の解決策となり得ます。

医療業務管理は、デジタル化によって、運営管理上の間接費を削減し、記録管理プロセスを拡充することで、効率を高めることが可能な分野です。10年間に及ぶ医療記録をデジタル化する取り組みで、病院の最大96%、および医師の86%が電子医療記録(EHR/EMR)を活用しています。30 こうした取り組みのおかげで、医療業務関連分野はすべての電子データの30%を生み出しています。31 ただし、当該データの80%が構造化されていません。すなわち、そのデータは体系化/成文化されておらず、さらにその構造化された20%についても標準化はされておらず、さらにすべての医療データの推定5~10%の記録が重複しています。3233 こうした現状は、正確なデータの照会や処理、および保健関係者間のデータのスムーズな共有、すなわち「相互運用性」に関しての課題となっています。多くの場合、デジタル化の実施が不十分であると、管理作業が複雑になり、非効率なリソースの配分が発生してしまいます。

つまり、最新の医療テクノロジーを導入する大きな理由があります。AIを使えば、医師が手書きしたメモのスキャン画像のような、構造化されていないデータを解析し、デジタルなテキストに変換し、そこから有用な情報を抽出することができます。例えばAmazon Web Servicesは、この目的で、機械学習の自然言語処理アルゴリズムを活用しています。 34他の医療ITサービスでは、デジタル医療プラットフォーム、デバイス、国や地域、およびデータ交換媒体間での互換性を可能にする規格があり、この規格に沿って、互換性で問題が多い従来型のデータを相互運用可能なものに変換できます。その規格の一例が、HL7規格のFast Healthcare Interoperability Resources (FHIR) であり、世界各地の膨大な医療データの宝庫を活用するための大きな一歩だと広く評価されています。35 従来型データの多くは、これらの規格を満たすために変換する必要がありますが、相互に接続された最新の医療機器や医療サービスの多くでは、すでに相互運用可能なデータが生成されています。

デジタル医療プラットフォームを統合すれば、患者データ、臨床データ、およびゲノムデータの保管場所として機能し、これによってより良い治療が可能になり、またプロセスを最適化する情報を関係者間で交換できるようになります。36 自由に行き交う相互運用可能なデータがあれば、医療提供者はこれらのプラットフォームとAIプロセスを活用して、地域住民の一般的な健康ニーズを把握し、それに応じてリソースを配分することができるようになります。スペインの Grupos de Morbilidad Ajustados (GMA) システムはその好例で、意思決定者は、対象地域の併存疾患データから得られた予測モデリングと医療需要予測を使用して、リスクの高い集団を特定し予算編成上の意思決定を行っています。37 各地域の境界を超えて医療データにアクセスすることで、医療提供者や医療関係者は、医療体制のシナリオとして今後何が起こり得るか、あるいは近日中に何が起こるかということについてアイデアを得ることができるようになります。例えば、AIを使えば、グローバルな情報システム、携帯電話、そしてデジタルな健康情報ポータルから得たデータを処理でき、これによって医療従事者が伝染病を検出し、蔓延を抑制できるようになります。 38

医療データを効果的に使用することで、その他の非効率性に対処することができます。非効率さの一例が、価格設定の失敗です。2010年代には、新薬を市場に出すために平均18億ドルのコストがかかっていました。39 これらのコストは、最終的にはその薬の最終的な受益者にも影響が及ぶことになり、患者が必要な薬を服用するのをためらうことになりかねません。デジタル医療プラットフォームやシステムは、創薬にAIを活用して医薬品の研究開発プロセスを合理化することで、これらのコストを削減できます。40 創薬後は、相互に接続された医療機器やウェアラブル機器が治療効果をリアルタイムで監視することで、臨床試験を充実することができます。 41

現在から2025年までの間に、医療関係のデータ量が年平均で36%成長すると予想されていることから、これらのツールによって、医療分野における上記のような非効率性や、最適化されていない医療行為の多くが、大幅かつ効果的に改善されるものと当社は予測しています。42 また、遠隔医療やその他の形態のバーチャル治療は、現在の非効率な対面診察の多くを減らすものであるため、医療提供者にとって好ましいソリューションになると当社は予測します。マッキンゼー・アンド・カンパニーは、米国のすべての外来患者と対面診察の費用のうち約2500億ドルが仮想化され得ると予想しています。 43

結論

遠隔医療とデジタル医療は、地理的にも経済的にも医療を受けやすくすることで、医療を受けられる層を広げるものであり、これらの医療を大規模に取り入れる機会が生まれています。さらにこの技術は、今後、治療法の選択肢に革命を起こし、患者の治療実績を改善し、医療システムを合理化する可能性を秘めています。

デジタルメディアを介して医師と患者をつなぐサービスを提供する企業に加え、コネクテッド・ヘルスケア・デバイスを開発する企業、ヘルスケア分析の分野や管理業務のデジタル化の分野で活躍する企業も、このテーマの台頭により恩恵を受けると当社は考えます。

関連ETF

EDOC: The グローバルXテレメディシン&デジタルヘルスETF は、遠隔医療とデジタルヘルスの分野のさらなる進歩によって恩恵を受けることが可能な企業への投資を目指します。これには、遠隔医療、ヘルスケア分析、コネクテッド・ヘルスケア・デバイス、管理業務のデジタル化に携わる企業が含まれます。

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