ヘルステック:医療ケアの非効率性を解消

本稿は、グローバルXの代表的リサーチプロジェクトCharting Disruptionの中で取り上げた主要なテーマをさらに掘り下げるシリーズの1つです。

ヘルスケア業界は構造的な不均衡の拡大に直面しています。65歳以上の人口は若年層の約3倍のペースで増加しており、2030年までに世界で約1,100万人の医療従事者が不足すると予測されています1,2。この不足に対処するには、小幅な政策変更を積み重ねるだけでは不十分です。効率を高め、疲弊を軽減し、臨床医が患者ケアに集中できるようにするテクノロジー主導のスケーラブルなソリューションが必要になります。

同時に、医療エコシステム全体で技術革新が加速しています。データ分析、医療ソフトウェア、スマートデバイスの進歩に伴い、相互運用性、使いやすさ、プライバシーが向上しています。特に人工知能(AI)は、データ、診断、創薬を結び付け、さらに統合されたシステムを実現する原動力となっています。このような変化が相まって、医療が対応できる範囲が広がっており、2032年までに3倍増の1兆1,300億ドル(1,695兆円)規模に達すると予想されるヘルステック市場の基盤が作られています3

投資家にとっては、この融合は単に技術的な進化を意味するだけでなく、データ主導のスケーラブル(拡張的)なグローバル医療モデルが本格化することを示します。効率性の向上と患者の治療成果が両立する領域を見極めることが、このセクターで次に生まれるイノベーション主導の成長を決定付けることになります。

重要なポイント

  • 医療提供能力、高齢化、慢性疾患管理への対応が必須となる中で、ヘルステック市場の規模は2025年の3,520億ドル(54兆5,600億円)から2032年までに1兆1,000億ドル(1,705兆円)以上へと成長する見通しです4
  • 人工知能は、医療提供の近代化、事務処理の負担の軽減、医薬品開発の加速、大規模な学習と改善が可能なシステムの実現につながります。
  • 手術用ロボットからウェアラブルセンサーまで、AI対応の医療機器は、精度とアクセスしやすさを改善しながら臨床診療にも在宅医療にも変革をもたらし、同時に医療エコシステム全体の効率を高めています。

人工知能およびヘルスケアのデジタル変革

ヘルスケアセクターでは、ゲノミクスやロボット手術などの分野でイノベーションが急速に進んでいますが、多くの管理ワークフローは依然としてアナログのままです。米国の医療文書の80%近くがまだファックスや郵便に依存しており、臨床の進歩と業務効率の間のギャップが広がっていることが浮き彫りになっています5。既存のシステムは業界の規模拡大を支えられず、かえって医師の疲弊を招く足かせになっていることがあります。医師は、古い電子カルテ(EMR)に患者情報を記録する作業に最大で勤務時間の39%を費やしています6

人工知能はそのような状況を変え、事務処理の負担よりも使いやすさ、自動化、有効性を重視する次世代のヘルスケアソフトウェアの時代を切り拓く見通しです。新しいソリューションは、医師の時間を30%以上取り戻し、疲弊を大幅に軽減できる可能性があります7。こうしたテクノロジーが普及すれば、スタッフの作業の最大17%が完全に自動化され、臨床医は患者のケアに時間を割くことができます8

デジタル化の進展と高度なアナリティクスにより、医療システムは大規模な学習が可能になります。データが連携され、解釈しやすくなるのに伴い、継続的に向上するケアモデルにあらゆる診断、治療法、治療成果が取り込まれるようになります。つまり、一度に一人の患者のためではなく、一度にすべての患者のための医療に進化します。スケーラブルな学習はヘルスケアの進化における次の転換点であり、断片的な記録を共有された情報へと一変させるものです。AIがそのシフトを加速させることで、医療は対応型から予測型へと移行し、効率性、治療成果、医療システムの長期的な持続可能性を向上させることができます。

AIと次世代の医薬品開発

人工知能は、医薬品の未来を根本的に変える可能性を秘めています。新薬を上市するまでには、今なお10年~15年の期間と平均16億ドル(2,480億円)のコストがかかるうえ、最終的に成功を収めるのは治験薬の10分の1だけです9,10,11。AIモデルは数百万ものシミュレーションを実行することで、前臨床開発コストを30~50%削減することができ、医薬品の設計・検証のスピードが15倍になります12,13

製薬会社にとって、この進歩は効率性以上の意味があります。AIは、患者の募集から治験デザイン、予測モデリング、新薬候補の選定、診断に至るまで、研究開発プロセス全体にわたる意思決定を強化し、最終的には成功率の向上と治療の個別化を可能にします。製薬企業の95%がすでにAIに投資していると推定され、コスト削減、スケジュールの短縮、成果の向上という点でAIの役割が大きくなっていることを表しています14

医薬品開発ソフトウェアは、生成AI分野で最も急成長が見込まれ、2024年にはほぼゼロだった市場規模は410億ドル(6兆3,550億円)規模に拡大すると推計されています15。このようなツールは、効率性とスケーラビリティを向上させることで研究開発の経済性を一変させ、企業が高精度、低リスクでより多くの新薬候補を追求することが可能になります。従来型のテクノロジー企業も恩恵を受ける見通しであり、エヌビディアなどの企業ではすでにヘルスケア関連の年間売上高は10億ドル(1,550億円)を超えています16

結論:スケーラブルでインテリジェントなヘルスケアの未来

ヘルステックは、医療ケアの提供、拡大、維持の方法を一変させつつあります。人工知能の導入は、需要と提供能力との間にある長年のギャップの解消に役立ち、臨床医が事務処理ではなく患者に集中することを可能にします。同時に、生成モデルは医薬品開発を加速し、研究開発コストを削減します。ソフトウェアだけでなく、手術用ロボットテクノロジーやウェアラブルセンサーの進歩に伴い、テクノロジーの活用の範囲は手術室から個々の患者へと広がっています。その結果、精度が向上し、アクセスが拡大し、治療とデータの間に継続的なフィードバックループが生まれています。

これらのイノベーションが結び付くことで、ヘルスケアは非効率性に縛られたシステムからインテリジェンスに支えられたシステムへと変化しています。こうしたテクノロジーの融合により、患者の治療成果が改善されるだけでなく、グローバル医療のためのスケーラブルで安定的なモデルの開発が進むことが期待されます。これは、テーマ型の投資家にとって持続性のある長期的な投資機会となる可能性があります。

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