COVID-19危機で明らかになる企業の真の姿

企業は、一貫した責任ある姿勢で意思決定に臨むことが重要です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大でこの重要性がより鮮明になっています。

物事が順調に進んでいるときは、企業が予期せぬ課題や困難な意思決定に直面することはそれほど多くありません。2019年にS&P 500は史上最高値を記録し、企業の収益率は急上昇しました。こうした環境下では、従業員に特別休暇を与えたり、コミュニティに寄付を行うなど、ステークホルダー寄りの企業方針が取られるケースが急増します。このような企業方針を取ることは、ステークホルダーに対して長期にわたり新たな方法で貢献しようとしている企業にとって自然な展開であると考えられます。一方、短期的にブランドの評判を高めたり、不測の事態に一時的に対応するため、こうした企業方針を採用する企業もあります。すべてが順調なときは、企業が本当に何を考えているのかを判断するのは困難ですが、危機的状況や経済的圧力がかかった段階では、それが明らかになります。

世界経済の主要セグメントが休止状態に陥る中、企業の脆弱性が大幅に拡大しています。企業は資金調達、事業運営、人事に関して難しいビジネス上の意思決定を迫られています。多くの企業は、善意を持ってこうした意志決定を行い、経済的な制約の中で主要ステークホルダーを引き続きサポートすべく取り組んでいます。一方、恐らくほんの数カ月前まではステークホルダーの利益を擁護していた企業が、短期的な利益中心の考え方で意思決定する場合もあります。

サステナブル投資は、従業員、顧客、サプライヤー、投資家、地域社会など、すべての主要ステークホルダーに対して意識的にコミットメントを行う企業を特定しようとする取り組みです。つまり、市場が好調な状態にあろうと不調であろうと、こうした企業の方針は変わるものではありません。完璧な企業など存在しませんし、経済の現実は予算を圧迫して、優先順位の変更を迫ることがありますが、持続可能な企業はこれらの理想をできる限り維持し続けます。そして、長期的には、こうした方針を堅持する企業は世界に良い影響を与えると同時に、自らの事業に価値を付加することができます。(「How Sustainable Investing Can Create Long-Term Value」を参照)。

コンシャス・カンパニーの特徴

グローバルX ESG経営企業 ETF(KRMA)の背景にあるメソドロジーは、持続可能な企業を特定するための枠組みを提供しています。銘柄の選択は、コンシニティ・アドバイザーズのマルチステークホルダー・オペレーティング・システムによって行われます。このシステムは、顧客、従業員、サプライヤー、投資家、そしてコミュニティにとって最も好ましい結果をもたらす企業をターゲットとしています。以下では、現在KRMAを構成する一部企業が、危機の影響を受けたステークホルダーとどのように交流しているかを紹介します。

顧客

アルファベット は、中小企業向けに最大3億4,000万ドル相当のGoogle広告クレジットを提供します。このクレジットは2020年末まで有効です。中小企業の多くは市況の悪化で多大な経済的困難に直面しています。無料広告により、これらの中小企業は商品やサービスの売上を伸ばすことができ、オーナーや従業員に所得が発生します。さらに、経済的な刺激策が待ち望まれている現在、商取引を後押ししてくれます1

コムキャスト は今後60日間、すべての人(顧客以外も含む)に無料でWi-Fiホットスポットを提供し、通信速度制限を休止し、サービスの切断を中止し、一部の顧客向けに延滞料金を免除すると発表しました。ソーシャルディスタンシングで互いに離れて仕事をしなければならない現在の環境において、遠隔勤務で常にインターネットへの接続が必要な人々にとって、インターネットへのアクセスは死活問題であり、この取り組みは特に有意義です2

イーライリリー はインディアナ州で、最前線の医療従事者、食料品店の従業員などの必要不可欠な労働者のほか、症状を示す65歳以上の人向けにドライブスルーのSARS-CoV-2検査を無料で提供しています。検査にはまだ医師の承認が必要ですが、同社のイニシアチブは、ヘルスケアセクターの従来からの顧客にかかっている圧迫を取り除き、本社を置くインディアナ州のコミュニティでCOVID-19の感染拡大を抑えるのに役立つはずです3。さらに、糖尿病の治療薬として同社のインスリンを必要としている顧客に連絡し、COVID-19による経済的な影響で同社の医薬品を購入することができない場合は支援すると申し入れました4

従業員

ロウズ は、常勤従業員やパートタイマー、時間給の季節従業員の賃金を、4月の労働時間について1時間当たり2ドル増額しました。さらに、同社は従業員が危機によってもたらされた経済的困難を乗り切れるよう、300ドル(パートタイマーは150ドル)の一時金を支給するとともに、従業員のために店内にフードパントリーを開設しました。また、状況に関係なく、すべての従業員に14日間の緊急休暇を付与するほか、遠隔医療の便宜を図るとともに、マスクと手袋の入手についても便宜を図りました5

ホーム・デポ は、店舗や配送センターの従業員向けに体温計を配布していると発表しました。さらに、同社は、65歳未満の従業員に最大80時間の追加の有給休暇、60歳以上は最大160時間の追加の有給休暇、さらには隔離の必要な従業員に14日間の有給休暇を与えるなど、支援を拡大すると発表しました6。必要不可欠な業種として、ホーム・デポは多くの地域で店舗を開いている必要がありますが、こうした取り組みは、従業員を感染から守るものであり、同社での労働に依存して収入を得ている従業員に恩恵をもたらします。

ペプシコ は、隔離の必要な従業員、または要介護者の世話をする従業員に2週間の病気有給休暇を付与するとともに、その後の10週間については給与の2/3を支給します。さらに、施設が閉鎖されたために仕事ができなくなった従業員には、12週間にわたり給与の全額を支給します7

コミュニティ

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) は、これまでに1,500万ドル相当の製品や物資による支援を約束していますが、同社の取り組みは金銭的な価値を超えるものです。P&Gのさまざまなブランドは、パーソナルケアや公衆衛生に不可欠な製品を製造しています。これを念頭に、P&Gは世界中の製造センターに手指消毒剤の生産ラインを設置し、病院、救急隊、従業員向けにフェイスマスクの製造にも取り組んでいます8

ベライゾン は、ベライゾン・イノベーティブ・ラーニング・スクールのデータ制限を3倍に拡大する一方、学生と医療従事者を支援するため、1,000万ドルの支出を約束しました。さらに、同社は世界で最も人気のあるeスポーツ組織の1つであるフェイズクランとチームを組み、音楽、ゲーム、コメディのイベントをストリーミング配信して、ローカルビジネスを支援しています。視聴者は、Twitchのイベントを視聴し、ハッシュタグ#PayitForwardLIVEを使用して、追加の資金を地域コミュニティに振り向けることができます9

エヌビディア は、Parabricks Genomics Analysis Toolkitへのアクセスを研究者に無料で提供する予定です。これにより、ゲノムシークエンシングデータの解析を最大50倍高速化できます10。金銭的価値に換算することは困難ですが、こうした取り組みは、COVID-19の治療法を開発する上で極めて価値のあることであり、世界中のコミュニティにプラスの影響を与える可能性があります。

結論

今回の検証の目的は、コスト削減という困難な決定を下さざるを得なかった企業を非難することではありません。また、上で紹介した企業を是認するものでもありません。重要な点は、私たちが直面している危機は、サステナブル投資のリアルタイムのケーススタディであるということです。つまり、企業が危機にどのように対応するのか、困難な意思決定の優先順位をどのように付けるのか、そうした意志決定の長期的な影響は何かを検証できる機会なのです。