次のビッグテーマ:2021年12月

eコマース

ホリデーショッピング期間の長期化

2021年のeコマース支出を締めくくるホリデーシーズンの売上高は、割引率が低下するなかでも極めて好調でした。11月の月初からサイバーマンデーまでの米国のオンライン消費支出は前年同期比11.9%増の1,098億ドルに達しました1。サンクスギビングデー、ブラックフライデー、サイバーマンデーの売上高は2020年から横ばいまたはわずかに減少となったものの、サプライチェーンの制約下で、多くの消費者がサンクスギビングデーより前にホリデーギフトを購入する行動を取りました。ある調査によると、米国の消費者の約61%がホリデーショッピングを事前に済ませたとのことです2。一方、店の割引率はこれまでの年と比べて今年大幅に低下し、サイバーマンデー当日の電子機器の平均割引率は12%にとどまりました(昨年は27%)3。しかし、特別ディールの縮小は売上高に影響を与えていません。2021年第3四半期の米国のeコマース売上高は前年同期比6.8%増の2,046億ドルに達しています4

電気自動車

EVの存在感が急速に増加

世界の自動車メーカー各社は、電気自動車(EV)のエコシステム内での足場固めに動いています。2020年末時点の米国のEV保有台数は1,019,260台であり、自動車市場に占めるEVの割合はわずか2.5%でした5。しかし、2021年1月から3月の期間における米国のEVの新車登録台数は、EV以外の新車の3倍に達しました6。2021年の米国のEV販売実績は前年比2倍強、メーカー別ではフォードとテスラが牽引役となっています。調査に参加した自動車業界エグゼクティブたちは、2030年までに米国の新車販売の半分を電動車にするというバイデン大統領の目標が達成されると強く予想しています。平均すると、2030年までに米国の新車販売の52%が電動車になると、これらのエグゼクティブたちは予測しています7。この数字は、調査に参加した日本と中国のエグゼクティブたちの予想と整合しています。また欧州では、10月の自動車販売の13%が完全電動車になるとともに、同月のプラグイン自動車全体の販売が前年比26%増を記録しました8

ソーシャルメディア

現実に近づくメタバース

拡大を続けるメタバースにはさまざまな業界からの参入が相次いでいますが、その1つが不動産業界です。これにより、メタバース内のデジタル土地区画をユーザーが購入することが可能になりました。消費者は仮想コンサート会場、ショッピングモール、住宅、記念館等の不動産物件を購入することができます。土地は所有者にとっての将来的な収益化の機会を表しています。例えば、所有者は人気ブランドに自分のスペースを賃貸することができます。また、メタバースでおそらく最もよく知られた名前であるMetaからは、いくつかの新たな動向に関する発表がありました。同社の触覚グローブは、仮想世界における触覚を提供する世界初の高速マイクロ流体プロセッサーの実現に向けて前進しています。加えて、Metaは同社のサービスにおいて暗号通貨関連の広告を再び受け入れる計画を発表しました。さらに同社はQuestヘッドセットをアップデートし、クラウドバックアップ、複合現実カメラ等の機能を追加しました。

クラウドコンピューティング

ニューノーマルに向けたアマゾンウェブサービスの re:Invent(再発明)

パンデミックの下で、クラウドコンピューティングは瞬く間に経済の不可欠な一部となりました。IT支出に占めるクラウドの割合は2020年の平均8.9%から急速に増加し、2025年には平均12.4%に達すると予想されています9。こうした状況のなか、アマゾンウェブサービス(AWS)は同社の年次顧客会議「AWS re:Invent 2021」において、サステナブルなアーキテクチャーを拡大する計画を発表しました。AWSはその掲げる目標の1つとして、コード実行、データ保存、データ処理の際のエネルギー消費を抑制することを計画しています。リリース予定のツールには、利用者がデータレジデンシーを最適化できるControl Tower、リソースの効率を高めるCompute Optimizer、新機能をローンチするためのCloudWatch等が含まれます。AWSはストレージ機能の強化、特にアクセス頻度の低いデータの検索機能の強化を目指しています。加えてAWSは機械学習および5Gサービスの展開に注力し、より高い計算能力を提供する高度なプロセッサーの開発に焦点を合わせています。

モノのインターネット(IoT)

半導体不足をめぐる各国政府の対応

米国内の半導体製造を支援する「CHIPS for America Act」法案の米連邦議会通過と520億ドル規模の資金拠出を何か月も待ち続ける間に、世界的な半導体不足は記録的な水準に達しました。この状況を受け、半導体チップおよびコンピューティング業界の主要エグゼクティブたちは、「FABS Act(米国製半導体促進法)」の強化と、チップ設計および製造の投資税額控除の導入を求める書簡に署名しました。半導体不足による世界の自動車メーカーの収益減少は、ここ1年で1,000億ドルを上回る規模に達したと推定されます10。過去数か月間に、アップル、フォード、ゼネラルモーターズを始めとするさまざまな企業が半導体不足を主な原因として製品の生産を縮小しました。これはインフレ率の上昇の一因にもなっています。世界的に見ると、フランスが介入主義的アプローチの導入を求めていることを踏まえ、欧州連合では半導体業界への国家支援の制限緩和が検討されています。

サイバーセキュリティ

鉄道のサイバー攻撃防御

米連邦政府は、高リスクとみなされる鉄道および鉄道輸送システムに対して2つのサイバーセキュリティ義務を課しました。この新たな規制は、重要な旅客鉄道および貨物鉄道に対し、サイバー攻撃を政府に報告することを義務付けるとともに、運輸保安庁(TSA)およびサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)との連携を担当するサイバーセキュリティスペシャリストを任命することを義務付けるものです。また、インシデント対応計画の策定、およびサイバーセキュリティの空白部分に対処するための頻繁な脆弱性評価も求められます。これらのルールは、2021年の大規模サイバー攻撃(特にコロニアルパイプラインのハッキング)を受けて発出された従来の国土安全保障省(DHS)の指令を拡張したものです。DHSは今後、航空業界についても同様の措置の導入を予定しています。